学生舞台演劇 「米騒動」
今日は9月の夏休み明け最初の校内行事
文化祭初日の土曜日です
全校生徒を集めての校長挨拶があった後
最初の出し物は演劇部の創作演劇。
「米騒動」
脚本を畔田と一緒に書いた霊山がナレーションを語ります
(昔々、農業国にある農業を中心に世界が回っている領地がありました
そこでは田んぼで作った米を、百姓が税金のように物納しており
その米は租税米と呼ばれていた
そして租税米を各地の領主が集め
中央で商品先物取引が行われており
各領地には租税米の取引をする役人が存在していた
とある領地にいた米役人と農村村長との
思い付き雑談とも打ち合わせとも言えるような
世間話から物語は始まります)
そんな、ナレーションが流れ
我が国における役人と言ったら、こういう衣装を着た
こういう人間を連想するよねーといった感じの
偉そうな役人な扮装をした畔田が舞台袖から出て来て
我が国における農村の村長と言ったら、こういう衣装を着た
こういう人間を連想するよねーといった感じの村長な扮装をした
演劇部に所属する話術オタク、長野が逆の舞台袖から出てきて
畔田が扮する米役人の問いかけセリフから、芝居が始まります。
「我が領における素晴らしき村人とは、いかなるものや
そちは、どう考える?」
長野が扮する農村の村長が、その問いかけに応えます
『やはり、先祖代々の田畑を耕す事に従事し
専念する農村の百姓が素晴らしき村人と言えるでしょう
同じ農村内の掟を守り、謙虚に己の分というものを知り
身の程をわきまえて、村長や村三役の言いつけを聴き
酒に溺れたり、くだらぬ博打にウツツを貫かす事も無く
家も村の一部と、家族、同じ村の仲間を大事に
村の掟を守り、同じ村で同じ百姓として生きる仲間を大事にする
良き隣人である働き者
村も領の一部と、領全体の事を考えての沙汰で
年貢が増える事があろうが
農閑期に普請作業に出稼ぎに出されようが
不満などは一言も言わずに従う謙虚で従順な農村の百姓
そう生きる以外に生きる道などは無いと
村の学校に通う子供組で過ごす時から仕込まれた内容を
同じ学校で過ごした人間に言い聞かせて自分に言い聞かせ
そして自分の子供や、孫にも同じ事を仕込んでいく
それが、やはり理想的な一番多い百姓に御座いましょう』
「うむ、たしかに租税米の徴収をする役目を仰せつかるワシにとっても
河川普請などの普請奉行に従事される御城代の御子息にしても
城下には、そういった農村が多くあり
そう生きる以外には生きていけない百姓が多く生きる事が好ましい
我が領のため、村のためと自分以外の誰かのために生きる
そういった心構えを持つ村人を増やす事が大事ぞ
余計な事に関心を持たぬよう、村長や村三役が
農作業以外の事に無関心になるようにする必要もある
それとなしに村のために自発的に関心を持たぬようになっていき
地道に同じ事の繰り返しの中に、
安心感を心に持って生きていけるようにして
余計な不安感を感じるような事に関心を持たせなければよい
わかるな?」
『は、おおせの通りに御座います
我が村の村長、村三役として長年、租税米についての諸々をするにあたり
家は村の一部、村は領の一部、その領のために生きる事が全て
何かを運ぶだけで仲介料を得ている運び屋のよそ者が語る
農村に生きる我等には不要な、都にいる商人の強欲な感覚は不要な悪しき感覚
孫や孫の周りにいる子供組の子供達にしても
いかにして、この農村のため 家のために 孫子にいたるまで農村で働けて
村の租税米を領に納めるための野良作業だけに従事し
この農村で一生を生きていく将来のために
農村に必要とされる百姓として生きていくためになる事だけを学んでいます
自分の利益の事だけをなどは考えず
馬鹿げた自分以外の人間にとって無意味な欲望になど囚われず
馬鹿げた不安に憑りつかれて自分勝手な事を考えず
村全体の事を考え 村のために生きる人間になるよう
滅私奉公こそが我等の生きる道
と安心して日常を過ごせるように教育しております
ところで今年の村の収穫見込みなのですが・・・
春先に冬眠明けの熊が大量発生して農村が襲われ
梅雨時期に豪雨で河川氾濫が発生し
山の木の実すら少なくなって猿や猪、鹿による作物被害
さらには例年より気温が高くなりすぎまして・・そのぉ ですね』
「おう、そうじゃった ちょうどよい
ワシの息子が今年、米取引所で
租税米を先物取引米として取引する役目を任される事となった
長年、租税米収納の役目を先祖代々、請け負ってきた努力の賜物じゃ
我が領の米の価値を高めるべく役目を果たす事となった
米取引値については安心せい
今年は天候不順により凶作となって現物米が少なくなり
米の値が高騰するという予測で先物取引米を買って
米値が騰がると考えて買い方に回る手口が主流じゃ
高くなるものには買いが入って更に騰がる
そして実際の米値も高騰する
隣りの領は豊作となって現物米が多くなり
米の値が暴落するという予測で先物取引米を売っておるがな
奴等の手口は全て裏目に出るというワケじゃの
暑すぎる夏の年は、秋の台風も激しいものが発生するのであろう
わかるぞ、今年は領の全ての村で凶作になって
秋の収穫時期に先物取引米を相殺できる現物米の量は
少なくなるのだろう? なあ?
ワシが言いたい事が わかっておるであろうの?」
『は、わかっております。不作の年にやる
米値の吊り上げ手口を前例通りに仕掛けます』
二人とも、長ゼリフを忘れもせずに、かみもせずに
良く通る声で語ります
橋田だったら、話している途中で
あれ? 次のセリフなんだっけとド忘れして
余計なアドリブで誤魔化して
相手役に迷惑をかけてしまいそうなほどに
結構、長いセリフです
会話劇なので会話が変だったら舞台は失敗です
たいしたものだと思いました。
・・・・・
再び、霊山がナレーションを語ります
(夏を迎えてからの、売り手口を入れた隣りの領地
その役所では、米役人と領主が裏目に出た米取引に慌てています)
入ってきたのは演劇部で1番2番に上手な高校3年生役者です
「で? じゃの? どうして? こうなったのじゃ?」
『豊作になると判断した手口を
領主様の御指示通りに実行したまでに御座いますが?』
「なぜ? 米が米問屋にすら無いのじゃ? と聞いておる?」
『はて? 何故に御座いましょうな? わかりませぬ』
「なんとかせい。何故に下がらぬ
そんなに行き過ぎた相場になるなど・・ありえぬは」
『と言われましても、現物米が無いものは無いので
なんともなりませぬ
一斉に値が騰がると商人が買占めたんですかな?
全く誰でしょうなあ、けしからん御仁がおるものですなぁ
誰か買い占めた米を安値で売りに出す商人が
おらぬものでしょうかなぁ』
「出させれば、よかろう
今すぐに、まだ高い内に売らんと
下がって底値で投げ売りになるから
今すぐ売らねばと、売り煽って
買い占めた米を放出させろ
商人どもが先を争って売り出すようにな」
『全く、どこの誰でしょうな、けしからん話ですが、実は・・
米問屋なのか、商人なのか、誰が原因か、わかりませぬ』
「いいから、なんとかせいよ」
『は、仰せの通りに売り煽りを入れてみます』
・・・・・
(しかし、米値は買いが買いを呼び、品薄感が蔓延
秋になって今年の新米である現物が出回っても
一向に値段は下がらぬままに、先物米の秋決済期日となって
その売り仕掛けをしていた領では大きな巨額損失を出した
そして責任問題となり、誰に責任を押し付けるかが語られます)
「今年の米取引において、彼奴が何をしたワケでもない
彼奴の下に人々が群れが集まっておっただけじゃ
その者どもが、このような結果を招く事態を引き起こしたのが
時代のせいだとも、群れの中で生きた人々の想いが産んだものでもなく
全てを彼奴の責任だとでも、いう事であろう 違うか?」
『まことに、あの御方は運が悪ぉ御座いましたな
座った座、そこに座ったものが全てを司っている
という事で認識されておりましてな
たまたま、座っていた時に良い事が起これば
貴殿のおかげと賞賛され
たまたま、座っていた時に悪しき事が起これば
全ては貴殿のせいであると罵倒される
そういった御席に座られたのですからなぁ
ですが お座りいただいている間
まるで、この世で領主様にでも成ったような
高揚した気分を味わえたで御座いましょう
中央で先物米の管理監督をする御役目をする人々と関わり
自分が支配層に成れたような時間を過ごせたのですからな
これも、運命と受け入れて下さるのでは無いのでしょうか?
今年、一年だけでも、この米取引役目を受け生きられた事は
あの御方にとって誉となりましょう
本人も事を成したと満足でしょう
我等のように長きに渡り役目を持つのでは無く
たったの一年で役目を剥奪され追放される
という残念な結末と、なってはしまいましたが』
・・・・・・・
(今年の米相場で負けた側の領主の館
失敗して巨額損失を出した責任をとらされる
米役人の責任者が呼び出され
領主様が直々に沙汰を言い渡します)
『わかるぞよ、戦乱の時代であった時
何故に共に死ねなかったのかという、其方の悔いが
己だけが、おめおめと生き恥をさらしてしまった
という心の奥底に張り付いたモノが
今回の御役目で、隠居してみては? どうじゃ?
この世を去りたいとまでは思わぬであろう
だが、この領内の中心からは去れ、去らせてやる
後は子供、孫の世代に任せ、消えるが花ぞ』
「我等は戦乱の世であった古より生きた
もはや、この世から淘汰されるべき存在でしょう
百姓雑兵として農村と戦場に生きた親
闇の者として生きた兄弟や我等
戦乱の世で少しでも偉くなりたいと
戦って強さを証明して成り上がってきた一族
しょせんは時代が産んだ仇花
戦乱と混乱が収まり、平和に領内の村々を統治していくのに
戦いだけのために、戦場でしか生きられぬ我等は
平穏な世には無用の長物
もはや、これまでに御座いましょう
最後に米相場という鉄火場で戦えた事は誉れに御座います
逆手口をした敵に負けてしまったからには
いさぎよく去りたいと存します
しかし、生き恥をさらすような事となっても生き延びたい
あさましくも、そういった心を持つ者も一族におります
彼等を滅ぼすような事はせずに
生きながらえさせて貰いとう御座います」
『わかった、そなた達の願いを叶えてしんぜよう
我等の平穏のために過去の亡霊悪鬼と化した愚か者どもを道連れに
強く勇ましく勝つ事だけが生きる道と信じる者どもと共に戦い
派手に戦って潔く散ったと後世に名を遺してやろうではないか
措置達一族の生きながらえたいと申すものは・・・
そうじゃのう、目立たぬ闇の世界で生きる道を与えよう
未来を与えてやろうではないか
それで、よいな』
「は、ありがたき幸せに御座いまする」
(そして、裏目に出た取引の責任をとり米役人だった男は去った)
・・・・・
(一方、今年の米相場で勝った側の領主の館
領主様と筆頭執事が、いつものように語りあいます)
「毒にも薬にも成らぬ
いても、いなくても、どっちでも良い存在が多い時代と
劇薬のような異様なる存在感のある人物が多い時代
そちは、どちらの方が平和な世の中になると思う?」
『そうで ございますなあ 毒にも薬にも成らぬ存在
といいますか、自分の存在感というものを示すために行動する御仁
野心の大きな方というのは権力を欲しますからな
そういった欲望を抱く方が多ければ平和には成りますまい』
「そうであろう?
いつの世も争いの元は利を得たいというような我欲、強欲じゃ
ならば、多くの者が、そういった欲望を抱かぬ世にすれば平和が訪れる」
『まことに、その通りに御座います
しかし、欲というものは無くなりはしないものと思いまするが』
「いつも通り、今まで通りに同じ事の繰り返しを望む心
農村の村長から領を納める大名まで
自分の権力を維持したい人間が
農村の百姓が一揆を起こさぬよう
城で役目を務める侍が下剋上を起こさぬよう
身の程を弁え、謙虚に己の分というものを知り
農村全体、領全体を
今まで通り いつも通りにしておきたくなるため
また、領、村の一部である家のために
農村に生きる親が子に自分と同じ百姓として生きる事が
素晴らしいと教えるのが当たり前な世界
農村から租税米を徴収する役目を果たす役人の子は
先祖代々が果たしてきたのと同じ役目につくのが
素晴らしい事で当たり前な事だという常識
大々的に世襲制を広めるのだ
演劇種類は、なんでもよい
世襲制で一子相伝で伝える文化を民衆に広めよ
一揆や下剋上での立身出世物語を語る
文化自体を全ての民の心から無くせば
平和が訪れる、そういったものであろう
己の名誉や権威を追い求め、平穏に生きようとする百姓から
現状からすると無謀なほどの租税米を取り立てる悪徳役人と
その取り立て作業をする仲間といった悪役
その悪役を滅ぼして百姓を助け
平穏な今まで通り、いつも通りな日常を守る正義の主人公
いや、これは違うか・・・
自分達が雑草のような草と粟稗の粥を啜りながら
領のために作った米を租税米に出す自己犠牲精神が美しい
先祖や親や同じ農村の同じ百姓の家に生まれた
同じ年代の人間と一緒に
農村の掟と守り、百姓として生きる一族の宿命を受け入れ
謙虚に 質素に 勤勉に 地道に過ごす素晴らしい人生
といった人生観を、村長や村三役を通して村の掟などで仕込み
当たり前となっておる我が領の善悪観からは外れてしまうの・・・
舞台は、戦国時代が終わった頃
我が領の農村に住み生きる者にとっては
遠い村境から離れた地、異国も同じな空想上の世界
そこに生きる己の利だけを追い求め、損得勘定だけで集まりし
成り上がり者の悪徳商人と、その仲間の悪徳代官
己の利のために哀しい堂々巡りを創ろうとする極悪人・・・
世の平和、そして平穏に生きる町民のため
極悪人を成敗して今まで通り、いつも通りな
町の平穏を守る、正義の御奉行が活躍する物語
といった勧善懲悪な物語が良いかの
殿、および城勤めの者どもの前で上演
城下町で上演後、豪農などがいる農村を上演して回らせろ
ただし、それは今年だけで、来年から続きを見るのは
城勤めの者と、城下におる町人までで良い
どうせ農村の百姓が見ても理解できぬものであろうからの
間接的に口伝えで、いつか見てみたい人気の舞台が
村から遠く離れた地にて上演されておる事と
おおまかな内容が伝われば良い
日々の過酷な野良作業に追われて時間が無いであろうし
観劇娯楽などというものに使える銭も無いであろうしの
農村で可能なのは、村長や村三役、その一族くらいであろう」
『さようで御座いますな
二度と協力な武力を持って戦乱を起こさぬように
農民だか雑兵だか分らぬ存在から成り上がった者の一族を
見せしめに滅ぼした事で決着をつきましたから
その成り上がり者どものような強欲は悪とする物語を
仰せの通りに民の人心に
”ただ平穏に何事も無く過ごす平穏な時代に生きられた我等は幸せ
この平穏のためには、争いを呼ぶ我欲は悪
我欲を抱え争いを呼ぶ悪人は成敗され滅ぶべきもの”
といった素晴らしく美しい良識を刻み込んでみせましょうぞ』
(そして、数ヶ月後、勧善懲悪物語が完成
その物語は領地の皆に知り渡り
老人から子供までが慣れ親しむ演劇として
毎年、上演されるようになりました)
・・・
なんとも地味で古めかしい脚本の舞台が終わりました
衣装も400年くらい前の封建制度時代のもので
歴史に興味が無い人にとっては、何コレ?舞台です
橋田は見ていて思いました
でも、よくこんな時代遅れなシチュエーションの劇
顧問の先生がOKだしたなあと
最後のカーテンコールで何故かは理解できました
演劇部の顧問は・・・歴史の先生です
少しでも歴史に興味を持ってくれる生徒を増やしたい
という目論見で、監修プロデュースしたのでしょう。




