永川ちゃん 公的圧力との闘い
6月後半。大学予備校は模試の季節です。
第二高の情報工作科に噂が流れました
軍需産業大学 将官学部への入学可能性判定模試
通称、将官模試で良い成績を取れば
男女共学になった第一高校に編入できるという噂が。
二高で平均以下成績であった場合
軍需産業大学の後方支援学部のような
軍人一家での奥様候補にしかないなれない
という悲しい現実を打破し
女性士官候補扱いされる第一高校に行けるのです!
自分たちが平均以下の成績では
昔ながらの男性軍人の奥様候補でしかない
という現実を見ないで騒ぎました。
そもそも噂はデマです、よく考えればわかります
なのに連中は大騒ぎをしています
あえてツッコミを入れませんでした。
なぜかというと、私自身・・
大学へ行けば4年間だけにしろ何かが待っている
という根拠の無い夢と希望を抱えて勉強をしてましたし、
夢や希望を抱えて努力するのは、いい事と思えたからです。
このままでは、レベルの低い 迷 奴 メイド・・・
いやいや、軍人の奥様候補を大量に解き放つだけです。
ですが我等の努力にはある障害が横たわっていました
模試を仕切るのは第一高校の教師陣
男尊女卑とか良妻賢母とかいう教育を受けた教師どもです
彼らが第二高校の生徒が将官模試を受ける
などという要望を受け入れるはずがありません。
だって共有空間なはずの図書館に入館しただけで
女のくせに、ここへ二度と来るな、女人禁制な場所だ
というような、心を折るための言葉の暴力で殴られます
見張りのようにいる第一高校の当番教員に。
私は個人受験するつもりです
私ならマジでやるのを第二高教師たちは知っています
気がつかなかった事にしてくれることでしょう。
そんな受験準備中をする日々の放課後
委員長ハッシーが、がっつりと肩をつかみました
そして小中、情報工作科と一緒に過ごしてきた面々が
私を見ています、とっても、嫌な予感がしてきました。
「永川さん、将官模試を申し込めるように頼んでよ
ねぇ? いいでしょお?」
「個人でやればいいのでは?」
こういう交渉事を何故かハッシーは
私に依頼してきます、何故でしょうか?
「教師に、いや学校側に一番信用があるのは
あなただってば、あなたしかいなーい」
「ただ単に交渉能力があって
比較的、交渉術を知っている個体だと思われているだけです」
「お ね が ー い !」
なぜか頭を下げてきました
自分でやればいいじゃん
そんなツッコミが浮かびますが言い出せません
んで結局・・・
しょうがないなぁ、やってやるよ
と答える私は、おだてられると木を登る
ナニカのような存在です。
・・・
交渉するために職員室に行きました。
「失礼します」
「おお、永川か。どうした」
「敵兵を一瞬で皆殺しにする方法は見つかりましたか?」
担任の先生との、いつもの挨拶です
「うーん、なかなか無いな。国際世論が煩いからな
大量破壊兵器は一般市民へのジェノサイドだとか騒ぐしな
だから、優秀な司令官や参謀だけを自殺に追い込む
精神汚染を発生させる精神破壊兵器を考えてるよ」
「第三高校の実験室で、実験用モルモット使って
試行錯誤している内に完成するんじゃないですか?」
しばし、そういった最新兵器論な世間話が続きます。
「それで? 今日の用件は?」
「情報工作科の連中が将官模試を受けたいそうです」
「え? それはな・・・無理だなぁ・・」
「なんで?」
「お前ら女だろ?」
「では私は個人で申し込みます。その日は休みますので」
「ちょっと待て」
「はい? なんですか?」
「どういう理由で休むつもりだ?」
「学校が将官模試を受けさせてくれないので
個人で受験するという理由ですが?」
「少しまずいなあ。俺はこれでも教頭を狙ってるんだよ
うーん・・・とにかくな・・・面倒はゴメンだし
変な前例が自分の担任クラスで発生すると
問題発生前例が人事参考データとして記録されて
色々と面倒な事になるし・・・よし!
第一高校の職員室に行って受けてもいいか聞いてこい」
そして小声で付け加えます。
「その時にな、この地域で一番大きな新興宗教の
教祖様の親族な事を強調して言ってみていいからな」
「えー・・・?」
「露骨に嫌な顔をするな。な?」
私は一族内では異端な無神論者です。
この時に頼まれて断れなかったのは失敗でした。
◇
今、私は正座あんど土下座をさせられています
なぜ、こうなったのでしょう?
ただ『将官模試を受けたい』と言っただけなのに。
「女が将官模試を受けるだとぉ? 恥ずかしくないのか!!!」
しばし、心を折るつもりな言葉の暴力で殴られます
女が将官模試を受けるのは恥ずかしいことのようです
知りませんでした。
「我々が軍需産業大学の関係者であるうちは
お前らになんか将官模試は受けさせんからな!!!」
つまり「本当に受験したけりゃ俺等を退職に追い込んでみろ」
という意味でしょうか?
第一高校の教師も案外アグレッシブなんですね。
もう、何を言っても無駄な事を思い知らされ、帰りました。
◇
「そっかー そうかぁー くぅふふふふぅー」
第二高校の職員室に戻ると担任がうれしそうな声を出しました。
なんだ、この野郎ぉお。土下座させられたのにぃいいいい!!!
「まあまあ、今回は将官模試は諦めろ、な!」
な! じゃねえよ
・・・・・ あ、そう。 ふーん。 そういう態度なんだぁ
そうかい いーよ いーよ わかったよ
すべてにムカついて頭に血が上った私は
問答無用で個人枠で申し込むことにしました。
「先生」
「なんだ?」
「第一高校の職員室に爆竹投げ込んでいいですか」
「ちゃんと第三高校のアフォのせいに、できるように
わからないように、アリバイ作り時限装置つけて仕掛けろよ」
「装置の仕組みは」
「この回路図で作れ、第三高校でも同じ授業をやっている
時限爆弾製造・解除授業で使ったヤツだ」
手書きのメモをくれました。
なるほど! アフォでも作れるるし、製造コストが安いです
更にアフォのせいにできます。
「でもさ、もっと面白い方法があるぞ」
「はい?」
結局、私は将官模試を受けました
そして、第二高校の校長に手紙出しました。
「第一高校のXX先生に将官模試を受けたいと言ったら
言葉の暴力で殴られたので、個人受験することにしました」
無視したら文部科学省大臣と学校法人の理事長に
コピーと言葉の暴力を録音した音声データを送ると添えて。
この涙ぐましい努力のおかげで、第二高生徒でも
申請するだけで将官模試を受けられるようになりました。
最近になって『第二高出身で将官学部に合格した娘がいる』
という地方新聞記事を読んだので、
私も少しは貢献したのではないかと思えます。
……少子高齢化で 第二高 情報工作科は
第一高 情報工作科と併合されたので
第二高 情報工作科自体は現存してませんけど。
ちなみに個人受験した将官模試の成績は
第一高 情報工作科の平均よりも良かったです
もちろん、第一高 将官科への編入なんて
実際には、制度として存在していなかったのです。
さらに蛇足ですが、爆竹は情報工作科全員で製作し
第一高文化祭のときに職員室に設置しました
第三高校に第一高校教師が怒鳴りこみ責任問題になりましたが
教師として検討して、語るべき責任が
間違っているような気がしたのは私だけでしょうか?
・・・まる ぺけ さんかく しかく まる。




