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霊山さん 英霊との遭遇



 高校生になって2ヶ月が経ち6月になりました


 鎮魂旅行に出かけます


 ち ん こ ん りょ こー? な に そ れ?


 ですよねー、私、霊山も最初、そう思いました。



 昔、国のために戦って英霊となった

 魂ゆかりの地めぐり旅行をするという

 軍需産業第二高校の恒例行事で


 昔、敵国だった国のマスコミとかが

 そんな戦争犯罪者を祭った場所に

 参拝に行ったりするのは、ケシカラン


 と批判の大合唱をする場所巡りをします。


 内心、こんな、レクイエムだけを合唱する

 合唱団コンサートみたいな行事

 やめれば、いいのにと思っている人もいるようですが

 校内の多数派世論を気にして誰も何も言いだせません。



 この行事を聴いてから、嫌な予感しかしません


 霊感が鋭くて、昔から変な物が見える変な娘としては

 現地で不思議な変な物が見えてしまう

 という事が、わかりきっているので

 親に体調が優れないのでサボるって言いました


 すると、返ってきた言葉は


「バカなの? 高校の修学旅行に行きたくないって信じられない

 旅行の積立金とか言って払わされた金、返ってこないのよ

 せっかく払ったのに、もったいないじゃない。

 それにね、数年してから行って良かったって思えるから、ね!」


 ね! じゃねえよ。


 親は軍需産業大学の学園都市である地域に住む住人の

 町内会での世論に心が埋もれているので

 その常識に囚われているから

 信じられない謎の生き物を見るような眼で見て

 悔い改めさせようと説得して行かせようとします


 根負けして、わかった行く行くから、と言わされ

 結局、鎮魂旅行とやらに参加する事となりました。


 行ったら色んなモノが視えるのは、わかりきってます


 モノに視えている事を悟られると

 下手をしたら憑いてきてしまうので

 視えてないフリをするのが大変な数日になるのも

 わかりきっています・・


 さらに言えば、”悪しきモノ” に遭遇したら

 霊障で体の具合が悪くなって

 楽しいはずのイベントでも辛いだけ


 でも、こんな事を言ったとしても


 視えてない人には、何を言っているんだ? 大丈夫か?


 というようなセリフが返ってくるだけです

 何も感じない、視えない人が羨ましく思えますが


 ようは自分の気の持ちようだ


 と古典的な ”気合い” で、なんとかするしかないのです。




 一日目、ガイドさんが、はるか彼方な昔の事を説明します


「我が国が、最初の外国との戦争で勝利した時


 敵国と海を隔ててはいますが

 一番距離的に近い、この地が

 戦時中の暫定首都となって

 皇帝が将軍を兼務して陣頭指揮しました


 戦争が我が国の勝利となって終戦した後

 国内で一番の軍都となったのです」



 などなどと説明した途端、どこからともなく

 言霊に引き寄せられるように

 ”モノ”が湧いて出てきます


 これは・・・ ”悪しきモノ” では無いようですが

 どう視ても・・英霊様には感じません


 軍都内での権力争いに敗れ

 権力争いに勝って自分を淘汰した人々を呪っているのか

 未練とか後悔などが魂を、この地に縛り付けたか

 何かでしょうか?


 哀しく生きざるを得なかった恨み辛みの残滓でしょうか?


 ガイドさんが軍都内であった事件を語りだすと


 ついに・・”悪しきモノ” が謎の呪文をブツブツつぶやきながら

 悪意の集合体のような危険動物のような感じを纏って出現

 汚く濁って澱んで不気味な空気を発します。


 やっぱ、こなきゃ良かったと後悔しますが

 今更、しょうがないです


 能天気なハッシーとかは、早くも夜の宿での内輪の遊びを

 何にするかを楽しそうに相談中です

 消灯後、深夜に遊ぶつもりなようです

 先生とかには優等生づらしているのが嘘のようです


 いいなあ、何も視えない

 何も感じないってのは・・・楽しそうです。


 とにかく憑かれて憑いてこられないために自衛手段が必要です

 必死になって、一切、存在に気づいていない事にします!


 存在に気づいている事が知られると


 ”え? 聞こえるの? 視えてるの? では俺様の言う事を聞けぇ!”


 と、成仏できず彷徨っている魂の中身を語ってきて

 気を強く持たないと心が壊れてしまうかもしれません。


 え? 頭おかしい?


 そうですね、これが心の病気によるもので

 その病気を治したら視えなくなるなら

 どれだけ、いい事でしょうか。



 実は高校生になってから、いわゆるスピリチュアル雑誌出版社で

 悪霊ホットスポット探訪する取材助手をするバイトをしています

 そこで一緒にスポット探訪をする結構な霊能力者の先生に

 貴方の霊感は本物よ。と保証されました。


 ある悪霊ホットスポット探訪時は

 あまりにも強烈な ”モノ” と遭遇して

 霊障が出て色んな所が痛くなり

 番組で呼ばれていた御祓い師さんに ”モノ” を祓って貰いました


 金になるとはいえ、心と体の健康は大事です

 ああいうトコへ一人で行っちゃダメです。


・・・


 という葛藤がある中、ガイドさんの案内は続き


 皇帝が将軍を兼務して陣頭指揮した

 玉座がある広場に入ります


 本当に英霊らしきモノが漂っています

 尊い感じで神秘的な空気を放つ神々しいモノです


 思わず拝んでしまいました

 変な奴と思われたかも、とキョドりました

 こういう場所だけを案内して欲しいと内心は想います。


・・・


 しばし案内が続き、何かの”モノ”を閉じ込める結界のような

 慰霊塔に到着してガイドさんの説明が始まります


 ”モノ” が偉い人へ霊障を与えるほどに

 巨大化する事象が発生した事と


 ”モノ”に憑かれた人が起こした残虐事件


 その時代に存在した霊感のある偉人が

 巨大化した ”モノ” を封印するために

 この慰霊塔を作り


 その後、霊障も残虐事件も発生しなくなった


 という伝説を語ります。


 中を少し覗かしてくれました


 どす黒く濁った凶悪で狂暴な獣のような空気を放つ

 ”モノ”が 閉じ込められているように視えます

 凄まじい禍々しさです


 ”モノ”の禍々しさに呼ばれて

 更に禍々しい ”モノ”が寄ってきたのを

 まとめて封印したように視えます。




 私たちはバスに乗り込みました

 今のところ、”モノ” に憑いてこられてはいません

 何事も無く無事で良かった良かった


 バスが発車します。




 次に到着したのは、


 ここが軍都となった後

 数十年が経過した後、同じ敵国と再び戦争になり


 真っ先に軍都が敵国に侵攻され

 住んでいた軍高官や家族、そして一般市民まで

 大量虐殺をした処刑場と化した時の激戦地跡です。


 入口が視えてきました


 ぐにょーん


 はて? なんでしょうアレは? なんか蠢いています


 でへぇげへぇーえ


 凄く妙な感触の音が響くような感じです


 ・・・っどぉああああああああ


 ・・ぅうぐぅぐぐぐううううう


 ”モノ” が呻きます


 蠢き大量に漂う ”モノ”のオゾマシサに

 気持ち悪くなってきました。



「大丈夫?」 ハッシーが聞いてきました。


「具合が悪くて死にそう」


 馬鹿デカい巨大な ”モノ” の近くを通り

 小動物のようにガクガクブルブルしてしまい

 苦くなって、ハッシーの手を握ってしまいます


「そういう趣味はないんですが……」


 ハッシーがユリと勘違いして言います



 みんなは視えてないようですけど

 ガイドさんの話が怖かったようです。目が血走ってきます

 乱気流的に漂う ”モノ” のせいだったのかもしれません

 ”モノ” が大量に漂っているのが

 霊感が無い人にもわかるレベルになっているのでしょう


 視えて無いけど怖いのかな? あ、視えてたら近寄らないよね。



「はははは! お前ら何を怖がってんだ。

 遥か彼方の昔話だぞ、わははははははっ!」



 霊感ゼロの担任が空気を読まずに言います



 マジっすか?・・・こんな


 凄い霊障で体調崩す人が出るんじゃないか

 ってくらいなのに何も感じないんっすか?


 凄いっす。逆に、その不感症さ、リスペクトっす。




 一番、不気味で禍々しい ”モノ” の近くにいるのに

 担任は何も感じず平気なようです

 クラスメイトの全員が無口になっているのとは対照的です。


・・・


 再び、バスに乗り込み、帝国軍需工場跡地に到着します


「今の貴方達と同年齢の人が

 戦地に赴き兵隊となった大人の代わりに

 勤労動員の少年少女労働者として働いていました。」


 ガイドさんが勤労動員をしていた人々の当時の様子を語ります


 ここには、”モノ”が、いません


 勤労動員でいた人は全て成仏したか

 他の場所で成仏したんでしょう


 空虚なほどに何も、ありません。清々しいほどです。

 さっきとかの軍上層部だったモノとかが

 禍々しく漂っている場所とは対照的です。


 というわけで大人しくガイドさんの説明を聞いて過ごします


 へー。そーなんですかー。ふーん


 心の琴線に触れるような言葉も無く時間が過ぎていき


 見学コースの出口にある土産物屋で

 面白半分に買った土産について

 キャッキャ言いながら喜んで話すハッシーが視界に入ります


 やっと ”モノ” による気持ち悪さが消えてきました。


・・・


 ですが、2日目に異変が起こりました


 青森ちゃんが憑かれたのです。


 シャレにならないほど馬鹿デカい”モノ”が背中に乗っています

 よく霊障が出て倒れないなと驚くほどです


 死霊か、生霊かは不明ですが、

 とにかく彷徨う ”モノ” になってしまった魂のようです


 体か魂が耐性があるのか、視えている ”モノ” が実は幻覚なのか

 霊障が出て救急車で病院送りになっても

 不思議じゃないサイズの ”モノ” です。



 たまたま、バスで隣の席になった青森ちゃんに憑いている

 ”モノ”の凄い禍々しさに、アテラレマシタ。


 本人は平気らしいのですが……

 一日中、 ”モノ” が視界に入り意識が変になります

 奇妙な感覚に囚われ、昼飯もあまり食べられません

 それで気がついたら宿です

 たしか……なにやったっけ? すぐ寝てたと思います。


 それで次に記憶に残っているのは最終日

 最終日も意識があるようなないような……

 青森ちゃんに憑いていた ”モノ” は

 軍都を離れたら、どこへともなく消えました。


 気がついたら地元、学校へ行って解散でした。


・・・


 というような体験をするたびに家に帰ってから想います。


 この変な ”モノ”が視える眼を捨てたーい!!!

 この変な ”ナニカ”が語る言霊が聴こえる耳を捨てたーい!!!


 たまーに親切な御霊に遭遇して


 ”歴史は繰り返すから、こうなる可能性が高い”


 みたいな予言を語ってくれて、それが結構に当たっている以外は

 何もメリットは、ありません。



 今からでいいから、

 アオハルとか青春時代とか楽しそうに先輩や先生が語る

 時空間と経験をギブミー!!!


 全てを諦める気にはなれず、毎回、そう思うのです。


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