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譜久島ちゃん 変態との遭遇 (譜久島ちゃん視点)



 私、譜久島は常に安全に気を配ってます。


 行動範囲の数ヶ所に大きな園芸ショベルを

 もしものために設置しています。


 ホームセンターで買って不審者撃退用に設置しました。

 ストーカーを撃退して少女刑務所行きは嫌なので

 誰かが置き忘れているという形作りが重要なのです。

 それなら事故ですまされます。たとえ事件だろうが事故になるのです。


 学校という独自の法律や慣例のある

 閉じた狭い社会なら、内輪でなんとかなるものだと想っています。



・・・


 ある日、授業をさぼりました、自主早退です。


 そして図書館へ行く事にしました

 その途中、市立体育館の横を通るのですが

 そこは第三高校ヤンキーのホットスポット。


 ヤンキーがリンチを行う危険地帯でもあり、

 変態のハッテン場でもあったのです


 当時、自分の思い込みで小学校の同級生をストーカーして

 同じようなストーカーが身近に湧くという堂々巡りに嵌っていました。


 ハッキリ言って彼らを見下していました

 今は私も所詮は同じストーカーだと客観的に見ることができます

 精神の均衡を保つためにも彼らを差別するしかなかったのです

 実に情けない生き方です。



 体育館の横を通り市立図書館へ向かいます


 不審者はいなだろうな……と確認した時でした


 眼が、完全に、いっちゃってるストーカーが立ってました。ヤッヴァ!


 電話連絡だけはしている今は第三高校にいる

 情報収集用の元小学校同級生から聞いた所では

 そのストーカーは有名変態なバイだったのです

 男でも女でもかまわないという性欲の権化が

 薄汚い笑い顔で立っていたのです。


 最初、そうとは知らず暇つぶしに、からかった変態が

 ストーカーと化したのです

 変態だから馬鹿にしたのに、よっぽど誰にも相手にされていないのか

 相手にされたと喜んで、ストーキングしてきました。


 山で熊に遭遇した人のように目をそらさず静かに後ずさりしました

 ヤバイよ ヤバイよ ヤバイよ ヤバイよ ヤバイよ ヤバイよ 誰かぁあ!

 犯される!!! とは思いました。

 だってズボンが膨らんでるんですもん

 メチャ キモッ!! 


「ぅうっきゃああああああああああああああああッ!!!」


 悲鳴をあげました。嫌だ。こいつは嫌だ。

 こんなのとだけは、嫌だぁああああああああッ!!!

 準備しておいた撃退用ショベルの所に走り、それを抜きました。


「いっやぁああああああああああああああああああッ!!!」


 何かの訓練で急所と説明を受けた位置めがけて、フル スイーングッ!


「ぁぎゃーんッ!」


 シャベルで殴ると簡単に倒れました。


「おっりゃぁああああああああああああああああああッ!!!」


 シャベルを振り下ろしました。何度も、何度も

 相手が抵抗をしなくなって、冷静になった私は

 自分のやってしまったことの深刻さに震えていました。


 ハッキリ言って高校卒業後のように自意識過剰な時代なら

 この話を武勇伝として語ったでしょう

 ですが当時は、ビビりました。エラいことしたと思いました。


 刑事に問い詰められたら

 正当防衛と言い張る自信がないレベルの暴行傷害です!


 どうしよう!!! 困惑、混乱、焦燥、悲観、悔恨

 色んな感情が爆発して、泣きながら、その場から逃げ

 そのまま電車に乗り家に帰りました。


 そして…… やってしまったものは、しょうがない


 と、誰にも何も言わずに寝ました。


 悪いことをした自覚はあり、逃げ場は、どこにも無く

 とある短文が何度も頭の中で鳴り響きます。


  どうする どうすればいい でも誰にも言えない


 とにかく、隠蔽が不可能な事件です

 こうして私は暴行傷害罪で少女刑務所に……

 行かなかったんです……これが、不思議なことに。



 死にそうな顔をして学校に行きました。

 職員室に呼び出されると警察が待ち受けていて

 そこで逮捕されるはずなのです。……映画で見ました。


 そして判決が下る瞬間がやって来ました

 担任がやって来てホームルームをはじめ

 終わった後に言います。



「あと譜久島、お前、職員室に来い」


「は、はあ……」



 担任の後ろについていきます。 警察が待ち構えているのでしょうか?


「勉強できるからって授業サボっちゃダメだぞー」


 本当にそれだけ? 目が泳ぎました。

 本当にそれだけでした。形ばかりの警告を受けて解放されました。



・・・・・・



元ストーカーだったけど懐柔して、今は第三高校の情報収集用に

電話で話しをする程度に関わっている小学校時代の元同級生に電話します


そして、噂話って感じで、昨日撃退したストーカーの事を聞きます


アレって、どうしてる? つきまとわれているんだけど と聞きました



「あー……、昨日階段から落ちて怪我をして、しばらく学校に来れないって


 階段から落ちて骨折したんだとさ」



 それだけ? なぜ、口をつぐんだのか?


 それはプライドやクラスのヒエラルキーなど

 複雑な問題が絡み合っています。


 つまり、女に殴られて倒されたと言えなかったのです

 女に負けて怪我をしたという事実は

 男のメンツが命なヤンキーにとっては死刑宣告も同じです。


 もしも言ったら弱い負け犬を食い物にしょうとする

 ハイエナが出没して襲われます。それが嫌だったのでしょう。


 こうして私の犯罪は永遠に隠蔽されました。

 当時は幸運だったと思ってました。


 でも最近思うのです。

 この事件で何か大事なものを永遠に失ったのではないかと。


 良心とか善なる心とか常識とかの失って初めて価値に気づくものを

 失ったのではないだろうかと思うのです。


 とうとう暴力に手を染めてしまったのですが

 日常は普通に続いてゆきました。


 私に返り討ちに遭った説が流布され

 ヤンキー漫画のように次から次へと強敵が現れる

 というような展開は訪れませんでした。



 変態ストーカーは


 入院中に退屈し退院後に馬鹿げた夜遊びをして

 そのまま、行方不明になりました。突然の失踪です。


 黒組織の女と夜遊び中に関わらないけりゃいいのに関わって

 ストーカーして黒組織の人間に消されたとか


 住民を、どうとでもできるほどに偉い軍高官の御嬢様を

 ストーカーして、闇に葬られたとか


 色んな噂が飛び交ったそうです



 ストーカー王子様が主人公で

 素敵な御姫様と出会って幸せを手に入れるという

 ストーカーが心の中で作り上げて実現しようとした物語の

 プロローグだったろう世界は


 私の視界から消えて無くなりました。


 ひょっとしたら、奴は生きていて

 心の描いた、王子様と御姫様の大恋愛世界を

 実現して幸せに暮らしているのかもしれませんが


 今の私にとっては、どうでもいい事です。


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