7-9. 鉄壁の女の作戦会議
(*瑠飛視点)
講義の空きコマ。
食堂の隅の席で、
俺は未依沙に向かってニヤリと笑いかけた。
「なあ、未依沙、面白い噂聞いたからシェアしていい?」
「え〜、噂?あんまり興味ないんだけど…」
「まあまあ、そう言われても話すんだけどさ」
「何それ、瑠飛が話したいだけじゃん」
さぁ、この噂を話して、未依沙はどこまで
俺に打ち明けてくれるかな。
「未依沙が大学で、なんて呼ばれてるか知ってる?」
「え…何それ、怖いんだけど…」
(わたしの別名があるってこと…?)
未依沙の表情が不安気だから、
早めに伝えてあげよう。
「鉄壁の女って言われてるらしい」
「……!? 」
(なにそれー!意味わかんないよ〜)
「大学でモテて無双してるのに、告った人すべて撃沈してるからだってさ」
未依沙の顔が渋くなってて、
見てるこっちは面白い。
「モテて無双はしらないけど、断ってるのはなぜか広まってるんだね…」
(わざわざ自分が振られた話を他人に言いふらす人がいるんだ……理解に苦しむ…… )
「未依沙はさ、中・高でもモテてたじゃん?でも、その時も全部断ってるだろ?未依沙は好きなやついんの?」
確信をつく質問をしてみた。
幼馴染だけど、ここまで
ストレートに聞いたのは初めてだった。
「……いるよ」
(昔から一人だけを見てる。)
未依沙の目には力がこもっていて、
決めてる人がいるんだってことが
目力からも伝わってきた。
「俺、それが誰か当てていい?」
「え?!?!」
(当てていいってことは、瑠飛には予想がついてるってこと?)
「未依沙の好きなやつって…かげだろ?」
「……どうしてわかるの?」
(恥ずかしい…なんでバレてるの)
「俺さ、中学の時にそうなのかな〜って思ったんだよね」
「……っ!」
言葉にならない声が漏れる。
(中学から?!瑠飛はずっと気づいてたんだ…恥ずかしい…)
未依沙が手で顔を隠してる。
でも赤くなってる耳は隠せてなくて、
小動物みたいだなと思った。
「未依沙は一途だよな〜。モテるのに一人だけって、すごいよな」
かげがそれを知らないのが問題なのだが…
「かげちゃんがカッコよくて、他の人は眼中に入らなくて…」
おーい!バレた瞬間、惚気かよ〜!
「めっちゃ惚れてんじゃん!」
あれだけ男たちをフリまくってる理由がこれか。
思いが強えなとは思ってたけど……
マジでガチじゃん!
「うん…。惚れてるの。
中学・高校はずっと見てるだけだったんだけど、大学ではかげちゃんに気づいてもらえるように頑張ろうと思ってて…」
「でも、かげってずば抜けて鈍感だよな」
俺と未依沙は顔を見合わせて苦笑いをした。
そう、かげは恋愛に関しては
どうしようもなく疎い。
「そうなの。それでわたし、どこまで押していいのかわからなくて…
ぐいぐい行きすぎて、引かれたら怖いしさ」
(かげちゃんにどこまでアプローチしていいのかわからなくて、いつも結局控えめになっちゃうんだよね)
「いや、多分だけどさ、ぐいぐい行くくらいで気づくレベルなんじゃないの?」
「そうなのかな〜」
「きっと、ちょっとくらいのアピールだと、まともに受け止めないで、サラッと流しちゃうと思うんだよ。まさか、自分に…みたいにさ。鈍感くんに自覚してもらうには、あからさまに伝えるくらいがちょうどいいんじゃないかな」
「確かに…これまでぜんぜん気づいてもらえてないから、それを試すのもありかも?」
(引かれるのも怖いけれど、気づかれずに終わるのも嫌だし…)
(わたしも勇気を出してチャレンジするタイミングなのかも)
「俺もできることがあれば協力するし、言ってな」
「瑠飛、ありがとう。心強いよ」
未依沙は応援してもらえることが嬉しそうだった。
これまで気づかれないように
一人で必死に考えて行動していたんだろうな。
「未依沙もかげも、俺にとって大切な存在だから、二人がくっついたら俺もめっちゃ嬉しいからさ。未依沙、頑張れよ。応援するから」
そう言って俺は未依沙の頭をポンポンした。
二人が結ばれる日に向かって、
俺もいいトスを上げたいと思った。




