7-5. 新しいベクトル
本日は21時にも投稿します!
同じ内容を景虎&未依沙視点で
お楽しみくださいね!
(✳︎景虎視点)
「なぁ、かげ〜未依沙がバイト始めたって聞いた?」
瑠飛が何の気無しに聞いて来たけど、
俺は知らないことだったから驚いた。
「え?そうなの?聞いてない」
「カフェでバイトだって。意外だよな」
「まあ、大学生だしバイトくらいするんじゃない?」
俺たちと同い年なんだから、
バイトをしていてもおかしくないよな。
春リーグが一息ついた今も、
俺たちのバレー漬けの毎日は変わらない。
バイトなんて到底できないけど……
バイトって、なんか憧れるな…
「今日さ、今から未依沙のバイト先行かね?」
瑠飛の瞳が、いつにも増してキラキラしている。
これは、何か企んでいる時の目だ。
「うーん、未依沙は嫌がらないかな?」
「いや、別に茶化すわけじゃないから良くね?」
瑠飛は何としても行きたいらしい。
そんなに遠くではなかったから、
部活が早く終わる日の帰りに、
俺たちは未依沙のバイト先に向かった。
結構大きいカフェみたいで、
未依沙がテラスのお客さんに
接客しているのが見えた。
オシャレなオープンテラスには緑が多く、
どこかボタニカルな雰囲気の漂うお店だった。
俺たちが外の席に腰掛けると、
店員さんが注文をとりにきた。
未依沙、いつ俺たちに気づくかな?
瑠飛は愛想良く店員さんに注文している。
瑠飛のキラースマイルに店員さんも
何だか嬉しそうだ。
注文を取り終わったあと、ゆっくりしていると
未依沙がさっき注文をとってくれた店員さんと
話をしながらこっちを見ていた。
瑠飛に伝えると、瑠飛はさっと
未依沙に手を振って、未依沙もそれに応えていた。
こういうことを恥ずかしげもなく、
自然とできてしまう瑠飛が
羨ましいと思ってしまう。
イケメンはサラリとやってのけるよな。
俺は目線だけ送ったが、手は振らなかった。
——あの頃より少し大人になった未依沙が、
笑っていた。
それだけで、なんでだろう…
胸の奥が少しうずいた。
✴︎
「瑠飛、かげちゃん。来てくれてありがとう。抹茶ソイラテはかげちゃん?」
「うん、俺。ありがとう。」
「こちら、パンプキンラテです。」
「ありがとな、未依沙。バイトの制服、いい感じじゃん。バイトはどう?順調〜?」
気軽な会話の中に、しっかりと
褒めの言葉を入れるのは
きっとベルギーの血が入っているからだと思う。
瑠飛からは学ぶことがいっぱいだけど、
俺にできる気がしない…
「瑠飛がパンプキンラテを頼むの、なんだか意外だった。あと、この制服のこと、ありがとう。瑠飛にそう言ってもらえて、安心した」
幼馴染だとしても、
褒めてもらえるのは嬉しいよな。
未依沙はニコッと笑って
瑠飛と会話を続けている。
「バイトは楽しいよ。働いてる方も素敵な人ばっかりだし、よくしてもらってるよ。」
「そっか、それは良かったね。」
心配していたわけではないけれど、
その言葉を聞いてどこかホッとした 。
「今、友達の紹介で、忙しい時期で手伝ってるんだけど、3ヶ月だけだからわたしもちょっとお試しみたいな感じなんだ〜。あ、もう行くね。ゆっくりしていってね。」
バイトという経験をしている未依沙が
眩しく見えた。
俺はきっとバレー一筋を続けていけば、
バイトをすることはないだろうから。
「未依沙、バイト楽しんでるみたいで良かったな。」
瑠飛が未依沙を眺めながら呟く。
「ほんとだな、なんだか一安心だ」
「俺たち、未依沙の保護者みたいだな」
「だな」
二人でくすっと笑い、
たわいもない話をして過ごした。
未依沙が隣の席を片付けに来た時、
瑠飛が未依沙に声をかけた。
「未依沙、今日のシフト何時まで?」
「今日はあと15分であがりだよ」
「家まで送ろうか?もう暗いし。」
「あ、えっと…バイト先の先輩が送ってくれるって言ってて…。でも、ありがとうね」
未依沙がなんだか気まずそうに言うから、
少し気になった。
なんだか、本当は隠しておきたかったみたいな
感じが伝わってきた。
まあ、未依沙はモテるからな、いつものことか。
「オッケー、じゃあ、気をつけて帰れよ。俺たちもそろそろ帰るか」
「そうだな。未依沙、お疲れさま」
「ありがとう。瑠飛、かげちゃん、またね。」
瑠飛は未依沙が下がった後も、
何となくそっちの方を見ていた。
「先輩って、多分あの人だと思う。」
俺もその先に視線を送ると、
背の高い、シュッとした金髪の男の人がいた 。
若くて、多分、俺たちと同じ
大学生くらいだと思った。
未依沙は美人で優しいから、
男は放っておかないよな、
と妙に納得してしまった。
「未依沙はモテるからな〜。バイトを始めたら出会いが増えるし、お客さんから絡まれることもあるだろうから、ちょっと心配はしてたんだが…」
未依沙がバイトを始めたことから、
そんなことまで考えていたのかと、
瑠飛の視野の広さに思わず感心してしまった。
「確かにな。でも未依沙は軽くないから大丈夫じゃないかな…?」
「まあ、次会った時に探り入れとくわ。」
俺たちはカフェを後にした。
きっといろんな出会いの中で
未依沙もいつか彼氏ができるんだろうな…と、
帰り道でふと思った。
俺に彼女ができるのはいつなんだろう…
人を好きになったこともないし、
経験もなさすぎるから…
そんな未来が果てしなく遠くに
感じてしまったのだった。
本日21時は未依沙視点でおおくりします!




