7-2. 入学式で君は
(*未依沙視点)
スーツ姿に身を包み、
3人一緒に入学式へ向かう。
わたし、今日からここに通うんだ…
受験で足を踏み入れた地に、
大学生として戻ってくることができた。
わたしは横にいる、カチッとした服装の
かげちゃんを直視することが難しかった。
どうしよう…
高校の制服、ユニフォームに見慣れたわたしには、
スーツのかげちゃんが大人に見えて仕方ない…
かっこいい…
ニヤけないように、1人気を引き締める。
背が高くてハーフの瑠飛は、
相変わらず女子の視線を浴びていた。
でも、本人はいつものように
特段意識することなく振る舞っている。
慣れないヒールがコツコツと音を立てるけれど、
わたしの足取りは軽やかだった。
大学では部活の勧誘で学生たちがごった返していた。
「よ!後田!マルセル!」
バレー部の先輩たちが2人を見つけて声をかけた。
「春休みで体、鈍ってないだろうな? 」
春休み中に大学の練習に参加していると
言っていただけあって、先輩とはもう
打ち解けている感じだった。
先輩は二人の肩を組んでいる。
「先輩、ちゃんと準備してきたんで、楽しみにしててください」
瑠飛は先輩に余裕な笑みを浮かべて
サラッと受け流し、私たちは
入学式会場へ向かった。
瑠飛の世渡り上手なところは本当に
すごいものだと感心してしまう。
✳︎
無事に入学式を終えると、かげちゃんと瑠飛は
取材で撮影があるからと新入生バレー部数名で
写真を撮りに行ってしまった。
そっか…
かげちゃんと瑠飛は、どこの大学に
入学したのかバレー界で注目されてるもんね…
同じ大学に入学できたけれど、
2人はやっぱりすごい人なんだ…
新一年の男子と女子のバレー部が
そろって写真を撮られている。
ひらひらと舞う桜の隙間から、
きらきらした木漏れ日を浴びる
かげちゃんの横顔があまりにも大人びていて、
一瞬とまどう。
まるで大人の男の人だ…
わたしの知ってるかげちゃんと違うみたい。
ふと爆笑のシーンが訪れ、みんなが笑っている。
かげちゃんがチラッとわたしの方を向いて笑った。
あ…いつもの笑顔だ。
大人びた顔も変わらない笑顔も、
どっちもかげちゃんなんだ。
なんだか、安心した。
そして、心の中で再確認する。
もう、焦ったり比較したりするのはやめるんだ。
わたしだって同じ場所に来れたんだから。
「もしかして、みいさちゃん?」
優しい声で後ろから名前を呼ばれて振り返ると、
懐かしい顔があった。
「え、うそ!たまきちゃん?うそ、ここの大学だったの? 」
「うん!そうなの!未依沙ちゃん、小学生のころから美人のままだから、すぐにわかっちゃった。」
「たまきちゃんも、全然変わってない。可愛いよー!そして、大学でまた会えて嬉しい!」
私たちは喜びで互いに手を合わせて
ぴょんぴょん飛び跳ねた。
「ねえ、あそこで写真撮ってる二人も、同じ小学校だったよね?」
「そうそう!後田景虎くんと、マルセル瑠飛くん」
「やっぱりそうだよね、なんか懐かしい2人だわぁ。もしかしてみいさちゃんはその三人と中学も高校も一緒だった?」
「うん!そう!そして大学も」
「それすごすぎない!運命じゃん!とゆーか、付き合ってるとか?小学校から大学まで一緒って、何かあるってこと?って思っちゃった」
てへっと、いたずらっぽい目を
私に向けながらたまきちゃんは質問をしてきた。
会って早々なのに、
久しぶりに会った小学生の同級生、
月下環ちゃんの
推理が的確過ぎて、ドキドキした。
「付き合ってないよ。全然、そんなんじゃないの。でも、3人一緒の大学に来られて、わたしは嬉しいよ」
「未依沙ちゃんと瑠飛くん、幼馴染で美男美女だから、大学で付き合うとかアリかもね?」
ニヤっと楽しそうな目がわたしをとらえる。
たまきちゃん、
恋愛へのアンテナが鋭すぎない?
わたしの本命(かげちゃんへの気持ち)が
バレるのも時間の問題かもしれない
久しぶりに会った同級生との
会話が楽しすぎて、大学生初日は
しっかりと浮かれて過ごした。
これから、部活や同好会に入るのか、
バイトをするのか…
学生生活の始まりに、
胸がはち切れそうだった。




