6-7. 見てはいけないもの
本日は21時にも投稿します!
同じエピソードを二人の視点から書いています!
お楽しみに
(✳︎景虎視点)
玄関で靴を脱ぐのも苦しそうだ。
ふらふら歩きながら
何とかリビングにたどり着く。
未依沙はそのまま
ソファに倒れこんでしまった。
ソファにかけてある
ブランケットだけでは寒いだろう。
でもリビングを見渡しても
他のブランケットはなかった。
寒そうに震えている未依沙を
なんとかしてあげたい。
「未依沙、他に布団ない?寒いだろ?」
…
「私の部屋の布団と枕をとってきてくれる?」
ブランケットにくるまっているからか、
小さな声を何とか聞き取れた。
未依沙の部屋に入ることには抵抗があった。
でも、今はそれよりも未依沙が大事だ。
俺は階段をのぼり、
小学生のころに遊んでいた
部屋の取っ手に手をかけた。
部屋に入ると女の子の部屋の匂いがした。
シャンプーのような甘い香り。
男の部屋からは絶対にしない、
優しい空気が漂っていた。
小学生のころとは
ベットも机の位置も変わっている。
部屋の中をじろじろ見るのは良くないと、
布団をもっていくという任務にだけ集中する。
布団をもって階段を降りるけれど、
あの甘い匂いがまだ
自分に残っている感じがした。
リビングに戻ると、
未依沙はやっぱり寒そうにしていた。
未依沙の頭の下にそっと手を入れ、
持ち上げた。
あっつ!
すごい熱じゃん…
頭の下に枕を置き、寝かせると
熱のこもった目が俺をとらえた。
「かげちゃん、ありがとう」
「うん、いいよ。気にしないで」
なぜか泣きそうな声に
胸がきゅっとなった。
俺が守らないと!という思いが沸き上がる。
ふいに顔に触れたくなった。
いや、これは熱いかどうかの熱を計りたいだけで…
やましい気持ちはない。
俺はおでこに手を当てた。
これだけ熱ければ、しんどいだろうな…
「未依沙、スポドリ飲む?」
「うん、ちょっとだけ飲む」
キャップを開けてボトルを差し出すと、
少しだけ飲んでまたすぐに横になっていた。
俺がなにか作れたらいいんだけど…
バレーしか考えてこなかった俺は、
料理はからっきしだめだ。
エナジーゼリーを差し出したが、
未依沙のまぶたはぎゅっと閉じられ、
そのまま寝息を立て始めた。
いつも笑っていて明るい未依沙の
弱っているところを初めて見たかもしれない…
自分の中にある記憶をたどっていくけれど、
こんな場面は出てこなかった。
大きな目が閉じられると、
なぜか幼さが感じられる。
優しい寝顔だな…
いや、寝顔を見られるの、嫌だよな…
未依沙の寝転がるソファに寄りかかり、
俺はケータイを開いた。
『今、未依沙の家にいる。熱が出てて、家族もいないみないで、少し様子見るわ』
母さんにメッセージを送った。
学校の宿題でもするか、
と鞄に手を伸ばすと、
ブーブーっとケータイが震えた。
『それは大変。そばにいてあげなさい。』
母さん、めっちゃ返信早いな。
ケータイを置いて
リビングの机を借りて宿題を広げた。
未依沙の両親、いつ帰ってくるんだろう…
集中力が続く限り、宿題を片付けていく。
家でもこれくらい勉強出来たらいいのにな…
時計を見ると50分経っていた。
後ろで寝ている未依沙を振り返ると、
ちょうど寝返りを打ったところだった。
震えは止まっていたが、
少し汗をかいているみたいだった。
顔にかかった髪の毛をとり、
ほっぺに手を当てた。
俺の手、今冷たいから、
熱い未依沙にはいいかも?なんて
軽い気持ちだった。
すると、あろうことか、
未依沙は俺の手に触れた。
起きてるのか?
いや、寝ぼけてるのか?!
「冷たくて、気持ちいい」
俺の手を掴み、
すりすりと顔を少し動かした。
起こしちゃいけないと思って、
俺は身動きが取れなくなった。
なぜか背筋がゾクゾクっとした。
急激に保護欲をかきたてられた。
俺の心臓が一気に音を立てる。
この部屋の時計の秒針と
うるさい心臓だけが響くかのようだった。
熱があって、寝ぼけてしてるのはわかってる。
でも…恐ろしい人だ。
これは、男全員、落ちるだろ…
「未依沙…」
起きてるかと思ったがやっぱり寝ていた。
目が覚めるまで気長に待つか…
*
時計は8時半を回っていた。
一度起こすか…
ゼリーを食べさせた方がいいな。
「未依沙?」
優しく声をかけると、
静かに目を開けた。
「かげちゃん…あれ、ずっといてくれたの…?」
ゆっくりと時計を確認して、
時間を見た瞬間、目を見開いた。
「うそ…もうこんな時間?」
顔に焦りを浮かべる未依沙を
安心させたかった。
「時間は気にしなくていいよ。それより、熱はどう?」
「まだ熱い…ゼリー食べたい。」
そういって手を差し出す。
甘えるみたいな声に、
胸が少しだけざわっとした。
…熱が出たら、誰でもこうなるよな。
ゼリーを開けて渡すと、
ごくごくと飲んでいて安心した。
さ、俺はそろそろ帰るか。
きっと瑠飛なら、未依沙の頭を
ポンポンして帰るんだろうな。
なんでふと、そんなことを
思ったのかわからない。
でも、熱が出ている今、
それができそうな気がした。
「俺、そろそろ帰るわ。未依沙の家族、いつ帰ってくるの?」
「多分、そんなに遅くならないと思う。」
「そっか…早く良くなるといいね」
いつも瑠飛がしてるみたいに、
頭をポンポンとしてみた。
きっと瑠飛は特に
意識することなくできてしまう。
でも、俺にはそれは無理だった。
吸い付くようなサラサラの髪に
触れるだけで、ドキッとしてしまう。
未依沙は一瞬驚いた顔をしたが、
そのあとすぐに寂しそうな表情を見せた。
まるで帰ってほしくないって
言ってるみたいだった。
「おやすみ、未依沙。」
「おやすみ。かげちゃん、ありがとう」
俺は上野家を後にした。
未依沙の熱が
少し上がったことなんて知らずに…
21時、(*未依沙視点)も投稿します!




