6-6. こんなときまで、俺の心配かよ
(✳︎景虎視点)
部活中、なにか視線を感じた。
いつもなら練習中はゾーンに入って
周りが見えなくなるのに、
なぜかこの時は違った。
一瞬立ち止まって周りを見渡すと、
体育館の壁に寄りかかって
休んでいる未依沙が見えた。
遠すぎて目があったかどうかわからない。
でも、未依沙が俺を見ている気がした。
なんで座ってるんだろう…
不思議に思いながらも、
俺は練習を続けた。
✳︎
部活が終わり外へ出ると
未依沙の後ろ姿があった。
やっぱり変だ。
俺は走って未依沙に追いついた。
「未依沙!どうした?」
潤んだ瞳が俺をとらえた。
「しんどいのか?」
部活の荷物や学校のカバンを
手から奪い取った。
「かげちゃん…ありがとう」
今にも泣きそうな目と、
こんなにもか弱い声を聞いたことがなくて、
一瞬狼狽えそうになった。
なんとかしなきゃ!
強い衝動が俺の中に巻き起こった。
「体調悪すぎじゃん。俺がニケツで送るわ」
「それは絶対ダメ」
さっきまでのか弱い声から一転、
力強い声が返ってきた。
涙目の瞳からなぜか怒りが見て取れた。
「何言ってんの。こんなんで自力で帰れるわけないじゃん。」
「でも、自力で帰るしかないの。大丈夫だから。」
「なに強がってんだよ。俺が乗せてくって」
「その気持ちは嬉しいけど、ニケツは絶対にダメ。警察に捕まったら、かげちゃんの部活にひびくから…」
っ…
自分が辛い時に俺の部活の心配かよ。
正直、理解に苦しんだ。
でも、未依沙は絶対に曲げない感じだから、
ここは俺が折れることにした。
言い合いになって体調が悪化したら、
元も子もないしな。
「頑張って自転車乗れる?」
優しい声で聞くと、
安心したみたいで、
素の苦しい笑みを浮かべた。
「うん。自転車が一番早いから…」
「俺、未依沙の荷物持ってくよ。家まで送る」
「ありがとう」
未依沙は体を重たそうに
引き引きずりながら自転車置き場へ行き、
フラフラしながらも前に進み始めた。
体が震えているのが見える。
これは、これから高熱が出るな…
急いで帰らないと。
1人で帰らせるなんて心配でできなかった。
途中でコンビニに寄って栄養ゼリー、
スポーツドリンクを買った。
コンビニに寄っている間、
外で待ってもらっていた。
俺はコンビニの中へ駆け足で入り、
秒で買って出てきた。
なんとか持ち堪えてくれ…!
そう祈りながら、
なんとか未依沙の家に着くことができた。




