6-5. コートの熱気、見えない一線
6-5. コートの熱気、見えない一線
(✳︎瑠飛視点)
俺たちは今年の春から、
いよいよ受験生になる。
といっても、俺とかげは何も変わらない。
バレーに真摯に向き合うのみだ。
一方で一般的な大学受験をする未依沙は、
これから模試が増え、大変になるらしい。
受験が本格化する前に、
俺たちは大学バレーのリーグ戦に
3人で行くことにした。
大学のバレーを体感したい俺たちと、
大学の雰囲気を感じたい未依沙。
大学進学のためのモチベーションを上げよう!
という作戦だ。
会場には観客が応援に来ていて、
ボールを叩く重い音と歓声が入り混じっている。
「あれ?今の、何で得点にならなかったの?」
大学の体育館で繰り広げられる
バレーの試合を見ながら未依沙が質問する。
「あれはね…ネット際にオーバーでトスを阻止したから…」
かげは丁寧にバレーボールのルールを
未依沙に説明していた。
「かげちゃんの説明、とってもわかりやすいね。もっとバレーのこと知りたいな。また教えてくれる?」
「俺にはそんな可愛くお願いしたことないのに!」
俺はちょっとだけ未依沙をイジってみた。
「だって、瑠飛はバーン、グイッ、ギュッとかばっかりじゃん(笑)」
「はぁ〜?そんなことねーし!」
試合を見ながら、
くだらないやり取りをする。
「二人はほんと、漫才コンビみたいに仲良いよね。高嶺の花的存在の未依沙が実はこんなに面白いってみんな知らないだろうね。」
未依沙を”高嶺の花”と言った時の
少し遠くを見るような、寂しげな微笑みが、
俺の中で妙に引っかかった。
「…」
(瑠飛とわたしが仲良い?高嶺の花的存在?かげちゃんはそんなふうに思ってるの?!)
……ったく、こいつら、
バレーのラリーは続くのに
会話のラリーはすぐ事故るな…
「いやいや、この人は俺の扱いに慣れてるだけです」
未依沙を指差しながら、
無言になる未依沙に代わって、
俺が会話を続けた。
「俺も、もっと瑠飛の扱いに慣れないとだな」
くしゃっと笑って俺に笑顔を向けるかげ。
「もう十分だろ」
俺はそう言って、
少し静かになった未依沙を見た。
何かを考えているような感じがした。
何を思ったのかは知らないが、
今は未依沙に深掘りするタイミングではないな。
俺はバレー観戦に意識を向け、
大学バレーのレベルを肌で感じていた。




