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一番近くて、一番遠いーネット越しの恋を、君とー  作者: りなる あい
第六章: 君の隣を、勝ち取るために

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6-3. 甘くて少し苦い、階段の上のランチタイム

(*未依沙視点)


4時間目が終わり、

わたしは急いで教室を出た。

向かう先はスポーツ科。

もちろん、かげちゃんのお弁当を持って。


スポーツ科は男子が多いけれど、

すぐにかげちゃんが見つかった。


かげちゃんと呼ぶと目立って恥ずかしいな…

どうしよう…と思っていたら、

瑠飛がわたしに気づいた。


「未依沙、どしたの?」


「かげちゃんに用があって。」


クラスの男子たちの視線を感じて、

恥ずかしくなる。

ちょいちょいと手招きをして

かげちゃんを呼び出す。


「はい、お弁当」


「ありがとう。作るの大変だった?」


「大丈夫。お口に合うといいんだけど…じゃあ、わたしは行くね。」


「せっかくだから一緒に食べない?」


予想外の展開に驚いた。

まさか、一緒に食べられるなんて!


「わたし、お弁当教室だ。取りに行ったら時間かかっちゃうよ。」


「じゃあ、特進科の近くで食べる?」


「そっか、そうだね、そうしよう。」


二人でわたしの教室へ戻りながら、

お弁当が食べられる場所を

頭の中で必死に考える。

カップルのお弁当スポットはいろいろあるけど、

場所が空いてなさそうなんだよな…


お弁当を持って教室から出てきたら、


「いい場所見つけたかも!」


とかげちゃんが歩き出した。

二人で並んで廊下を歩きながら、

廊下の窓から見える秋空は、

いつもより少し澄んで鮮やかに映っていた


かげちゃんが見つけたのは非常階段だった。


「良かった。誰もいない。ちょっと寒いけど、ここでもいい?」


「うん、ここで食べよう」


階段に腰掛けて二人で並んで座る。

4階で結構風があって、

少し肌寒く感じた。

間にお弁当を置くけれど、

それでも距離が近いと感じた。

肘の触れそうな距離にドキドキしてしまう。


「じゃあ、フタ、開けます」


かげちゃんがウキウキしてて

可愛いなと思いつつ、反応を気にした。


「うわ〜!めっちゃ美味しそう!」


かげちゃんが無邪気に喜ぶの、

久しぶりに見たかも。

頑張ってお弁当を作って良かったと

心から思った。


「こんな豪華なお弁当、今日はラッキーな日だな。いただきます」


丁寧に合掌をすると、

大事そうに味わいながら食べてくれて、

なんて素敵なの!とわたしが

惚れ惚れしてしまった。


かげちゃんがわたしの顔を見て


「美味しい」


と褒めてくれた。

その瞬間、顔が赤くなった気がして

わたしはパッと顔を逸らした。


「どうした、そんなに恥ずかしかった?」


かげちゃんがからかってきた。


「別に!」


わたしはお弁当を食べることに集中した。

付き合うなら、こんなふうに

わたしが作ったものを喜んで

食べてくれる人がいいなとふと思った。


「このお肉、ご飯と合うね。ウマっ」


それぞれのおかずの感想を言ってくれて、

わたしも嬉しくなる。

「……これ、味付け最高。白飯が止まらないんだけど」

一口のご飯の量が多くて、

豪快に食べる姿が男の子らしいな〜と

微笑ましかった。


「かげちゃん、部活頑張ってるでしょ?タンパク質大事かなって思って、お肉多めにしたの。」


「俺のために多めに入れてくれたんだ。体のことまで気を使ってお弁当作ってくれたんだね、ありがとう」


「うん、おかず、考えるの楽しかったよ」


「未依沙が将来付き合う人は幸せ者だね」


他人事みたいにサラッと放ったその言葉に

一瞬、心が引っかかった。

まるで、かげちゃんは

その対象ではないような言い方だったから…?


なんか、モヤモヤするな…


頭の中で考え事をしているうちに、

お箸で摘んでいたミニトマトがポロっと落ちた。


「あ!」思わず声が出てしまう。


「トマトちゃんが逃げた」


「ははは」



かげちゃんが急に笑い出す。

わたしは何がそんなに面白かったのか

理解できない。


「とっさに『トマトちゃん』『逃げた』ってワードが出るの、すごいね」


かげちゃんの笑いに

わたしもつられて笑ってしまう。


二人で笑い飛ばしたあと、

ふと会話が途切れて、

昼休みの生徒の声が遠くに聞こえる。

この何気ない時間に大きな幸せを感じていた。


わたしからのお礼としてお弁当を渡したのに、

かげちゃんのリアクションがどれも嬉しくて…

まるで、わたしがプレゼントを

もらったみたいな気持ちになった。


なんなんだろう、この感じ…


「ごちそうさまでした。本当に美味しかった。ありがとう。未依沙、料理上手だね。」


「こちらこそ、食べてくれてありがとう。かげちゃん、褒めるの上手すぎるよ〜。美味しく食べてくれてありがとう。嬉しかった。」


二人でのお弁当の時間が、

この一回で終わってしまうことに

少し寂しさを感じてしまった。

すっごく楽しい時間はあっという間だった。

またいつか、一緒にお弁当を食べられたらいいな…


最初、階段に座った時は肌寒く感じた。

でも、かげちゃんと一緒にいると、

いつの間にかそのひんやりした風が

心地よく思えた。


秋の澄んだ空気が、

二人の時間を少し特別にしているみたいだった。


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