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一番近くて、一番遠いーネット越しの恋を、君とー  作者: りなる あい
第五章:越えられない距離と心の熱

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71/144

5-15. コートの向こうの遠くの君へ

第5章ラストです!


(✳︎未依沙視点)


県選抜の大会へ足を運んでいた。

バスケ部の練習を午前中で終わらせて、

お父さん、お母さんと一緒に

体育館の観客席に腰を下ろしていた。


間に合ってよかった…!


会場には予想に反して

大勢の人が応援に来ていた。

県選抜は期待の選手たちが集まる大会だ。

いつもと違うユニフォームに身を包んだ選手たちが

試合前のウォーミングアップをしていた。


青のユニフォーム姿の2人がとても新鮮だった。


かげちゃん…

青色も似合う…


試合での活躍に期待して、胸が膨らんだ。


「バレーの試合、久しぶりに来たわね」


「バレーボールって今はこんなに盛り上がってるんだね」


お父さんとお母さんも誘ってよかった。

試合前の姿も撮ろうと、私はケータイを構えた。


画面越しだとあんなに近くに見えるのに…

実際は、2人が手が届かない場所に

行ってしまったみたいだった。




✳︎




第一試合、かげちゃんと瑠飛の

連携プレーが連続で決まっていく。


かげちゃん、瑠飛にトス

あげすぎじゃないの?


やっぱりこれまでの経験から

2人のタイミングが合っているから、

やりやすいのかな?


瑠飛のアタックが決まる度、

会場から歓声が上がる。

瑠飛のアタックはもちろんすごいのだけど…

そこに繋げているセッターは、

アタッカーほど目立つ存在ではない。


でも、私の目はかげちゃんに夢中だった。


どんな体勢でもトスをあげ続ける。

とにかく動く、ボールを見失わない。

着地でコロンと転がったと思ったら

すぐに立ち上がってボールを上げている。


美しい身のこなし、体幹に見惚れてしまう。

自分がバスケをしているからだろうか、

そういうところが気になってしまう。


県選抜に選ばれ、

スタメン起用されているかげちゃんは、

観客の声に一瞬も振り返らず、

次のトスだけを見ていた。


その姿が、眩しかった。

幼馴染として、とても誇らしくもあった。


カッコいい。

やっぱり誰よりも輝いてる。

胸の高鳴りを抑えられなかった。




✳︎




試合が無事に終わった。

大きな拍手が選手たちに送られる。


今日、私が応援に来ることは

2人に伝えていた。

でも、こんなたくさん観客がいれば、

私がどこにいるかなんて、わからないだろうな…


終わったら、2人に会いに行こう。

そう思っていると、瑠飛が

わたしたち家族に気づいて手を振る。


わたしは笑顔で手を振りかえした。

横にいるかげちゃんも、

控えめに手を振ってくれた。

私がここにいるって気づいてくれた。

応援してたってわかってもらえて嬉しい。


私はお父さんとお母さんと一緒に席を立ち、

選手たちを待つことにした。



✳︎



「ねぇ、あの家族、有名人?」


「あの子、高校生かな?」


わたしが両親と一緒に待っていると、

周りから声が届いていた。

わたしたちのことかな…?

聞こえているけれど、

気づいていないフリをする。


そんなことをしていたら、

選手たちがぞろぞろと出てきた。


さっきまでコートに立っていた

選手たちを近くで見て、

その高さと大きさに圧倒される。


瑠飛とかげちゃんも後ろの方からやってきた。


私は、2人に駆け寄った。


「瑠飛!かげちゃん!カッコよかったよ〜」


2人の顔には、疲れが少し感じられたけれど、

それよりもプレーへの充実感、

達成感が溢れていた。


「ありがとう!応援、来てくれて嬉しい」


瑠飛はいつものフレンドリーな笑みを

浮かべている。


瑠飛には出待ちをしていた女子たちの

熱い視線が飛んできていた。


「未依沙、お母さんとお父さんも今日は来てくださってありがとうございます」


すっと頭を下げてスマートに

お礼を言うかげちゃんの姿に、

またしても惚れそうになる。


「景虎くん、すごく頑張ってたね!カッコよかったよ」


お母さんはかげちゃんの手を掴んでいた。


えー?!

お母さん!

わたしですらかげちゃんと

手を繋いでないのに…

自分のお母さんをこんなに恨めしく思ったのは

初めてだったかもしれない(笑)


かげちゃんは照れながら、

反応に困っている様子だった。


うーん、次は可愛いだ…


かげちゃんへの感情が渋滞している。


あっ、忘れるところだった。

私は手提げを瑠飛とかげちゃんに渡した。


「忘れそうだった。はい、これ差し入れ」


「うわー!未依沙、ありがとう!これ、美味しくてめっちゃ好きなんだよね」


瑠飛はいつものように褒め上手。


「わざわざありがとう、未依沙」


目を見て感謝を伝える

かげちゃんの姿勢が素敵だなと思った。


「この前、かげちゃんが動いた後のタンパク質が大事って言ってたから、これにしてみたんだ」


美味しいと評判のプロテインバーを

喜んでもらえてよかった!


そのまま会場を後にして、

わたしたち家族は車で家に向かって走っていた。


外の景色はすっかり冬模様。

木の隙間から遠くの街並みが透けて見える。


青いユニフォームを着て、

コートに立つ姿がもう一度蘇る。

その背中を、今日はただ

見つめるしかなかった。


バレーに集中したい。という宣言通り、

しっかりと自分のやるべきことをしていた。

ネット越しに見えるその姿が

なぜか遠くにいるみたいだった。


わたしも追いつきたい。

胸が熱くなった。


頑張っている彼の横で、

安心した気持ちで隣に立てる自分で在りたい。

大丈夫、わたしならできる。


しっかりと勉強をして、

どの大学でも入れる学力をつけよう。

覚悟のような、宣言のような、

不思議な感覚が自分を貫いていた。


自分の中で腑に落ちたからだろうか…

かげちゃんに対する不安が

薄れていくのを感じた。


邪魔をしてはいけない…って

自分の気持ちを抑えていたけれど…

わたしは、かげちゃんを諦める必要はないじゃん。


すっと自分の中で納得できた。

そう思えたら、心が軽くなった。


そばにいよう。

1番の応援者として。


冬の空に刺した一筋の光に救われた気がした。

吐く息は白くなるほど冷たいのに、

胸の奥だけが不思議と温かかった。



明日から第6章が始まります!

引き続き、お楽しみください♡

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