5-9. そんなの聞いてない
(✳︎未依沙視点)
「瑠飛!早くきて!」
俺のことを待っていたのか、
俺を見つけるなり未依沙は
慌ただしく手を振って呼んでいる。
「どした?そそっかしいな〜」
「どうしたも、こうしたも…わたし、聞いてないんだけど!」
「聞いてないって、何をだよ?」
「あの子、かげちゃんのこと好きなの?」
ど直球な質問が飛んできた。
それだけ焦ってるってことだろうな。
未依沙の目から必死さが伝わり、
俺の知っている限りのことを伝えようと思った。
「あの子、1年の辻口さんって子で、怪我してるところをかげが助けたみたい。多分、かげのこと好きだと思う。今日は、何か渡したいものがあるって、かげのこと待ってたよ」
「そうなんだ…怪我してるところを助けたって、かげちゃんらしいね…」
「だよな」
急にしおらしくなり、未依沙から
エネルギーがしゅーっと縮んでいく。
「かげちゃん、何もらったんだろうね…」
未依沙、かげのこと気になるよな…
瞳の奥が揺れているのに気づいたけれど、
俺からはそれ以上なにも言わなかった。
「明日、かげに聞いてみれば?」
「わたし、かげちゃんと学校で全然会わないからな〜…」
寂しそうな表情を浮かべるから、
俺は未依沙の味方だって伝えたくなった。
俺が未依沙の好きな人に気づいてるって、
未依沙本人は知らないけれど。
「はぁ…もう考えるのやめた!帰る!いや、一緒に帰ろ!」
ずんずん自転車置き場へ向かって、
未依沙は1人歩き出す。
考えないようにしてるんだろうな。
ずんずん先を行く未依沙の背中が、
思ったより速い。
追いつこうとして歩幅を広げたけど、
肩を並べることはできなかった。
俺は少し後ろから、そのままついていった。




