5-2. 文化祭で抱き止められて
本日2度目の投稿です。
(✳︎未依沙視点)
「代わろうか?」
「キャッ」
飾り付けに必死で、人がこんなに
近くにいるってわからなかった。
ビックリして脚立の上で姿勢を崩しかけたら
力強い腕がわたしを支えていた。
転ばなくて安心したのと同時に、
腰に手を回されることなんて経験したことがなくて
なんだかむずがゆい。
かげちゃんはそんなことを考えず
安全のためだけに触れてるってわかってるのに…
恥ずかしがるところではないのに、
自分の体は正直だった。
「ありがと、かげちゃん。でも、後ろから急に声をかけるのはダメだよ」
まるで先生がお説教するみたいに
照れ隠しで、少しおどけて見せた。
顔が赤くなる前に後ろを向かなきゃ。
「あと一つだから貼っちゃうね」
かげちゃんの顔が見られない。
恥ずかしいよ…
気持ちを紛らわせようと、飾り付けに集中する。
わたしが欲しいタイミングで
差し出されるセロテープ。
かげちゃんはカッコよくて、気がきく男…
無敵すぎるでしょ!
「手伝ってくれてありがとう。おかげで、無事に全部貼れました。」
自分の任務が無事に終わった。
かげちゃんにお礼を言って
そのまま脚立から降りようとしたら
「ちょ、未依沙。脚立は後ろ向きで降りないとだろ。」
片方の腕をさっと出して、
もう片手はまるでわたしの腰を支えるように、
でも決して触れてはこなくて…
「あ…ほんとだね。ほんの数段だからって油断してた。」
あまりにもスマートな一連の流れに
わたしは驚くと同時に
ちょっと嫌だと感じてしまった。
誰にでも優しいって罪だな…
わたしじゃなくても、きっとこうやって
助けちゃうんだ…
自分だけの特別感がほしかったな…
「どした?」
「かげちゃん、いつも優しいなって思って」
しんみりした声が出てしまった。
「優しいというか、未依沙が危なっかしいから」
「うん…よく言われる。わたしは一生懸命なだけなんだけど…」
「まあ、それが未依沙なんだから。それでいいじゃん。みんなが助けてくれるだろ?」
わたしはかげちゃんを
意味深な目で見つめた。
「そうだね?」
(みんなじゃなくて、かげちゃんがいつも、助けてくれるんでしょ?)
なんて、言えるわけないんだけど…
かげちゃんと別れて自分の教室へ向かう途中、
ふと思い出したのは中学の運動会だった。
かげちゃんの借り物競走のお題は
「幼馴染」
一番近くて、一番遠い。
わたしはまた、この場所にいる。
同じ場面を違う視点でみるのって、楽しいですよね。
読者だけの特権です。




