4-11. お土産でほしいのは
(✳︎未依沙視点)
わたしたちは一日中、
ふれあい動物園を満喫した。
夕方の光が少しオレンジ色を帯びてきた頃、
帰る時間が近づいていた。
「ねぇ、お土産見て行ってもいい?」
「うん!見よ、お土産」
店内には、動物モチーフの可愛いお土産が
ずらりと並んでいた。
木の香りと草の匂いが混ざった店内。
どれも、今日の思い出が形になったみたいだ。
わたしには、今日どうしても叶えたいことがあった。
——それは、かげちゃんとお揃いのものを買うこと。
お土産を見ながら、提案するタイミングを探す。
でも、タイミングを見計らうほどわからなくなる。
これは勢いで言うべきだったな……。
「未依沙、何お土産買うか決まった?」
(女子ってお土産見るの好きだよな〜。今日付き合ってもらったし、俺が買うのもアリか?)
後ろから声をかけられた瞬間、
「今だ」と思った。
「まだ決まってないんだけどさ……かげちゃん…もしよかったらお揃いの物、買わない?」
「お揃いか〜いいね!何がいいかな」
(お揃いって考えてなかったけど、いいかもな)
……言えた!
しかも「いいね!」って返ってきた。
心の中で、こっそりガッツポーズ。
「うわ〜、これ可愛い」
わたしが手に取ったのは、
カピバラのマスコット。
わたしたちはカピバラ同士らしいから、
思い出のお土産にぴったりだ。
「このカピバラ、可愛いな。部活のカバンにつけられるかな?」
わたしの手元を覗き込むかげちゃん。
かげちゃんが“お揃いを身につける”前提で
話してくれるなんて。
嬉しくて顔がにやけそうになる。
「お揃い、これにする?」
「うん、そうしよっか」
——やった。
かげちゃんと、初めてのお揃い。
このマスコット、大事にしよう。
「俺、お会計してくるよ。俺からのプレゼントで」
(俺からのお礼をさせてほしい。受け取ってくれるかな?)
「わたしがお揃いが欲しいって言ったのに、買ってもらっちゃっていいの……?」
「いや、むしろお礼させて。今日、俺のために付き合ってもらったし」
ニコッと笑うかげちゃん。
その笑顔に、胸の奥がふわっと温かくなった。
「うん」
気づけば、自然と頷いていた。
お会計を終えたかげちゃんが、
包み紙を差し出してくれる。
「はい、未依沙。」
両手で受け取った瞬間、
指先が少しだけ触れた。
それだけで、息が止まる。
落とさなくてよかった。
マスコットをぎゅっと抱きしめたい衝動を、
なんとか抑えた。
初めてのデートで、好きな人とお揃いのものを——
しかも、プレゼントしてもらえるなんて。
「ありがとう、かげちゃん。大事にするね」
(嬉しそうな笑顔に胸がドキッとした。未依沙の笑った顔、可愛いな……あれ、俺、何考えてるんだ?)
……本当は、すぐにでもカバンの
目立つ場所につけたい。
「お揃いなんだよ」って、誰かに言いたい。
でも同時に、みんなに勘づかれるのが怖い。
茶化されて、何かが壊れるかもしれない。
だから私は考える。
——いつも見えるけど、
あまり目立たない場所って、どこだろう?
その小さなカピバラをそっと見つめる。
かげちゃんの気持ちが少しでも軽くなりますように。
かげちゃんなら、きっと大丈夫。
ブランクも乗り越えられる!
わたしの胸の奥が、未来への祈りでポッと
灯ったみたいにあたたかくなった。




