4-9. 俺がもらった言葉
(✳︎景虎視点)
たくさんはしゃいだあと、
お昼ご飯を食べることにした。
未依沙が俺のことを考えて、
ふれあい動物園を選んでくれたことが
嬉しかった。
「俺のことをわかってるな」
——そう思った瞬間だった。
二人で腰掛けてお昼を食べようとした時、
未依沙がボソッと呟いた。
「お弁当も考えたけれど、気合いが入りすぎかも?って思って、作ってこなかったの」
「そうなんだ?」
お弁当ってそんなに気合いが要るのか?
……まあ、確かに準備するのは大変だよな。
俺は気分転換に付き合ってもらっただけで、
十分ありがたかった。
ベンチに並んで腰掛け、
動物たちを眺めながら、静かに口を動かす。
言葉が途切れた瞬間、
遠くで聞こえるヤギの鳴き声や、
風に揺れる木の葉の音が聞こえて、
それが妙に心地いい。
スポーツ科になって俺の周りは男子が多くなった。
女子と話すことなんて、ほとんどなくなったから、
学校生活では女子と話すことに緊張してしまうのに…
未依沙は無言になっても平気だ。
無理に話を続けなきゃって焦る必要もないし、
未依沙からもそれを感じない。
心地いいな…
今日の未依沙は、いつも以上に穏やかで、
あたたかい空気をまとっていた。
きっと、俺に気を使ってくれてるんだろう。
「今日はありがとな」
自然と感謝の言葉が口をついた。
未依沙はパッと俺の方を向く。
その目が、少し潤んで見えたのは
気のせいだろうか。
「俺さ、ほんとバレー馬鹿だから、バレーのことばっかり考えてて……不器用だし、バレーくらいしか取り柄なくてさ」
目的があって話してるわけじゃなかった。
ただ、言葉にしたかった。
未依沙は、そんな俺の言葉を
遮らずに聞いてくれている。
「今までは、楽しさしか感じてなかった。ただ楽しかったんだ。バレーしか取り柄のない俺がバレーに対して重圧を感じ始めてしまったから、苦しくなったんだと思う……」
「そっか……そうだったんだね」
否定せず、ただ受け止めてくれる
その声が、心に沁みた。
話すって、こんなに楽になるんだな。
そう思った。
俺の話を聞きながら、少し遠くを眺める横顔に
光がさしているように感じた。
神々しくて、優しさが溢れてた、そんな感じだ。
綺麗だなって思った…
未依沙は体を少し俺の方に向けて、
ゆっくりと言った。
「わたしにできることがあるかどうかわからないけれど……わたしはいつでも、かげちゃんの力になりたいって思ってるよ。そういう存在がいるってことを、忘れないでほしいな」
その瞳の奥に、熱が宿っていた。
まるで泣きそうに見えた。
——そうか。
未依沙は、そんな気持ちで
今日を過ごしてくれていたんだ。
胸がジーンとした。
ぎゅっと掴まれていた心臓に、
あたたかい空気が流れ込む。
息が少し楽になる。
未依沙の存在の大きさに気づいた。
この言葉は、俺にとっての“プレゼント”だ。
もしまた、辛くなる日が来ても——
きっと今日の未依沙の言葉が、俺を支えてくれる。




