4-7. 恥ずかし、嬉しいのシンクロ
(*未依沙視点)
電車を降りて二人で向かった先は、
ふれあい動物園。
「ここでーす!」
「わぁ!ここかぁ!」
かげちゃんの声がイキイキしていて、
笑顔を見られて嬉しい気持ちになった。
「かげちゃん動物好きだし、気分転換に動物に癒されたらどうかな〜と思って」
「なるほどね、さすが未依沙。目の付け所が完璧」
さあ、行こう!と先を歩くかげちゃんを
後ろから小走りに追いかける。
自然とスキップしそうになるくらい、
この背中を追いかける瞬間が幸せで仕方なかった。
チケット売り場で並んでいると、
かげちゃんの手がわたしの頬に伸びた。
「え?」
かげちゃんの男の子らしい大きな手に
ビクっとしそうになるのを必死に止めた。
急なことに驚いていたら、
かげちゃんの手はそのまま
わたしの髪の毛をさっと耳にかけた。
自分の手とは違う、硬い質感。
バレーをしてる人の手だ…
「髪の毛食べてる」
ちょっとからかう感じで
ボソッと言うかげちゃんを見て、
わたしは恥ずかしさでいっぱいになった。
もう!なんで髪の毛がリップに付いちゃうの!
「恥ずかしいよ〜。すっごくビックリした」
わたしが顔を隠しながら必死に言うと
「今日は風がちょっと強いかもね。あ、あと…リップいいね」
「えっ…」
小さな声がもれた。
最後の言葉を聞いた時、
時間が止まったかのように感じた。
かげちゃんに褒められた!
嬉しい。
リップしてるの気づいてくれた。
こういうこと、言う人なんだ…!
そこがすごく意外だった。
かげちゃんは、女の子のオシャレとか気づかない、
疎い感じの人だと思ってたから。
「あ、ありがとう…」
かげちゃんに触れられた耳が絶対に赤くなってる…
わたしはもう一度髪を耳にかけるフリをして、
赤くなっているであろう耳を必死に隠した。
「さ、チケット買おうか。」
かげちゃんはフイっとわたしから目を逸らして、
前を向いた。
あれ?
もしかして、かげちゃんも耳が赤くなってる?
なんで…?
恥ずかしいのはわたしだよ!って
叫びたくなるのを堪えた。
恥ずかし、嬉しい。
そんなデートの始まりだった。




