4-3. やっぱりわたしのヒーローだった
(✳︎未依沙視点)
「今日は、体育館の大掃除をするぞ~」
顧問の掛け声とともに、
部員たちが動き出す。
水流高校では年に二度、
体育館の大掃除があるらしい。
いつも以上に念入りに
掃除をすることになっていて、
わたしは洗剤の入った水にモップを浸した。
わたしは高校でもバスケ部に入った。
その理由は、バレー部と同じ
体育館で部活をするから。
周りの女バスメンバーの一年生と、
率先して掃除に取り掛かる。
「あれ〜泡立ちすぎじゃない?」
「まぁいっか〜汚れ落ちそうだし!」
そう思ってモップを滑らせた瞬間——。
足元がツルッと滑って、
視界がぐるんと回った。
「痛ったーい…」
思いっきり腰を強打してしまった…。
恥ずかしいから早く立ち上がりたいのに、
痛すぎて力が入らない…
泣き笑いみたいになっちゃう、
恥ずかしいよ…
すると、バレー部の方から
かげちゃんが走ってきた。
「かげちゃん…」
「未依沙、大丈夫?立てる?」
腰の痛みと洗剤のせいで
立ちあがろうとしてもダメだった。
「ほんと、危なすぎ…」
かげちゃんが小さい声でつぶやくと、
わたしの腕を引っ張って、
そのまま滑らせた。
わたしはスルーっとかげちゃんに吸い寄せられた。
すると、かげちゃんはなんの躊躇もなく、
急に着ていたトレーニングシャツを脱いだ。
「え?か、かげちゃん、どうして?!」
かげちゃんの上裸を見ていいものか、
目のやり場に困ってしまう。
自分の脱いだTシャツで
自分の靴についた石鹸を拭いている。
「わたしのためにそこまでしなくていいよ」
とわたしは慌てた。
「俺のTシャツは気にしなくていいよ。それより、未依沙の腰が心配だから。」
真剣な顔でそう言うと、
わたしの背中と足に手を回し、
ぐっと抱き寄せた。
急にお姫様抱っこをされて
わたしはパニックになってしまう。
何が起きてるの?!
「保健室へ行こう。」
スタスタとわたしを抱っこして歩き出す。
力強い腕に抱かれて、わたしはもう熱くて…
必死に顔を埋める。
石鹸で滑るわたしをガシっと掴む腕。
筋肉の硬さと熱が直に伝わって、
わたしの心は爆発寸前だった。
「急に抱っこしてごめんね」
優しいかげちゃんの声が上から降ってきた。
わたしは、恥ずかしくて
顔を上げることができなかった。
心臓の音が腕を通じて
かげちゃんに伝わっていそうで怖い。
焼けるように熱くなっている耳を
見られたくなくて、俯いたままつぶやいた。
「かげちゃん…ありがと」
「ん?!」
(未依沙、なんか赤くなってない…?)
(うわ!やばい、俺、咄嗟にお姫様抱っこしちゃった…)
かげちゃんがわたしのことを見てる気がした。
わたし、絶対に赤くなってるよ…
かげちゃん、見ないで!




