3-16. 遠くへ行く君
(*未依沙視点)
「今日は後田とマルセルは欠席な〜。ユース合宿に行ってるから」
担任の先生が朝の点呼をとる。
わたしの幼馴染2人は、
今は東京へ行っている。
2人とも全国で見ても高いレベルだということは
知っているつもりだった。
本当にユース合宿に選ばれるレベルなのだと
改めて実感した。
全国から集まる中に、かげちゃんと瑠飛がいる。
「全国のユース合宿に選ばれたのかよ!」
「二人同時ってすごくね?」
教室がざわつく。
その事実に誇らしさを感じると共に、
1人焦りも感じて、私は笑えなかった。
二人が私の手の届かない、
空の上の住人になってしまうみたいで正直怖い。
二人はきっと、スポーツ推薦で高校へ行く。
試験勉強をして一般入試をくぐりぬける私とは違う。
その現実がわたしに突きつけられた気がして…
次の授業は、なぜか身が入らなかった。
*
みんな部活に行ってしまった放課後の教室。
机に目をやると、まるで瑠飛とかげちゃんの
ふざける声が今にも聞こえてきそうだった。
部活に早く行かないといけないのに、
ガランと空いた教室で、
わたしは一人決意をしていた。
何度も何度も考えて、私の中で出した結論。
それは、二人がどの高校を選んだとしても、
わたしが合格できるように実力をつけること。
瑠飛とかげちゃんはきっと、高校へ入ったら、
大学への進学もバレー関係になるはずだ。
目指すは関東第一リーグに名をはせる大学。
そこから逆算したら、
やっぱり高校は特進科に進んだ方がよさそう。
特進クラスに自分の身を置けば、
刺激を受けて勉強も気を抜かずに
続けられるはず。
環境が大事っていうしね。
わたしの意思は燃えていた。
二人の進む道に、私も一緒に行くんだと。
燃えている心の裏側で、
指先が少しだけ震えていた。
追いつけなかったらどうしよう。
でも、立ち止まることの方がもっと怖い。
覚悟を決めた後の足取りは、しっかりと、
でも軽やかにわたしを体育館へ導くのだった。




