3-15. 「お似合い」という名の壁
(*未依沙視点)
翌日、まだ疲れの取れていない体を
引きずるように学校へ行った。
昨日は運動会だったのに、
今日からまた日常が始まるんだ。
はぁ、もっと寝たかったな…
「みーやん、おはよう!」
「千紗、おはよう。朝から元気だね」
「そりゃもちろん!運動会での話が持ちきりだからさ」
そう言って、千紗は
ウインクをかましてきた。
「どんな話が持ちきりなの?」
待ってました!と言わんばかりに
興奮して話を続ける千紗。
千紗も結構噂話とか好きなタイプなんだよね。
さっとわたしの耳元に近づき、
衝撃の一言を放った。
「みーやん、坂口とお似合いって噂になってるらしいよ」
「え…なんで?昨日の借り物で、そうなっちゃったの?」
「そう…バスケ部の部長候補。美男美女。ってね。」
「何それ…お題は『同じ部活の人』だったから走っただけなのに」
「あ…噂をすれば…」
千紗が最高に楽しんでいることが
目から伝わる。
その視線の先を見ると、
7組の坂口が5組に来ていた。
「お、上野、おはよう〜」
頭を少しかきながら、
坂口がわたしの方へ来る。
「ぐっすり眠れた?」
「寝たけど、まだ寝足りない〜。坂口は?」
「俺ももっと寝たい」
爽やかな笑顔が朝から眩しい。
イケメンって言われてるくらいだもんね。
「いや、あのさ…昨日の借り物で、俺と走ってくれたじゃん?」
「うん、走ったね」
「それで、俺と上野が付き合ってんじゃないかって噂になってるって聞いてさ…」
「うん、それ、たった今、千紗から聞いたところだった。」
「そう、みーやんに伝えてたの。ほら、みーやんって、意外とそういうことに鈍感じゃん?」
ん?わたしは千紗の顔を見た。
わたしが鈍感?
まさか!
「まあ、噂になったかもだけど、数日経てば収まると思うから、それまでの辛抱だな。」
坂口は少し苦笑いの顔をしている。
「そうだね〜。こういう噂って、一人歩きしちゃうからどうしようもできないもんね。」
「なんか、この2人の会話、大人なんですけど!」
わたしと坂口が朝、一緒に話してたことで、
その噂に拍車がかかってたなんて、
知る由もなかった。
✳︎
(✳︎景虎視点)
「瑠飛、おはよ〜」
「おはよ〜。かげ」
教室の外で明るい声が響いていた。
未依沙がバスケ部の男子と話してた。
運動会の後に、バスケ部で何かあんのかな…?
「昨日、未依沙がバスケ部の坂口と借り物で走ったの見てた?」
瑠飛がサラリと昨日の運動会を話題にする。
「そういえば、そんなこともあったな。その後に未依沙は俺とも走ってるし…未依沙、めっちゃ借りられてたな」
2人から連続で借りられてた状況を思い出して、
くすっと笑ってしまう。
「ほんとそれな〜。未依沙、人気者だよな」
「俺のお題、『幼馴染』だったから、未依沙しかしなくてさ。幼馴染いない人、どうすんだよ!って思いながら走ってた」
「は?かげのお題、『幼馴染』だったの?なーんだ、つまんね〜」
「なんだよ、つまんね〜って」
「かげも『好きな人』だったら、面白かったのに!」
瑠飛はニヤッと笑うと、そのまま自分の席に
荷物を置きに行ってしまった。
もし、俺のお題が『好きな人』だったら、
誰を選んでいたんだろう…
男子は競技に出るから選べないし…
部活の先輩は借りるには恐れ多いし、
部活の後輩なら行けるかもだけど、
クラスまでは知らないからな…
はぁ…俺、『好きな人』引かなくてよかった。
『幼馴染』で未依沙を借りられたのが
ちょうどよかったのかもしれないな。
また後で、未依沙にお礼言っておくか。
俺は1人納得して、運動会の余韻に浸っていた。




