3-12. こんなことあるんだ…
(*未依沙視点)
夏の暑さが落ち着き、
風の中に涼しさを感じられる季節になった。
教室に差し込む日差しも、
少しずつ弱くなっていく。
ーなのに、わたしの心の奥だけは、
まだ少し熱いままだ。
夏休みが明けて、ようやく学校生活に慣れてきたけど、
授業中はやっぱり暑くて集中力が続かない…
少しボーっと先生の話を聞いていた。
板書を写している時、肘に当たって
消しゴムが落ちてしまった。
少しかげちゃんの近くだけど、
わたしの席からでも手を伸ばせば届くはず。
考えるより先に、わたしは手を伸ばしていた。
ゴツッ
一瞬、時間が止まった。
かげちゃん?!
わたしの消しゴムを拾おうとしてくれたみたい。
それにしても、こんなドラマみたいなことって
本当に起こるんだ。
「いったー」
ぶつかったところをさすりながら、
わたしは笑いを堪えることができなかった。
「ふふふっ」
声を抑えようとするほど、
笑いが溢れてしまう。
チラッとかげちゃんを見ると、
かげちゃんも肘で口を押えて笑っていた。
笑いのツボが同じことが、
それだけで少し特別に思えてしまう。
笑うとキュッと細くなる目に心が揺れる。
「ドラマかよ!って感じだよな」
授業中だから、口パクで伝えてくる彼。
くくくっと笑うかげちゃんも
わたしと同じことを思ってたんだ。
それがわかるだけで、
胸の奥がくすぐったくなる。
この出来事を作ったわたし、天才じゃん!
と、心の中で自分を褒め称えた。




