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一番近くて、一番遠いーネット越しの恋を、君とー  作者: りなる あい
第三章: 「幼馴染」の境界線

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3-11. 花火大会

(*未依沙視点)


じりじりと夏の日差しが廊下に照りつける休み時間、


「ねぇ!花火大会行こうよ!」


隣のクラスのさっきーと廊下ですれ違ったとき、

ワクワクする言葉が耳に響いた。


「行きたい!」


わたしはとっさに返事をしていた。

考える余地がないくらい、胸が高鳴っていた。


「そっちゃんにも声かけておくわ」


さっきーは移動教室だからと、

そのあとすぐに行ってしまった。


2年生になってクラスが離れてしまっても、

私たちの仲が続いていることがとても嬉しかった。


3人とも彼氏がいないから、

花火大会ではいっぱい女子トークするぞ!と、

わたしは1人気合を入れた。



✳︎



花火大会当日、午前中に部活があり、

帰宅してすぐにさっとシャワーを浴びた。


午後はそわそわしながら時間が過ぎるのを待った。


お母さんが浴衣を用意してくれていた。

着付けをしてもらって、自然と心が踊る。


いつもは動きやすいように後ろに

さっと束ねる髪型ばかりだけれど、

今日は浴衣に合うように

ヘアアレンジをしてもらった。


待ちきれなくて、少し足早に

わたしは集合場所へ急いだ。



✳︎



そっちゃんとさっきーはもう着いていた。


「待っててくれてありがとう〜」


「私たちも今来たところだよ。ちょうど良かったね。」


「浴衣、かわいいね〜!」


「今日、部活あったの?着付け、間に合って良かったね」


たわいもない話をしながら、

屋台の中を3人で進んでいく。


「わたし、たこ焼き食べたい。」


たこ焼き屋さんの前に見慣れた後ろ姿があった。

部活の練習着、ぴょんと頭ひとつ分飛び出した

色素の薄い髪。


「おぉ!未依沙じゃん」


バレー部のメンバー数名と一緒に、

瑠飛がいた。


「ああ、瑠飛。バレー部で花火大会に来てるの?」


「おう、部活帰りにみんなで行こうぜって話になって。」


そっちゃんはわたしの腕をガシっと掴み、

なにか言いたげな目でわたしに視線を送ってくる。

瑠飛に会えて興奮してるみたいだ。


「わたしは1年の仲良しメンバーで来たんだ。いいでしょ」


「未依沙の浴衣、えんじ色でめっちゃ似合うな。可愛い。そっちゃんもさっきーも似合ってるね」


ベルギーの血が入っている瑠飛は、

サラッと浴衣の私たちを褒めてくれた。


「ありがとう。嬉しい」


ニコッとお礼を言ったら、

そっちゃんもさっきーもありがとうと伝えていた。

もちろん、そっちゃんの頬は少し高揚している。


「なぁ、せっかくなら一緒に花火見ない?」


瑠飛からの提案は予想外だった。

わたしたちはビックリして互いに

顔を見合わせたけれど、


「それいいね、一緒に見よう」


私たちは了承して場所探しのために、

男子3人の後に着いていった。


瑠飛の両脇にいる男子たちの会話が聞こえてくる。


「瑠飛、ナイスだ!」


「女子と一緒に花火が見られるなんて…サイコーすぎるだろ」


丸聞こえだよ…とさっきーが

小声でわたしにつぶやく。


「ほんとだね。」


わたしたち女子は後ろで静かにくすくす笑った。


焼きそばを買いに行っていた

他の男子バレー部メンバーにも合流した。


あ、かげちゃんだ。


部活の格好でカバンを肩にかけている。

ちょっと無造作な髪を見て、

部活を頑張っていたんだなと思った。


ふと、浴衣を着ている自分が心配になって来た。

浴衣、乱れてないかな?

髪型も大丈夫かな…?


かげちゃんと目があって、

わたしに気づいた。

その後すぐに目を逸らし、

うつむき加減で言った。


「未依沙も来てたんだ」


「うん、そうなの」


たまたま会って、せっかくだし花火を一緒に

見ることになったよと男子が説明してくれる。


「いいね!一緒に見よう!」


屋台を通り過ぎて、場所探しを続ける。

浴衣のこと、何も言わなかったな…


かげちゃんから『可愛い』と言われることは

期待してなかったけれど、せめて『浴衣だね』

とか何か言われたかったな…


今日、めいいっぱいオシャレして来たから、

かげちゃんに会えたらいいかもって思っていたのに…


ちょっと期待していた展開とは違って、

後ろからとぼとぼ歩いていく。


やっといい場所取りができて、

今から食べるか!となった時、


「俺、花火が始まる前にお手洗いに行ってくるわ」


と立ち上がったかげちゃん。


「わたしもいく」


わたしも立ち上がって後に続く。

慣れない下駄で、少しだけ歩きにくい。


前を行くかげちゃんが、わたしの方をチラッと見て、

さりげなく歩幅を緩めてくれた。

それだけで胸がキュンとなる。


2人で元来た道を戻っていると、

かげちゃんがポツリと呟いた。


「浴衣、似…」


ぷいっと向こうを向きながら言うから、

聞き取れなかった。


「なに?かげちゃん。」


「いや…」


何だか歯切れが悪い様子。

どうしたのかな…?


「浴衣、似合ってる」


え…

かげちゃん、照れながらも言ってくれた。

わたしの目を見て言った後、

すぐに顔を背けられた。


まさか、かげちゃんから

似合ってるって言われるなんて…


顔が急に熱くなるのを感じる。


「ありがとう。」


オシャレしてきてよかった、とか、

気合入れてきたんだとか、

本当は言いたかったけど、

ありがとうと返すのが精一杯だった。


ふと横を見ると、かげちゃんがいる。

わたしたち、はたから見ると

付き合ってるみたいに見えるのかな。


このドキドキがかげちゃんまで

聞こえてしまわないか、わたしの胸の鼓動、沈まれ…


ドン

ドン


後ろから花火が上がった。

ドーン、と大きな音が響くたびに、

かげちゃんの横顔が赤や青に照らされる。


花火よりも、その光に透ける彼の髪や、

真剣に空を見上げる瞳から目が離せなかった。


消えてしまう花火がもったいなくて…


でも、この暗闇と爆音の中なら、

私の顔が真っ赤なことも、

心臓の音がうるさいことも、彼にはバレないはず。


そう思って、私は少しだけ彼の方へ肩を寄せた。


ずっとこの瞬間が続きますようにと、

はかなく消える花火に願ったのだった。



✳︎



(✳︎景虎視点)


お手洗いからの帰り道、

未依沙がふと肩を寄せてきた。


俺の心臓が「ドーン!」と

花火並みに跳ね上がっていた。


人が多いから、だよな?

わざとじゃないよな?

これが浴衣マジックか…?


「浴衣が似合ってる」と伝えたとき、

緊張しまくっていた。

瑠飛は、なんであんなに自然と

恥ずかしい言葉が言えるんだろう…


下駄の音がパタパタと忙しなく響くたび、

転ばないか気が気じゃない。

早く歩きすぎてないか?と

自然と歩幅が狭くなる。


はぁ、俺の心臓、静まってくれ…。


顔が赤いのも、心臓の音も、

花火の音と光でわからなくなってるよな?


そう自分に言い聞かせて、

下駄の未依沙に歩調を合わせながら、

今この瞬間を噛み締めていた。


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