3-9. 休み時間のトキメキ
(*未依沙視点)
いつも部活に一生懸命だもんね…。
そりゃ、眠くなっちゃうよ。
そう思うのは、隣で
かげちゃんがすやすや寝ているから。
ゆっくりと大きく、一定の早さで動く肩。
わたしは今にも寝息が聞こえてきそうな
距離にいるんだなぁと自覚してしまう。
両腕をついて突っ伏して寝てるんだけど、
髪の毛の間から少しだけ目元が見えちゃってる。
このサラサラの髪の毛をかき分けたら、
もっと寝顔が見えるのかな?
ちょっとだけ、かげちゃんの髪の毛を整えてあげたい。
そんな衝動に自分自身でも驚いてしまう。
手を膝の上に置いて、
すっと自分の右手が自然に動くのを防いだ。
わたしの方を向いて寝てるから、
まるでわたしだけが寝顔を独り占めしてるみたいに感じる。
瑠飛が近くにやってきた。
「未依沙、数学の宿題した〜?」
あ、いけない。
わたしはかげちゃんに向けていた目線を、
すぐに前に戻した。
「瑠飛、もう少し小さい声で喋って?かげちゃんが寝てるから。」
「あ、ほんとだ。エネルギーチャージしてる!ズルい!俺も寝たい!はぁー、家で宿題やってくればよかった」
小声で話しながら、
わたしの机で宿題をやり始める瑠飛。
「未依沙、ここ、どうやるの?」
と瑠飛が顔を上げた瞬間、
私は慌てて視線をノートに戻した。
心臓がうるさい。
わたしの視線の先が誰か、バレてないよね?
瑠飛の宿題を眺めるフリをしながら、
眠り王子の肩の動きを見て可愛いなと感じてみたり…
わたしの『忙しさ』の正体、瑠飛には絶対秘密なんだから。
「ん……」
少しだけ動いたかげちゃんをチラッと見ると、
寝顔が露わになっていた。
ど、ど、どうしよう…
寝顔が可愛い…
わたしは両肘を机について、顔を伏せた。
そして、必死に目線をかげちゃんに向ける。
ちょっと、かげちゃん、それは反則だよ。
可愛すぎる…
「未依沙、ここも教えてくんね?」
「ここはね…えっと…」
ドキドキしてて、頭がちゃんと動いてくれない。
「あっ、ここはね、この公式を使って…」
よかった、頭がやっと動いてくれた。
わたし、「普通」にできてるよね?
キーンコーン
「あ、チャイムだ。はい、瑠飛、席に戻って」
瑠飛を追い返しながらかげちゃんに視線を送ると、
首を上に伸ばして伸びをしていた。
なんだか、猫ちゃんみたい…
頭を少しポリポリして、
すぐに勉強モードに入るかげちゃん。
かげちゃんって、寝起きいいんだな。
なんだか、感心してしまう。
隣の席で、観察しすぎて
変に思われないようにしないと…!
授業が始まってノートを開くけれど、
わたしの頭の中では無防備な寝顔が邪魔をする。
集中、集中…!
授業をしっかり聞けば、復習が少なくなるから。
そう自分に言い聞かせて、意識を必死に授業へ向ける。
……。チラッと隣を見ると、
かげちゃんはもう迷いなくシャーペンを走らせている。
私だけがこんなに必死だなんて、なんだか悔しい。
私も負けてられない。
ぎゅっとペンを握り直し、私もとにかく手を動かした。




