3-6. 休み時間の緊急招集
(✳︎未依沙視点)
お昼の給食を少し急いで食べ、
余裕を持ってチャイムと同時に教室を出た。
焦る気持ちからか、自分が
うっすらと汗をかいているのを感じる。
首筋をすっと触りながら、わたしは廊下を急いだ。
教室からいなくなる前に、2人を捕獲しなくちゃ。
まずは隣のクラスのさっきーから。
さっきーは食べ終わったばかりみたいで、
ちょうどよかったから、
わたしは自然と顔がほころんだ。
「さっきー!緊急招集!ちょっと来て!」
「なになに?おもしろいこと?」
振り向く顔には好奇心の光が輝いていた。
こういう時、さっきーってわかりやすいんだよね。
さっきーはわたしの腕を組むと、
すぐに状況を理解して1紙組へ向かう。
一年間一緒にいただけあって、
素晴らしい読みをしてくれる姿に
惚れ惚れしてしまった。
うん、やっぱりさっきーは最高の友だ。
2人で足を早めて1組に向かうと、
ちょうどそっちゃんが友達と出てきたところだった。
「あ!そっちゃんがいた!ちょうどよかった。」
「女子の緊急招集なので、そっちゃんお借りしてもいいですか?」
「え!それ絶対楽しいやつじゃん!」
私たちはニヤっと互いに視線を合わせ、
うん、とうなずいて、1組の友達と別れて
人の少ないところへ歩いていく。
私たちの足音がパタパタと廊下に響き、
静かなところへ来たことがわかる。
「実は、さっきの休み時間のことなんだけど…」
と、かげちゃんに抱き止められたことを話した。
「キャー!聴いてるこっちがドキドキしちゃうよ!」
そっちゃんは1人興奮している。
「上野っちは、その時どう思ったの?私たちを呼んだってことは、他に話したいことがあったってことだよね?」
さっきーは相変わらず鋭い。
わたしは1人感心しながら、話を続けた。
「ドキッとしたのはもちろんなんだけど…わたし、茶化されたの、満更でもないってゆうか…そんなに嫌じゃなかったんだよね。」
「へぇ、それってつまり…?」
「むしろ、『そんなんじゃないって』って困った顔をしながら、かげちゃんがパッとすぐに離れたことが、嫌だったの…なんか、そうされて悲しかった」
「でもさ、上野っちは誤解されないように、後田から離れなきゃって思ったんでしょ?自分から離れる前に、そうなってよかったんじゃないの?」
「それはそうなんだけど…されると寂しいというか…」
「なるほどね…」
彼に迷惑をかけたくないって
思っていたはずなのに。
体温が消えた瞬間の寂しさに、
胸の奥が落ち着かない気持ちになった。
この気持ちに、名前があるのかどうかもわからない…。
……
「上野っち、それは恋煩いなのでは?」
そっちゃんはニヤっと
確信のある笑みを浮かべて言った。
「…恋煩い?」
「そう!上野っちは、後田のことが気になってるんじゃないの?」
「え…?わたしがかげちゃんを?」
恋煩い。
そんなドラマみたいな言葉、
私にはわからないと思っていたのに。
そっか、これが恋煩いってことなんだ…
わかるような、わからないような不思議な感覚。
「え?むしろ、それ前からじゃない?」
さっきーが追い打ちをかける一言を放った。
ん?!
前から……?
さっきーの言葉が、
私の頭の中で何度も再生される。
自分でも気づかないうちに、ずっと前から
私はかげちゃんのことが気になってたってこと…
だよね…?
その言葉を聞いた時、わたしの中にあった
不思議が感覚が溶けていく感じがした。
多分、そう。
自覚していなかっただけで、
前からそうだったと思う。
わかりそうでわからない、
その想いに名前がついたことで生まれる安心感。
嬉しくて、恥ずかしくて、
なんとも言えない気持ちと同時に生まれる、
もう認めるしかないんだ。
そっか、わたし、恋してるんだ…
すごく愛しくて尊いこの気持ちを、大切にしたい。
まるで胸の中にポッと温かい光が
差し込んだかのようだった。




