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一番近くて、一番遠いーネット越しの恋を、君とー  作者: りなる あい
最終章:繋ぐ

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11-14.  おかえり、わたしのかげちゃん

(*未依沙視点)


今日はかげちゃんが帰国する日。

瑠飛と一緒に空港で

お出迎えすることにした。


「そういえばさ、未依沙が送った誕生日のLINE、かげが何回も見返してるらしいぞ。」


「……そうなんだ。」


ふふっと小さく声を立てて笑った。


「だったら、もう一回走らなきゃね。」


「未依沙って、ほんとド直球だよな。かげに対しては」


「そうだよね、ずっと追いかけてるよね。多分、かげちゃんが受け止めてくれるって信じてるからだと思う」


「未依沙って、ぜんぜん他の男子になびかないよな。そして、かなり重いよな(笑)」


「うん。自覚あり。すっごく重いと思う(笑)」


「でも、かげはそれを受け止める器があるんだろうな〜というか、未依沙がその器に成長させたんだろうな」


そろそろかげちゃんが

出てくるタイミングにもかかわらず、

瑠飛はトイレに行っちゃった。

先に行っておけばいいのに、

なぜこのタイミング?

瑠飛と一緒にお出迎えしたかったのに。


あ…かげちゃん!


ゲートが開いた瞬間、

海外の香りを纏った人の波の中で、

ただ一人、私の目は止まった。


スーツケースを引く姿、

背筋の伸びた立ち姿、そして——

私の方を見つけて、

少し驚いたように目を見開く。


——あぁ、本物のかげちゃんだ。

その瞬間、視界が涙で一気に滲んだ。



「ただいま」


優しく微笑むかげちゃん。

あんな別れ方をしたけど、

今はわたしに微笑んでくれる。

また会えた喜びもあって、もうわたしは

涙を止めることができなかった。


「おかえり」


涙が頬を伝うのを感じながら伝えた。


「抱きしめていい…?」


ぎこちなく、そんなことを

聞いてくるもんだから、

わたしはビックリしちゃった。

かげちゃんから聞いてくるなんて…


「いいよ」


するとかげちゃんは笑顔で腕を広げた。

その広くて大きな胸に、わたしは飛び込んだ。

かげちゃんの腕が、ためらうように、

でも確かに、私を包み込んだ。


前とは違う、でもかげちゃんだってわかる匂いを

思いっきり胸に吸い込む。

あぁ、このぬくもり、ずっと恋しかった——。


なんて幸せなんだろう…

これ、夢じゃないよね…


「未依沙…」


かげちゃんが小さい声でつぶやく。


「誕生日のメッセージ、ありがとう」


わたしは胸がいっぱいで涙が止まらなくて、

うなずくので精一杯。

涙を流しながらかげちゃんの方を向いて、

うんうんとうなづいて、なんとか応えた。


「未依沙がずっと俺に思いを伝え続けてくれてたのに、これまで受け止めることができなくてごめん」


ああ…かげちゃんは気づいてくれたんだ。

わたしの想いがやっと

かげちゃんに届いた気がした。


「いいよ…それも全…部、かげちゃん…だ、から…」


しゃっくりあげなから、

なんとか声に出した。


「うん。どんな俺も全部受け入れてくれてありがとう。」


腕により一層力が入って、

強く抱きしめられた。


「次は、絶対に離さないので、もう一度俺と付き合ってくれませんか?」


「うん…嬉しいよ…」


こんなに幸せなことってあるのかな…?

涙が滝のように流れ出るのを

止められなかった。

今日、「おかえり」って

言うだけのつもりだったから…


かげちゃんともう一度、

彼氏と彼女の関係になれるのが

幸せで仕方なかった。

諦めなくて良かった。

信じて、恋し続けてよかった。

かげちゃんがわたしを

受け止めてくれるって信じて良かった。


二人で抱きしめあっていると、

横から声がした。


「かげ、おかえり!いや〜、あまりにも激アツな展開で声かけづらかったんだけど…二人とも若干注目されてるから、そろそろ行かない?」


え?

わたしたちはとっさに離れると、

確かに周りの人たちが取り囲み、

視線がこちらに集まっていた。


瑠飛はさっとかげちゃんのスーツケースを

右手で引っ張り、かげちゃんの肩に

左手を回した。


「あれ?かげ、ガタイ良くなった?ん?身長が伸びたのか?」


「身長はわかんないけど、かなり筋トレした。」


「やっぱりな!ひょろい方だったのに、いい感じに筋肉ついたじゃん」


二人のやりとりを見ながら

わたしの心はホクホクだった。


「やっぱりなぁ、俺の予想通りだわ」


「何が?」


「未依沙は走る。どこまでも真っ直ぐ、かげに向かってな」


瑠飛の笑い声が響く。

空港のざわめきの中で、

私はもう一度、かげちゃんの手を握った。



瑠飛、見守ってくれてありがとう。

わたしたち、がんばるね。



……



「かげちゃん、今日、一緒にいたいから、うちに泊まって行かない?」


「え…いいの…大荷物だけど。」


「うん。全然平気。それより、ずっと寂しかった分、そばにいたいの」


「わかった。じゃあ、その言葉に甘えて、泊めさせてもらうね」


わたしたちが電車の中話し合っていると



「おっけー、じゃあ、俺はここで降りるわ!またなっ」


瑠飛は特に何も言わず、

そのまま家に帰って行った。

ぷつりとドアが閉まり、

ガタン、と電車が動き出す。


瑠飛がいなくなったシートの空間は

急に広く感じられて、そのぶん、

隣に座るかげちゃんの肩が

さっきよりもずっと近くに感じられた。

電車の揺れに合わせて、

お互いの腕が何度もかすれ合う。

そのたびに、私の心臓がうるさく跳ね上がった。


…… いっぱい抱きしめたいし、

たくさんキスしたい。

そんな思いがわたしの心の中で

膨らみ続けていた。

二人っきりになったら、

わたし、大丈夫かな…



……



家に帰ってきたのは夜遅くだった。

お風呂に入り、寝る時間になったけど、

わたしの胸の高鳴りは

一向に収まる気配がなかった。


「かげちゃん…帰国したばっかりですっごく疲れてるのは100も承知なんだけど、一つだけお願い言ってもいい…?」


正座をして正面に座り、わたしは言った。


「どうしたの、そんなに改まって?」


不思議そうに、でも優しい笑顔が

目の前にあった。


「……あのね、かげちゃん。わたしたち、前に付き合ってたとき……一度も、その……最後まで、しなかったでしょ? 」


わたしがそう言った瞬間、

かげちゃんは急に真剣な顔になって、

ごくんと喉を鳴らした。

きっと、これからわたしがお願いしたいことが

わかったんだと直感した。


「元に戻れてすぐに、欲張りなのはわかってるんだけど…つながりがほしいの…」


勇気を出して言った言葉は、

部屋の中へと消えていった。

正直、怖かった。

これで嫌われたらって…


「未依沙、伝えてくれてありがとう」


優しい声が耳に届くと同時に、

わたしはかげちゃんの腕の中で

抱きしめられていた。


「ほんと、未依沙は俺のことわかってないな…」


どういうこと?

わたしは顔を話し、

かげちゃんの表情を見ようとした。

あれ…赤くなってる!

はにかむように耳にまで熱を持っていた。


「戻ったばっかりだから、今日はダメだって自分に言い聞かせてたのに…なんで、そんなこと言うかな」


困ったような、でも

嬉しそうな瞳がキラキラしていた。

すっごく綺麗だと感じた。


「でも…ほんとにいいの?」


「うん…」


するとゆっくりとまた

ぎゅっと抱きしめてくれた。


「今まで、俺にたくさん想いを伝えてくれてありがとう。……本当はね、イタリアにいる間も、ずっと未依沙に触れたくて堪らなかったんだ。 」


「嬉しい……。わたし、これからもずっと、かげちゃんに大好きって言い続ける存在になりたいの。かげちゃんに『もう分かったよ』って呆れられても、一生言い続けるからね? 」


「そうだね。いっぱい言って。あと、俺もこれからは遠慮なくいくからね?」


「え?それって…?」


姿勢を正して向き直り、

照れながらもわたしを見つめる。

その瞳の熱に当てられて、

こっちまで緊張してくる。


「俺のことを好きでいてくれてありがとう、未依沙。こんな俺だけど、これからは全力で大切にするし…あ、愛するから…」


あ、愛する?!

かげちゃんからこんな言葉を

伝えてもらえる日が来るなんて……。


「ありがとう。わたしもかげちゃんが大好きだよ」


優しく唇が触れる。

何度も重ねられる優しさで、

甘い痺れが身体に広がっていく。

心臓がドキドキして緊張も最大になっていく。

だんだん深く長くなるキスに

耐えられなくなったころ、

かげちゃんの手がわたしに触れる。

その指先の動きに意識が集中しそうになった時、

首元にもあたたかなキスが落とされる。

あぁ、もうダメだ。

何も考えられなくなっていく。

ただ、感じることに全てを委ねる。


好きな人に愛されるって奇跡なんだ。

初めて結ばれた夜、

幸福感に包まれて2人で眠った。



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