11-10. まさかの展開
(✳︎未依沙視点)
「ヤバい、吐きそう…」
「俺の水飲むか?」
瑠飛に支えられながら駅に向かうけど、
これは帰れる気がしない。
一歩足を踏み出すたびに、
胃の底から熱いものがせり上がってくる。
いつ胃の中のものが
限界を迎えてもおかしくない……
瑠飛も同じことを思ったらしかった。
「未依沙、この調子じゃ、家に帰るのは無理だと思うぞ。」
「だよね、とてもまともに動けそうにないし…… 」
「俺、何もしないから、一旦ここに入ろうぜ。」
そう言って瑠飛が立ち止まったのは、
ラブホの前だった。
「嘘でしょ?本気で言ってる?」
「本気。だって、こんなんじゃ電車もタクシーも乗れないし、歩いて帰るのも無理だぞ」
「そうだよね…」
幼馴染とはいえ、いいのか…?
何もしないって言ってるし、
その言葉を信じてはいるけど…
頭では分かっているのに、
足が動かない。
でも、ここで無理して歩いて吐いたら、
もっと迷惑をかける。
そう思った瞬間、
瑠飛の手に引かれていた。
「決まりな」
と言って、わたしの手を優しく包む。
わたしが決めきれることができないのを
わかっているみたいに。
そのまま引きずられるようにして、
きらびやかな自動ドアをくぐる。
薄暗いロビーに光る大きなパネルの前で、
迷いのない手つきで部屋のボタンを
選択していく瑠飛。
その慣れたような手際の良さを、
ぼんやりと見つめているうちに、
最悪な体調のはずなのに
頭の片隅で余計な疑問がよぎってしまった。
……え、瑠飛、
まさかこういう場所に慣れてるの……?
部屋に入ると、さっそくわたしは
トイレで盛大に吐いた。
「未依沙、とにかく水を飲め。体内のアルコール濃度を薄めるんだ。」
瑠飛に言われるがまま必死に水を流し込み、
何度も何度もトイレを往復した。
胃がからっぽになり、
激しい目眩がようやく引いた頃には、
壁の時計はすでに午前3時を回っていた。
瑠飛はベットの端であっちを向いて、
寝落ちしていた。
トイレから出てきて
落ち着いて部屋の中を見渡すと、
本当にラブホに来てしまったのだと実感した。
少し落とされた怪しげな照明の中に、
ガラス張りのお風呂場や、
大きなジャグジーが浮かび上がっている。
部屋の中央に鎮座するキングサイズのベットは、
いやでも存在感を放っていた。
ソファがないから、瑠飛とわたしは
仕方なく、瑠飛と距離を保ちながら
横になることにした。
本当なら、体調が落ち着いた今のうちに、
タクシーを拾ってでも
一人で家に帰るべきなんだろう。
幼馴染の男の子と二人きりで、
こんな場所に残るなんて、
絶対に間違っている。
……だけど、わたしの体は鉛のように重くて、
ベットに沈む体に抗えなかった。




