10-13. 大切にする、ということ
(*未依沙視点)
かげちゃんとのキス。
幸せな時間。
やっと会えた嬉しさで、
胸が爆発しそう。
たった一週間離れていた
(遠征に行っていた)だけなのに、
あんなに寂しいなんて思わなかった。
わたし、いつの間に
こんなに欲しがりになってしまったんだろう……
かげちゃんとソファに腰掛けて見つめあい、
自然とどちらからともなく始まるキス。
「んっ、かげちゃん」
かげちゃんのキスが強いよ、どうしよう、
だんだん体が後ろに傾いていく。
今日のかげちゃん、いつもと違う。
あ、もうダメ。
かげちゃんの腕にしがみついた。
「きゃっ」
かげちゃんがわたしを押し倒してる?!?!
トンとソファに二人で倒れこむ。
かげちゃんの想いが伝わって胸がキュッとなる。
「ご、ごめん」
でも、この言葉と同時に
わたしにかかっていた重みがさっと消えた。
あれ?何で?
わたしも体を起こす。
肌に残った熱と、
急にできた二人の間の距離が、
なんだか酷く気まずい。
……普通なら、もっと甘い雰囲気が
続いていく場面、だよね……?
かげちゃんがわたしを
【人一倍、特別に想ってくれている】
のはわかるんだけど
いつも手を出してこないかげちゃん…
なんでだろう…
何を考えているかわからなくて、
時々不安になる。
わたしのこと、大切にしてるからだよね…?
そう思いたいわたしがいる。
かげちゃんは、少し苦しそうな顔で
息を整えていた。
乱れた前髪の隙間から見える瞳が、
わたしを見つめているはずなのに、
どこか遠い未来の場所を見ているみたいで。
「ごめん、未依沙。…俺、ちょっと抑えられなくなりそうだった」
そう言って、ぎこちなく笑う。
その笑顔があまりにも優しくて、
だからこそ、少しだけ遠く感じた。
「抑えなくても、いいのに」
小さくつぶやいた声は、
思ったよりも震えていた。
かげちゃんは一瞬、驚いたように
わたしを見つめた。
でも、すぐに優しく微笑む。
「未依沙のこと、大切にしたいから」
その言葉が、嬉しいのに、
どうしてか涙が出そうになった。
“わたしを大切にする”って、
どういうこと?
“触れないこと”が、
大切にすることなの?
わたしの中で、
答えのない疑問が渦を巻く。
かげちゃんの優しさが、
時々、わたしとの距離を保つための
壁に感じてしまう。
わたしの中で見つけた小さな不安の種が、
どうか成長しませんようにと
祈ってしまうのだった。
明日から第11章です!




