10-9. 初めての…(景虎)
(*景虎視点)
未依沙と付き合ってから、何度か2人で会い、
時間を過ごしていく中で気づいたのは
未依沙はぐいぐい来るわりに、
意外と恥ずかしがり屋だということだった。
未依沙の方からキスをしてくることは
想像できなかった。
あと、やっぱり男の俺から行かないとだな
とも思っていた。
今日、俺の家に未依沙が来る…
初キスできたらいいな…
✳︎
緊張している未依沙はとてもとても可愛かった。
この愛しい存在に思う存分触れたいという衝動が
俺を襲った。
自分の中に、これほどまでに強欲な感情が
眠っていたなんて、知らなかった。
ドクドクと高鳴る心臓は放っておいて、
自分の強い願望を抑えることに俺は全集中していた。
この大切な存在を傷つけたくない。
俺を制御するのは、ただそれだけだった。
「未依沙…」
どんどん赤くなっていく未依沙の顔に近づく。
「ちょっと待って…緊張しすぎて…死にそうなの…」
恥ずかしさに耐えられなくなった未依沙は
繋いでいた片手を解き、顔を覆ってしまった。
「かげちゃんは緊張しないの?」
手の隙間から俺の様子をうかがうように
見つめる姿が可愛すぎて、
思わず抱きしめたくなった。
「俺も緊張してる…」
嘘じゃない。
俺の胸の奥だって、
うるさいくらいに脈打っているんだ。
でも、それよりも…
俺は優しく未依沙の手をもう一度取った。
「緊張してるけど、未依沙とキスしたい気持ちの方が強い」
これは、俺の本音だった。
「ちょっと待って…そんなこと言われたら、もっとドキドキしちゃうじゃん」
ここで引いたら、次はいつになるかわからない。
――放したくない、という本能のまま、
俺は握る手にグッと力を込めた。
少し未依沙に近づくと、
ソファがぎちっと音を立てた。
俺の影が未依沙の視界を塞ぐくらい、
二人の距離がゼロになる。
静まり返った部屋には、
俺たちの浅い息遣いだけが響いていた。
未依沙、顔を上げてくれ…
意を決して目を瞑ったまま顔を上げた瞬間を、
俺は逃さなかった。
未依沙の唇に触れると、
ぐわっと温かいエネルギーが全身を駆け巡った。
「もう一回」
何も考えずに、俺は口に出していた。
もう一度触れる唇。
未依沙は勢いよく俺の胸に飛び込む。
恥ずかしさが限界を超えてしまったみたいだ。
俺は反射的に腕を回した。
頭をなでると、未依沙の体が
少しだけ落ち着いていくのがわかった。
後から一気に緊張の波が押し寄せてきて、
頭が真っ白になった。
腕の中にある未依沙の体温が愛おしすぎて、
もうこれ以上、指一本動かせる気がしない。
キス…してしまった。
後からくる実感で、俺の幸福感が
空気に漂っていくようだった。




