10-7. あなたのもの
(*未依沙視点)
今日はわたしの誕生日。
かげちゃんの試合に出かける。
今は彼女としてかげちゃんのバレーを応援できる。
そのことがすでに奇跡のようなもので…
もう十分、最高の誕生日プレゼントだと思った。
「あと30分くらいで出られそう」
もうすぐ解散になると連絡があった。
一日一緒にいられるわけではないけれど
わたしの誕生日にお祝いしてくれる
特別感に胸が高鳴った。
「お待たせ」
バレーの試合で活躍していたかげちゃんが
よりまぶしく見える。
「試合、お楽しみ様」
「今日は、応援ありがとう。さ、いこっか。」
「うんっ」
そう言って自然に差し出される
大きな掌に、ついニヤけそうになる。
かげちゃんとこうして繋がっている時間が、
本当に好き。
少し角ばった無骨な指先が、
秋の風に冷えたわたしの手を包み込んでくれる。
はぁ、幸せだ…
二人で向かった先は、可愛いカフェだった。
「ここでケーキ食べよ。誕生日ケーキは準備できなかったけど…」
「わあ、どれもおいしそう。素敵なお店に連れてきてくれてありがとう」
ショーケースに飾られたケーキから
好きなものを選ぶと、わたしたちは席に着いた。
げちゃんはテーブルの上にぽんと両手を出すと、
『はい』と短く言って、優しく微笑んだ。
――え、これって、
ここで手を繋ぎたいってこと……?だよね?
なんでだろう、今日のかげちゃんは、
なんだかいつもより積極的?な感じがする。
わたしの笑みがほころぶ。
わたしが両手を重ね合わせると
「未依沙、改めて…誕生日おめでとう。…あと…俺にお祝いさせてくれてありがとう。」
その言葉がわたしの涙腺を刺激した。
鼻の奥がツーンとして、あ…ヤバいかもって思った。
「こちらこそ、お祝いしてくれてありがとう」
わたしは大きな手をぎゅっと
より強く握り返した。
「未依沙にプレゼント用意してて…ちょっとだけ目をつむってくれる?」
「うん…わかった。」
かげちゃんがそっと手を離したから、
わたしは両手で自分の目を隠した。
なんだろう…気になる…
「はい、目、開けてもいいよ」
え?ゆ、指輪…?
そこにはボルドーの小さな箱があった。
「なにこれ?開けてもいい?」
「うん…」
パカっとあけると、
そこには小さダイヤが2連繋がった
ピンクゴールドのネックレスが輝いていた。
「わぁ、かわいい…」
その華奢なネックレスを手のひらに乗せると、
上品な輝きの中に、かげちゃんが
一生懸命選んでくれた愛らしさが透けて見えて、
胸がいっぱいになった。
「ありがとう、かげちゃん。これ、すっごく可愛い…大切にするね。」
わたしが喜ぶ姿を見て、
ホッと力が抜けたかげちゃんは
「これ、すっごく悩んだんだ。指輪だとちょっと重いかな…とか。でも、身に着けられるものがいいかな~?って。」
「かげちゃんが選んでくれたものは、なんでも嬉しいよ」
「ネックレスもたくさん種類があって…未依沙は何もつけなくても十分きれいだから、あえて小ぶりで美しさを引き立てるものがいいかなって…」
え…
十分きれい。
美しさを引き立てる。
かげちゃんから送られる言葉が
あたたかい風をわたしに送り込んでくれる。
「本当にありがとう。わたしのことを想って、こんなに素敵なネックレスを選んでくれて…とっても幸せ。今までもらったプレゼントの中で一番嬉しい」
「よかった。」
「ねえ、さっそくつけてみていい?」
「うん、もちろん。俺も付けたところ見たい。」
両手を後ろに回して、ちぎれないように
慎重に小さな金具を留める。
カチッと音がして首元に
ひやりとしたチェーンが触れた時、
まるで『かげちゃんのもの』という
証明書をもらったような気がして心が弾んだ。
「どうかな?かわいい?」
「うん、似合ってる。」
言葉数は少ないけれど、
じっとわたしを見つめる彼の瞳が
何よりの答えだった。
照れ屋なかげちゃんが
一生懸命話してくれたことも、
誉めてくれたことも、すべてが
私の誕生日に彩を添えて特別なものにしてくれた。
二人で紡ぐ時間をこれからも
奏でていきたいと心の底から思った。




