10-2. キッチンに並ぶ特等席
(*未依沙視点)
「片付けちゃうから、ソファで休んでて」
お皿をキッチンへ運んでいると、
「いやいや、俺がするよ」
かげちゃんも一緒に立ち上がって
お皿を運んでくれた。
「かげちゃん部活で疲れてない?大丈夫?」
「未依沙が美味しいご飯を作ってくれたから回復した」
お茶目に言う姿にキュンとした。
そんな風に、さりげなく自分のことを
労ってくれる優しさが、
たまらなく嬉しかった。
わたしが洗剤で洗ったお皿を、
かげちゃんが水で流してくれる。
次は一緒に布巾で拭いていく。
二人でキッチンに並んでいると、
自然と距離が近くなって
正直わたしは手元に集中できない。
わたしの彼氏、完璧すぎませんか?
「ご馳走になったときは、いつもお片付けを手伝ってるの?」
ふと疑問に思って聞いてみた。
「うん、そう。子どもの頃から。気の利く男になりなさいって母さんうるさくてさ。ご馳走になったら片付けしなさいよっていつも言われてた。」
はははと笑いながらかげちゃんは答えた。
かげちゃんのお母さんって
優しそうなイメージがあったから、
そんなことを言うのが意外だった。
「子どもの頃、瑠飛の家でご馳走になることも多かったけど、いつも手伝ってたよ」
こんな出来る男を育て上げた、
かげちゃんのお母さんに、
久しぶりにお会いしたいと思った。
「当たり前にできるかげちゃんはすごいね。」
横に立っているかげちゃんを見上げると、
かげちゃんの瞳が何かを訴えていた。
「かげちゃん、どうした?」
「いや、未依沙は本当によく、俺のことを褒めてくれるなと思って。」
「かげちゃんはいいところがたくさんあるからね。」
ニコッと笑いかけるけど、
かげちゃんはまだ何か考えてるみたいだった。
「いや、俺、本当に不思議なんだよね…」
かげちゃんが言葉にしてくれるのを、
手を動かしながらゆっくり待った。
「未依沙って、俺にとっては高嶺の花だったんだよ。可愛いし、優しいし、勉強も料理もできて、一途でさ…だから、なんで俺なんだろ?って今でもちょっと不思議に思う時があるんだ。」
照れて笑いながら言う彼の瞳が、
一瞬だけ、迷子の子どものように
揺れた気がした。
――あ、これはかげちゃんの本音だ。
理由はわからないけれど、
わたしの胸が不意にざわついた。
「わたしから見たら、かげちゃんだってスーパースターだよ?バレーもできて、優しくて、かっこいいじゃん」
「カッコいい?俺が…?そういうのって瑠飛みたいな人を言うんじゃないの?」
「わたし、かげちゃんと出会った頃から、カッコいい人だなって思ってたよ?」
「うそだ…」
そう言いながらどんどん顔を
赤らめていくかげちゃん。
カッコよくて可愛いって最強すぎ。
しかも、本人自覚なし。
「わたしから見たら、かげちゃんはカッコいい人だよ。」
追い打ちをかけてみた。
「ありがとう。未依沙にそう思ってもらえるのは自信になる」
「そうだよ、彼女のわたしはかげちゃんしか見えてません。」
「ちょっと待って、追い打ちをかけるのやめて。」
照れてプイっと向こうを向いてしまった。
思った通りのリアクションが返ってきて、
心の中で小さくガッツポーズをした。
かげちゃん、バレーの時は
あんなに自信に満ち溢れてて格好いいのに、
自分自身の魅力に関しては、
びっくりするくらい無自覚で
自信がないんだよね。
いっぱい伝えたいな。
かげちゃんがカッコいいんだってこと。
本人に気づいてもらえるまで、
わたしが伝え続ける存在でありたいな。




