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一番近くて、一番遠いーネット越しの恋を、君とー  作者: りなる あい
第十章:近づくほどに、愛しくて

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10-1. 彼女の部屋、お邪魔します。

今日から第10章が始まりました!

2人の初々しいやりとりをお楽しみください!

(*未依沙視点)


「かげちゃん、今日、夜ご飯食べにこない?」


今日はバイトもないし、

かげちゃんにご飯作ってあげたいなと思った。

かげちゃんはちょっと戸惑っていた。

そうだよね、彼女の部屋に来るの初めてだもんね。

わたしももちろん緊張する。

でも、1番の目的は一緒にご飯を食べることであって…

決してそれ以上のことを期待してる、

わけじゃない、うん。


勝手に期待して裏切られるのは自分だから、

私たちの進展は成り行きに任せようと思う。

わたしは、かげちゃんが

彼氏になってくれたこと自体が奇跡だから。

一緒にいられる時間を大切にしたい。


「行く。ありがとう。部活終わったら連絡するよ」


「何時ごろ終わる予定?」


この会話ができることが嬉しくて、

わたしの心はルンルンだった。


一旦家に帰り、冷蔵庫の中の食材を見る。

残り物で出来なくもないけど…

せっかくなら美味しいものを作りたいな。


作るものを決めて買い物に出かけた。


秋の空って、何でこんなにキレイなんだろう。

遠くを眺めながらいつもの道を歩く。

かげちゃんとの予定が楽しみだからか、

見慣れた景色までが輝いて見えるみたい。


秋のそよ風を感じながら、ふと思い出す。

かげちゃんにお弁当を作って行った日。

一緒に食べようと言ってくれて、

非常階段で二人で肘の触れ合う距離に座って

緊張したな。

『美味しい!』って何度も

顔をほころばせてくれる姿を見て、

付き合うならこんな人がいいな、

って胸の奥がトクンと跳ねたんだよね。

……きっとあの非常階段の上で、

わたしの恋はもう始まっていたんだと思う。

かげちゃんとの思い出を回想していくと、

わたしの心がどんどんあたたかくなっていった。


美味しく食べてもらえたらいいな、

心も体も満たすように。

そして、楽しい時間を過ごせたらいいな。


ブーっとケータイが鳴った。


「部活終わったよ」


かげちゃんからの連絡だった。

ということは…

あと30分くらいでかげちゃんが来る。

なんだか、急に緊張してきた。


ピンポーン。


「はーい」


玄関のドアノブを掴んで扉を開くと、

笑顔でかげちゃんが立っていた。

かげちゃんがわたしの部屋に来るんだ。

わかっていたことだけど、

今更ながら強く実感した。


「どうぞ、入って。」


「お邪魔します。荷物、ここに置いていい?あと、ケーキ買ってきたよ。」


かげちゃんがすっと差し出した。


「ケーキ買ってきてくれたの?あ、ここ近所の美味しいケーキ屋さんだ」


まさかのサプライズに驚く。


「ご馳走になるから、俺も何か持って行きたいなって思って。花束も考えたんだけど…」


かげちゃんなりにわたしのことを

考えてくれていたことがとても嬉しい。

ニヤニヤが止まらない。


「かげちゃんがわたしのために買ってくれるものなら、何でも嬉しいよ。お心遣い、ありがとう。さあ、中に入って。ご飯食べよ?」


スリッパを差し出し、

わたしは先に中へ入った。


「いい匂いがする」


ドアの隙間から鼻をくんくんさせながら

入ってくるかげちゃん。

バレーの試合中もたまに思うけど、

かげちゃんって猫みたいなんだよね。

ずっとボールを追いかけてて、

床にダイブしてもさっと立ち上がる身のこなしとか。

こんな猫ちゃん、可愛すぎでしょ。


温めた料理をテーブルに並べていく。

大根おろしを添えた秋刀魚の塩焼き。

炊き込みご飯、豚汁、副菜。

かげちゃんは一人暮らしで部活もしてるから、

秋刀魚焼いたりしないんじゃないかな?と思って。


「うわー!美味しそう!すごいよ、未依沙!秋の味覚が詰まってる」


「うん、秋の献立にしてみたよ。」


「ねぇ、未依沙、写真撮っていい?」


「いいよ。」


かげちゃんはケータイを取り出すと、

真上から撮った後に

いろんな角度からも写真を撮っていた。


「いただきまーす。」

「いただきまーす。」


美味しいとたくさん食べてくれるかげちゃん。

かげちゃんってやっぱり男の子なんだな、

と改めて胸がときめく。


「俺、男の一人暮らしだから魚料理はまず作らない。いつも簡単なもんばっか作ってるよ。」


「部活してたらそうなるよ。自分で作ってること自体が、とっても偉いと思う。」


「手料理が1番だと思ってるからね。でも、未依沙のは格別!まさか、秋刀魚が出てくるとは思わなかった。」


ニコニコ笑いながら頬張る姿が可愛かった。

かげちゃんがわたしの彼氏で良かった。


「今日の部活はどうだった?」


「今日は体幹メニューだったからキツかった。」


「体幹メニューの日とかあるんだね。」


たわいもない話をしながら、

かけちゃんと一緒に食べると

より一層美味しく感じた。

誰と食べるかって大事だな〜

なんて思いながら。


「ご馳走様でした。」

「ご馳走様でした。」


二人で合掌して一息ついたころ


「あと、一つニュースがあってさ。」


そう言って、かげちゃんは少し視線を落とした。



「ニュース?」


きょとんとかげちゃんを見つめる。


「いや、ニュースというか、秋リーグのことなんだけど…11/4がリーグの最終戦なんだ…」


「あ…そうなんだ。」


そう、11月4日はわたしの誕生日。


「付き合ってから初めての誕生日だったし、お祝いしたいと…思ってたんだけど…」


照れながら、そして

申し訳なさそうに伝えるかげちゃんの姿に

誠実さを感じた。


「わたしの誕生日覚えててくれたんだ。」


かげちゃんの気持ちもそうだけど、

わたしの誕生日を覚えててくれたことが

意外だった。


「そりゃ、もちろん。」


サラッと言ってのけるところにキュンとした。


「最終戦があるんだったら、わたし応援に行ってもいい?」


「え?むしろ応援に来てくれるの?」


「うん、行きたい。」


「未依沙の誕生日で何もしてあげられないのに…応援まで来てくれるのか。なんか、申し訳ないな」


ぽりぽり頭をかきながら呟く

かげちゃんに伝えたいと思った。


「わたしね、バレーを頑張ってるかげちゃんが好きなの。かげちゃんは注目の選手だし、これから忙しくなることもわかってる。」


一呼吸おくと、わたしの目を見て

真剣に聞いてくれるかげちゃんが目の前にいた。


「わたしね、そんな風に真っ直ぐバレーに向き合ってるかげちゃんを、一番近くで支える存在になりたいの。 むしろ、バレーを優先してほしいし、そんなことでかげちゃんのこと嫌になったりしないよ?」


「そっか…。未依沙はこんな俺も受け止めてくれるんだな」


『こんな俺も』という言葉に違和感があったけれど、

今はそのことはツッコまなかった。


「その代わり、一緒にいられるときは甘えていい?」


かげちゃんの肩がビクっとしてるのが見えた。

身構えちゃったかな?

口元を抑えて照れてるのが可愛いと思った。


「…甘えるって…どうやって…?」


ぎこちなさMAXになっているのがわかって

笑えてきた。


「そんなに身構えないでよ。一緒にこうやって過ごしてくれたら嬉しいだけだから」


ニコッとかげちゃんに微笑むと、

お皿を持って片付けを始めた。

純粋なかげちゃんが可愛くて、

胸の奥がじんわり熱くなった。



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