9-2. 帰り道は君でいっぱい
(*景虎視点)
未依沙と別れて自分の家に向かう。
思い出すのはさっきの未依沙との時間。
女の子をおんぶするなんて、
今考えるとおかしい状況だよな…
しかも、未依沙、柔らかかった。
女の子って男と全然違うんだな…。
今も未依沙の体温と感触が、
背中や手のひらに焼き付いているみたいで、
どうにも落ち着かない。
未依沙にあの夕暮れのベンチで
想いを告げられてから、今まで以上に
未依沙からの好きが伝わってくる。
告白される前は、未依沙は完璧な女子すぎて
恋愛対象じゃなかった。
俺が隣に並んでいい男だと思えなかった。
今もまだ、正直自信はない。
でも、未依沙のことが気になる存在から
少しずつ変わってきているのは自分でもわかる。
ドキドキするし、可愛いと思うことも増えた。
気づいたときには、アパートの階段を上がっていた。
無意識ってすごい。
頭の中が完全にキャパオーバーでも、
体は勝手に家に帰ってこれるんだから。
でも、頭の中はずっと未依沙でいっぱいだった。
さっきの笑顔、声、あの距離感。
いつもの幼馴染なのに、今日は少し違って見えた。
「……なんだこれ。」
自室のドアに手をかけた瞬間、
ふっと我に返ったように呼吸が浅くなった。
外の夜風はあんなに涼しいのに、
胸の奥だけがカッカと熱くて、
息が少し苦しい。
これが“恋”ってやつなのかもしれない――
認めざるを得ないその答えが、
静かに、でも確実に、俺の頭をよぎった。




