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一番近くて、一番遠いーネット越しの恋を、君とー  作者: りなる あい
第八章:初夏の風と、二つの想い

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8-13. やっと交わる二つの想い 

(*景虎視点)


自分の気持ちを整理することを優先したかったが、

どれだけ考えてもわからないものはわからない。


好きと言い切ることはできない。

でも、それは別に未依沙が嫌いなわけではない。


これまでバレー一筋の人生を送ってきたから、

誰かを好きになったことがなかった。


いや、俺は未依沙を好きになることを

無意識に避けていたのかもしれない。

俺は無理だって思っていたから…


自分の気持ちが固まるまで

未依沙を待たせることはできないと思った。


ちゃんと、今の想いを伝えよう。

あの場では、気が動転して

『返事ができない』と言ってしまったから。


……


人生は本当に面白いと思う。

未依沙を探している時に限って、

キャンパスのどこを探しても姿が見当たらない。


俺から連絡をすればいい話なんだが…

なんてメッセージを送ったらいいんだろう…

手が止まって、一向に言葉が浮かばない。


考え事をしながら歩いていると


「かげちゃん」


待ち望んでいた声が後ろから聞こえた。

秒で振り返り、咄嗟に声が出た。


「未依沙!やっと会えた!」


(やっと会えた!って満面の笑みで言うのズルいよ…)

(期待しちゃうじゃん…もう!)


「未依沙のこと、探してたんだ。でも、全然見かけなくて。」


「わたしもかげちゃんを探してたの。…かげちゃんの気持ちを聞きたくて…」


「俺も話したいと思ってた。部活まで少し時間あるから、話さない?」


二人で近くのベンチに腰かけた。

呼吸を整えながら、

どう話を切り出そうかと考えていたら、

未依沙が話し出した。


「わたし、かげちゃんの今の気持ちを聞きたいの。今は返事ができないっていうのは、どういう意味だったのかなって」


ゆっくりと言葉を選びながら

伝えていることがわかった。


「ごめん、それ、俺から伝えるべきだったのに…」


「うん、いいよ」


沈黙になることに焦りを感じた。

でも、俺の言うことで

未依沙を傷つけたくはなくて…

それでも、素直に伝えると決めて

言葉を少しずつ世界に置いていった。


「未依沙の想いはすごく嬉しかった。正直、信じられなかったんだ。」


(かげちゃんの気持ちを聴こう)

(わたしに向き合って、一生懸命伝えてくれようとしている姿勢が嬉しいな)


一度呼吸を整える。

そんな俺を未依沙は待ってくれていた。


「未依沙は美人だし、優しいし、頭もいいし…幼馴染でずっと一緒にいるけど、本当にいい子だと思うんだ。」


(かげちゃん、わたしのことそんな風に思ってたんだ。嬉しい…でも、次に続く言葉を聞くのが怖い)

「うん…」


「でも、だからこそ、なんで俺なんだろう?って疑問なんだ。」


「じゃあ、かげちゃんはわたしのことが嫌いではないってこと?」

(恋愛対象として見れないわけではないってことだよね…わたし、期待していいのかな)


不安げに聞いてくる未依沙の表情に、

ドキっとした。


嫌いなわけない!

伝えないと!


「いや!嫌いなわけないじゃん。むしろ、まぶしい存在だよ…」


そうなんだ、未依沙はまぶしいんだ、俺にとって。

恥ずかしくて、俺は思わず

少し下を向いて小声になっていく。


高嶺の花のような存在で

俺の横で笑っているような子じゃないって

思ってしまっていたんだ…


未依沙を見ると、俺の言葉を聞いて

ピクっと体をこわばらせていた。


(でも…かげちゃんは私を見ていない…?)

(かげちゃんは釣り合うかどうかを気にしているの…?)


……


「正直に話すと……未依沙が急にバレー部に顔を出さなくなったり、バスケ部の先輩と一緒にいるところを見かけた時、少し寂しかったんだ。」


(かげちゃん、それって…)


こんなこと、伝えていいんだろうか。

でも、俺の正直な想いを伝えることで、

誠実さを示したい。


「未依沙が試合に応援に来てくれると、いつもより気合が入っている自分もいる。かっこいいところ見せたいって思うんだ」


(嬉しい…かげちゃんがそんなことを思ってくれていたなんて。)

(一生懸命、伝えてくれるところが…愛しいよ…)


「これまで、俺の頭の中はバレーのことばかりだったから…誰かを特別に好きになるなんて、そんな感情、経験したこともなかったんだ…」


これが、俺の素直な気持ちだ。

未依沙と目が合った。

互いに何も言わず、ただ見つめあう。

未依沙は俺の気持ちを聞いて、

何を感じているんだろう…


(それは恋だよって言うのは簡単。でも…かげちゃん本人に、これは恋なんだ、人を好きになるってことなんだって感じてほしいし、気づいてほしい)


「かげちゃん、伝えてくれてありがとう。素直に気持ちを話してくれて嬉しかった。」

(わたしの心の中にあたたかい想いが広がっていく。)

(やっぱりわたしはかげちゃんが好きだな)


「ううん…ごめん。こんなこと言って…未依沙を困らせちゃうよね…」


「全然だよ。かげちゃんがわたしのことを真剣に考えてくれたのが伝わって、すごく嬉しかったの。」

(かげちゃんからの想いを受けて、次はわたしが感じたことを伝える番)


「……かげちゃんの気持ち、ちゃんと聞けてよかった。」

(“好きかわからない”って言葉、怖いはずなのに、不思議と涙は出なかった。)


「わたしね、かげちゃんがわたしのことを“まぶしい”って言ってくれただけで、すごく嬉しいの。だって、ずっとわたしの中では、かげちゃんこそがまぶしい人だったから。」

(小さい頃から、誰よりも一生懸命で、真っ直ぐで、 まっすぐすぎて少し不器用なところもあって。その全部が、ずっとわたしの憧れだった。)


「だから…わたし、好きでい続けてもいい?」


その言葉に俺は驚いて、

未依沙を見上げた。

俺の素直な気持ちを伝えても、

それでも俺のことを想い続けるのか…?


「かげちゃんが自分の気持ちを見つけるまで、待ちたいって思う。でも、待つだけじゃなくて、ちゃんと“わたしを見て”って思うの。わたしの中にいるかげちゃんに、気づいてほしいから。」

(焦らせたいわけじゃない。でも、ただの幼馴染じゃなくて、“一人の女の子”として見てほしい。)


「わたしの“好き”は、勝手に始まって、勝手に育ってきたものだから。もし、可能性があるなら…わたしは好きでい続けたいの」


微笑みながらそう言った未依沙の横顔は、

どこか吹っ切れたようで、でもやわらかくて、

俺はその笑顔に、心をつかまれた感覚になった。


「…うん。わかった。俺、未依沙のそういう真っ直ぐなところ、やっぱり……敵わないな、って思う」


その瞬間、ほんの少しだけ、

“この気持ちは恋かもしれない”と

俺の中で何かが揺れた気がした。


部活へ行こうと立ち上がると、

未依沙も家に帰ると鞄を持った。


「部活、頑張ってね」


「うん、行ってくる」


いつものように並んでいるだけなのに、

どこか距離が近い気がした。


言葉はなくても、心の奥で

“何かが始まった”と、互いに感じていた。


夕暮れの少し涼しくなった風が頬をかすめていく。

でもなぜか、少しだけ前より優しく感じた。


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