8-12. 俺より他に…
(* 景虎視点)
着替えて部室の外へ出ると、
部員が数名、立ち話をしていた。
「瑠飛と未依沙ちゃんって、幼馴染だけどそれ以上って感じするよな」
「いや、わかる。二人の雰囲気、なんかお似合いだもんな」
「今日も一緒に帰ってたらしいよ」
その会話が耳に飛び込んできた瞬間、
荷物を握る手に、思わずぎゅっと力がこもった。
胸の奥が、冷たい針で刺されたみたいに
じわっと痛む。
何だろう、この気持ち…
きっと、瑠飛は未依沙の異変にも
すぐ気づいたんだろう。
あいつ、そういうとこ無駄に察しがいいし。
瑠飛なら、いつもみたいに
未依沙の頭を優しく撫でたりするんだろうか。
それを、未依沙も自然に受け入れてるんだろうな…
…いつもの光景が勝手に脳裏に浮かんできて
息が詰まった。
俺は昨日、未依沙に
『今は応えられない』と伝えた。
気持ちは、確かに嬉しかった。
けど——信じられなかった。
未依沙は綺麗で、優しくて、頭もいい。
そんな子が、どうして俺なんかを?
バスケ部の先輩ともいい感じだったじゃないか…
俺なんて、ただのバレー馬鹿だ。
勉強ができるわけでも、
気の利いた話ができるわけでもない。
……瑠飛や…あの先輩の方が、
よっぽど“相応しい”んじゃないか。
でも。
最近、未依沙の差し入れがなくなって寂しかったし、
バスケ部の先輩と話してるのを見た時、
ちょっとモヤッとした。
試合に来てくれた日は、
いつもより気合が入っていたのも事実だ。
これは——ただの反応なのか。
それとも、“好き”ってことなのか。
俺には、判断がつかない。
わからなすぎて、怖い。
みんな、どうやって恋愛してるんだ?
どうやって、自分の気持ちに
名前をつけてるんだろう。
未依沙と、どう向き合えばいいんだ……




