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うっすら転生者の侯爵令息は恋を綴る  作者: 雨傘 はる
第二章

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たぶん悪魔の愛弟子


ゆったりとした口調で、しかし重い声音が事実を淡々と告げる。


「複数人、同性の恋人はいらしたようです。なお、うち一人が……」


「ま、待て! 誰が私の調査をせよと言った!?」


長官の言葉を遮り、公爵が立ち上がる。

痩せた身体が震えていて、転倒が気がかりだ。ジルベルは騎士に目配せし、近くに控えさせた。


「関連事項はすべて調査せよと、陛下のご命令です。なお、恋仲であった中に前ロリィネ侯爵もおり、また……」


「おい、待て!」


「また、前ロリィネ侯爵には奥方と公爵の他に女性の恋人が複数おり、その……」


「待てと言うのに!!」


長官はいつも、ジルベルをまるで悪魔の申し子のように言うけれど、この状況で普通に報告を続ける長官もなかなかだと思う。勉強になります。


「長官、簡潔に」


「その養女は前ロリィネ侯爵の庶子です」


陛下の指示に、長官が一息でまとめた。

この結論に至るまで、監理部は膨大な時間と労力を消費したのだ。

記録を読むだけじゃなく、部下たちは情報収集と裏づけに駆け回った。後でたくさん労おう。


つまり、

・公爵と前ロリィネ侯爵は長年の恋仲。

・前ロリィネ侯爵は、妻と公爵の他に多数の愛人あり。

・愛人に子供ができたため、公爵の伝手で愛人と子供を保護、養育。

・愛人が亡くなり、子供を公爵の養子に。

・養子は学園入学、王家とのつながりを婉曲に主張。

という流れ。


内情や憶測をすべて省いた事実を羅列すると、こうなる。

突っ込みは不在だ。監査部は事実しか調べないので。

罪状やら何やらを考えるのは、また別の話。今日は事実確認の場だから。


ちなみに、妃殿下に『婚姻後三年も世継ぎがないなら紹介の用意がある』などと嘯いていたのも証言を得られた。

何を、とはっきり言わないところが実に貴族的だ。


一覧にした用紙を全員に配り、目を通し終えたタイミングで長官が陛下に向き直る。ジルベルも席を立って倣った。


「以上が、監理部による事実の提示となります。裏づけに関しても、詳細を提出済みです」


「ご苦労だった。多忙な中、よくやってくれた」


深く頭を下げ、席に戻る。

わなわなと震えるご老体二人は、長官とジルベルを親の仇のごとく睨みつけた。


「この髪色はどう証明する!? 黒は王家の色だ!」


前ロリィネ侯爵が吠える。

確かに、髪は真黒に近い。顔立ちも凜々しくて、愛らしいというより美人。でも、瞳は焦げ茶色だ。


「髪色くらい、染料があれば変えられるでしょう?」


にこ、と微笑むと、全員の視線がこちらを向いた。

なぜかこの世界では、髪を染めるという発想自体が浸透していないのだけれど、ジルベルは違う。


ほわほわと揺れる自分の髪を摘んで、首を傾げる。


「これ、いつもと違うのですが、わかりますか?」


「……そういえば、少々濃いか?」


隣にいた長官が、まじまじと見ながら言う。

そうそう、照明のお陰もあるけど、今日のジルベルは茶髪だ。堂々としていれば、案外バレない。


「最近、我が国に輸入されるようになった染料の中に、爪や石などの硬い素材に使用するものがあるのです。表面に塗って使用するのですが、水では落ちません」


だから、雨が降っても汗をかいても落ちない。


「……どうやって落とすのだ」


美しい漆黒の王に、ジルベルはゆったりと微笑んだ。




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― 新着の感想 ―
よもや公爵が男色家… 面白くて感想書く前に次へ次へと読み進めてたのに こんな面白いネタ感想に書かずにいられない! 報告聞かされた方々の心情が気になる!
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