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うっすら転生者の侯爵令息は恋を綴る  作者: 雨傘 はる
第二章

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揺るぎない美しさ


そもそも、血筋を重要視する王侯貴族は、婚姻による契約にも同様に重きを置く。そのため、婚外子は嫡子と認められることはない。


だが、前国王陛下の突然の崩御や、年若い現国王陛下に子がいないこと、王弟殿下も未婚であること。

現状、王族が不足しているのは事実である。今後に期待はあるものの、不安を感じる者がいるのもまた事実。


そして、仮に疑惑を放置していた場合、いらん派閥が出来上がるのは目に見えている。

ようやく現国王陛下の治世が安定してきたのである。余計な火種は潰すが吉。


機密情報を調べつつ、元庶民という養子の女生徒や公爵について部下にも探らせる。

しばらく帰れないと手紙を送ったら、差し入れをすると言ってくれる優しい妻がいるので、ジルベルは頑張った。


「既視感……既視感、ちょっとあるよねえ……これ、何だっけ」


うっすら、本当にうっすらだけど、脳裏に過るものがある。

書庫だけに籠っているのも身体に悪い。ジルベルは、学園に行ってみることにした。


とはいえ、ジルベルはでかいし厚いので、こっそりなんて真似はできない。

なので、OBの生徒会訪問というていで堂々と赴き、各所に適任を配置した。


生徒会の面々と談笑し、校内の案内という形であちこちを見て回り、生徒たちとも言葉を交わす。

久しぶりの学園は、なかなか新鮮だった。


────なあるほど。確かに、似てはいるね。


遠目にだが、例の女生徒を見ることもできた。

怜悧で美人なうちの友には敵わないが、そこそこ綺麗な顔立ちの女の子。

髪は、漆黒とまでは言えないが、まあ真黒に近い。


きりっとつり気味の目や、小さめの唇。

何より、白くきめ細やかな肌は、庶民にはあまり見ないものだ。瞳の色は、距離的に確認できない。


「ふうん」


つい、口端が上がった。

既視感、わかったかも。やっぱり現場を見るのは大事だ。


機嫌よさげなジルベルが嬉しかったのか、生徒たちはあれこれと話を振ってくれる。

時折り目の端に対象を映しつつ、貴重な機会なので若者たちとも存分に触れ合い、ジルベルは王宮に戻ってすぐ陛下への面会の許可を取った。


「ジル、学園に行ったと聞いたが」


人払いした執務室には、陛下しかいない。側近も護衛も、外で待機している。

ジルベルは、にんまり笑った。


ああ、やっぱり本物は綺麗だな。夜空色に星が輝いて、希望すら創り上げそうなほど。

たった十二歳のジルベルが主君を確信した、あのきらめきを今でも鮮明に思い出す。


「どうした、ジル?」


何も言わないジルベルを訝しむ美貌は、歳を重ねるごとに成熟し、色気と貫禄を増す。

ほうっと息を吐き、眉尻を下げて笑った。


「綺麗ですねえ。相変わらず、あなたはいつも美しい」


きりりと怜悧な目尻に、さっと朱が差す。

ああ、いつでも鮮やかで真新しい、歴史を造り上げる人の神々しさとは、たかが下々の者では到底なし得ない。


心を暴き奪い尽くされるほどの、本物の麗しさを思い知るがいい。


「敬愛なる国王陛下。この身は、あなた様の治世の一助となるために」


この豊かな国を、心優しき民たちを、共に守り抜くと誓ったのだ。

美しく凛と立つ、この主君の下で。最愛の妻と肩を並べて。




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