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うっすら転生者の侯爵令息は恋を綴る  作者: 雨傘 はる
第二章

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20/29

かっこいい王太后のご依頼


大好きな大好きな妻との休暇を終えて、意気揚々と出仕したジルベルは、一発目に飛び込んできた案件に頭を抱えた。

やだもう。すでに帰りたい。だってこれ、絶対帰れない案件じゃないか。リルーシェが恋しい。


端的に言えば、前国王陛下の隠し子疑惑。

今年、学園に入学してきた一年生の中に、それはもう陛下と顔立ちの似た女生徒がいるらしい。


最近、唯一の公爵家に養子縁組した元庶民。この時点で地雷臭しかしない。

陛下の大叔父である公爵は独身で、子がいない。

まあ、養子縁組だけなら別に構わない。公爵位はそもそも一代限り、公爵だけに与えられた爵位だし。


だが、この女生徒の顔立ちと、髪の色が黒であることが、何やら噂にのぼっているようだ。

漆黒の目と髪は、王家にしか生まれない。


何かの拍子に生まれることがないとは言えないと、うっすら転生者のジルベルは思ったりするが、それはそれ。

王家の色を持ち、顔立ちも似ているというのなら、調査はすべきである。


幸い、本人や家族が王家とのつながりを主張しているわけでもなく、周囲がざわついているだけ。

陛下の耳にも届いているだろうし、夫を亡くして二年しか経たない王太后の心情を思えば、早めに解決するべきだ。


ということで、ジルベルは記録庫に引きこもった。

この記録庫は限られた者しか立ち入りが許可されていないため、人数が割けない。

監理部の中では、監理長官とジルベル、あと二人の部下だけ。


王家の影による、全日の記録庫である。

もちろん歴代の王家全員、一生涯の全日全時間の記録。膨大な機密情報の宝庫だ。


気が遠くなるような作業だが、監理部とはこういう仕事。とにかく調査、調査、調査。

事実だけに基づく、事実のみを追求する部署。実態は非常に地道である。


指紋がなくなるんじゃないかと思うくらい紙をめくり、目を皿にして記録を読み込む。

途中、食事や仮眠などを挟みつつ、リルーシェへの手紙を書いたりしつつ、数日後。


「もし王家の血筋ならば、未だ後継のない王家には必要な人材ではないか、などと言い出しましたのよ」


まったく目が笑っていないにこやかな王太后に呼び出されたジルベルは、疲労や寝不足のせいで聞き間違えたのかと思った。

隣で、監理長官もしきりに膝を抓っている。すっごい気持ちわかる。


王太后の持つ扇子がピシピシと音を立てているが、止めるタイミングも言葉も見つからない。


「言い出したのが、公爵本人だというではありませんか。ずいぶんお年を召されたのねえ。おほほほほ」


そういえば、王太后は王妃時代、公爵と仲が悪かった。

というか、公爵が甥である前国王陛下に面倒ばかりかけるため、嫌っていたというのが正しいか。

夫を気遣う妻としては、真っ当な怒りである。


「わたくしはね、王妃時代とにかくあの公爵には手を焼きました。子を成せ子を成せとまあうるさいこと。ご自分は婚姻すらなさらないのに、おかしなことねえ」


怖い。めちゃくちゃストレス溜めていたんだろうな。王妃だった時は、決して口には出せなかったのだろう。


「カレンデュラ妃殿下に圧力をかけていたのは、おそらく公爵ですわ。そして、今回の騒動です。わかりますね」


パチン、と扇子が閉じられる。ジルベルと監理長官は、背筋を伸ばした。

頷くことはしない。監理部は、事実しか肯定しないから。ただ、聞く体勢を取るだけ。


「王太后からの依頼です。公爵の言が事実か否か、確実な証拠と事実の提示を。陛下にも、もちろん許可は得ています。うちの大事な嫁御は、わたくしが守りますわ」


きっと、彼女自身が守られたかったんだなと、ジルベルは王太后の傷を思いやる。

誰にも言えないまま一人で戦った記憶が、彼女を奮い立たせるのだ。強くて、かっこいい人だ。


ただ、王太后の心情とは別に、ジルベルたち監理部は事実を追求しなければならない。

陛下の印が押された依頼書類だけを受け取り、場を辞した。




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