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対の鈴
片道の門は、便利だった。
便利なのに、扱いづらい。
森に拠点がある以上、沼へ行くのは手間だ。
道を選ぶ。
足場を選ぶ。
湿気で道具が濡れないように気を使う。
行きは、どうしても時間がかかる。
そのくせ――戻りは一瞬だ。
沼側の門を踏めば、森へ抜ける。
だから気が緩む。
帰れるからと、沼で“今日”を削りすぎる。
削れた分だけ、次の手順が雑になる。
雑になると、森の暮らしが崩れる。
モリはそれが嫌だった。
だから、必要なのは“戻り”だ。
門を二つにする。
じゃない。
同じ門を、往復できるようにする。
大げさな仕組みはいらない。
妖精の踊りに、無理をさせない。
ただ、結び目を安定させるだけ。




