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25 それは大きな術式の箱

 ニッテと零の処置は終わった。次は術式の解析だ。

 先ほどタケルがガネットのナノースを含めた術式を解析したところ、ある問題点に行き着いた。その強さの割にあまりにも単純だったのだ。


 タケルはスティーグに状況を伝えると、フロアに手を触れた。

 方程式を解くように術式を読み解く。


「この術式……ガネットのものだ。ガネットの術式の一部が切り離されてフロアに移されていたんだ。だけど……まだ奥に何かがある……このままではまだ僕のナノースは使えない」


 タケルは呟いた。


 ガネットの術式を理解したその後。タケルは研究所の術式にまで解析の対象を広げる。


 術式そのものはさほど複雑ではなかった。が、問題は研究所全体に張り巡らされた術式が相互に影響し合っていること。これをどうにかしないことにはガネットの術式へ攻撃したところでさっきの繰り返しにしかならない。


「まるで研究所が一つの術式になっているみたいだ」


 と、タケルは言う。

 術式ごと破壊すれば簡単だ。が、そうしてしまえば必要な情報が得られないだろう。

 だからタケルはガネットの術式と研究所の術式を切り離すことを選んだ。

 ナノースを研究所に対して作用させた。


「!?」


 スティーグとの剣戟の最中だったガネットは表情を変えてのけぞった。

 それをスティーグは見逃さない。最良の間合いに入り、鉈を振るう。

 だが、ガネットはその攻撃を弾く。弾いたら、大気中から塵の塊。飛び道具を作り出すが――うまく扱えない。


「くそ……切り離されたか!」


 と言って、スティーグを蹴り飛ばす。

 からの、地面に触れて爆発を起こし。爆発の破片から連鎖的に飛び道具を作り出し。タケルによる術式の解析を妨害する。


 流れはタケルたちに向いていたようにも見えたがガネットはまだ粘っていた。

 さらに――飛び道具のひとつがスティーグに牙をむく。飛び道具から伸びた太い棘がスティーグの腹部を貫通し、さらにフロアに突き刺さる。


「がはっ……タケル……」


 スティーグは痛みに表情を歪め、咳き込んだ。


「これでは治療できんな。動けんまま死んでいけ。私は……ロゼ含め残りの連中を始末してタケルを回収し、本拠に戻る」


 と、ガネットは事実上の死の宣告を下したのだった。


「これで……俺が死ぬとでも……? こっちには錬金術師が――」

「黙れ。この研究所でお前は私に生殺与奪の権を握られているに等しい。変な行動に出れば私の術式がお前を殺す」


 ガネットは言った。

 そのとき。スティーグは体内に走る妙な痛みを感じた。腹部を貫通した棘からさらに別の棘が枝分かれするような。


「が……やめろ……俺には……シーグリッドが……」


「黙れと言っている。さて……残りは……」


 ガネットは生殺与奪の権を握ったに等しいスティーグから別の相手へとターゲットを移そうとした。


「何をしている、錬金術師。よくも……私の仲間をこんなにしてくれたな」


 ガネットの耳に入ったのは怒りの込められた声。

 その声の主はエステル。ミッシェルとの戦いを終え、ガネットとの戦いに加勢しようとしたところだったのだ。


「鳥籠の碧き悪魔……また厄介な敵が来た、か。今回は少々骨が折れる」


 ガネットは振り向き、そう言った。


「お前から見れば私はそう映るか。だがそれでもいい。私は仲間のためになら悪魔にでもなろう」


 エステルとガネットは同時に動いた。

 爆発を起こし、空中に塵の塊が舞う。人間ならば最適解は回避か防御、あるいは迎撃だろう。が、エステルは違う。人間ではないエステルは炸裂する塵――棘を受けつつガネットの懐に飛び込んだ。

 からの、右ストレート。

 エステルは確かに骨を折る手応えを感じた。それと同時に嫌な予感が頭をよぎる。


 ――戦っているのはエステルだけではない。いるではないか。敵が、ガネットが最も狙っている者が。


「まさか――」


 嫌な予感がしたときにはもう遅かった。

 塵の一部はエステルを狙わず――あろうことかそこから伸びた棘がタケルの腰を穿った。


「そんな……ぁ」


 タケルは声を漏らす。

 どういうわけか痛みは感じない。動かそうとしても、足は動かない。どうやら神経をやられたらしい。

 タケルの顔には絶望が滲み出る。


「安心しろ。No.11を殺したりはしない。我々は彼を必要としているからな」


 ガネットは言った。


「殺さずにどうするつもりだ?」


「実験体のお前が知る必要はない」


 と言うと、ガネットはエステルの至近距離で爆発を起こす。

 その直後、エステルは自身とガネットを取り囲むように水の壁を展開する。


「それならばなおさら手を出させることはできん」


 エステルは言った。


「ほう……それで私を封じたつもりか。気づいていないのか? 私に射程など存在しない」


 ガネットがそう言った瞬間。

 水の壁の向こう側の天井が崩落する。かと想えば、先ほどのような飛び道具が生成し、無傷の仲間――ロゼに襲いかかる。


「そんな――」


 エステルがそれに気づいた瞬間。

 ロゼはそっと手を伸ばす。


「ロゼ、しなないよ。だいじょうぶ」


 ロゼがそう言うと、棘を伸ばした飛び道具は一瞬にして蝶に作り替える。

 彼女は錬金術師となり、ナノースまでも移植された。その能力は生命を作り出す代物。拒絶反応も起こさない、次世代のナノースそのものである。


 だからガネットは動揺することになった。


「なぜ『ROSE』ごときがナノースを持っている……!? 徹底して管理したはずだ!」

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