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24 二人の死神

 零はもともと鮮血の夜明団側の人間ではなく、むしろ彼らから討たれるはずの人間だった。しかし、とある男との戦いで抗争から離脱し。運命の悪戯もあって鮮血の夜明団へと加入、さらに身寄りも家族も失うもの離反する理由もないその立場から暗部にまで抜擢された。

 そして、死ぬような戦場に身を投じても世界に引き留められるように生き延びた。


「そうか。ならば今回ばかりは許してくれるだろう。事情が事情だからな」


 ガネットはそう言うと、今度は零に狙いを定める。

 ニッテの方は傷口の再生も妨害した。放っておいても失血死するだろう。


 遠距離近距離両方で戦える2人。まずガネットはフロアに術式を敷く。対する零は術式を使わせないために周囲の温度を下げる。が、絶対零度にまでは下げない。


 術式の範囲内に踏み入ると、空気から小さな塵の塊が生成する。


「これで世界ともお別れだな。お前の判断が悲劇を招いた、そういうことだ」


 ガネットがそう言うと、塵の塊は一瞬にして細かな針を剥き出しにし。零だけでなく戦っていた全員に襲いかかる。

 至近距離の零は真っ先にその攻撃をくらい、胸を貫かれ。それでも零は抵抗する。共闘する者たちを死なせないため――


「どうだろう……な……?」


 零はとっさの判断で周囲の温度を下げ。氷の壁を作り出し。

 ニッテやスティーグ、タケル、ロゼは守られる。棘は氷を穿つも、氷の強度は計り知れず。

 だが、零は疲労と傷でその場に倒れた。


「2人目……次に死ぬのは誰だ?」


 ガネットはそう言って戦える面々を見た。

 ロゼは戦闘経験がほとんどなく、事実上の非戦闘員だろう。

 タケルはガネットに刺さるナノースを持つものの、やはり経験が少ない。サポートは必須だろう。

 そうなれば戦えるのは必然的にひとり。


 スティーグはここで死んでも仲間を守ると覚悟を決めた。もともとその覚悟ありきで任務を受けたのだ。


「絶対にタケルとロゼは死なせん。俺がこの命に代えてでも、な」


 そう言ってスティーグはガネットの前に立つ。


「少しでも骨のあるやつだと良いがな。私はこの通り、無傷に等しい。そういうことだ、名も知らぬ戦士」


 と、ガネット。


 スティーグが動こうとしたその瞬間だ。

 いつ仕込まれたのかもわからない術式が作動し、天井が崩落する。スティーグは回避するもそこに隙が生まれた。

 その瞬間。連鎖的な爆発。天井がいくつもの塵の塊へと姿を変え、弾丸のように降り注ぐ。

 スティーグはとっさの判断で衝撃波を起こした――


 たとえ決定打を与えられずとも、時間を稼ぐことはできる。スティーグの能力で衝撃波を起こして仲間を守ることができるのだから。


「戦士とは嬉しいな」


 スティーグは言う。

 すると。


「ふん、敵地で油断などしないことだな。とはいえ……お前達にもとを断つことなどできぬ……」


 ガネットは言った。

 が、彼女自身は動かない。何かをしてくるとスティーグは予測したがそれすらもない。


「何のつもりだ」


「錬金術師の戦い方を、お前はよく知らないようだな」


 ガネットは言う。


 次の瞬間。

 不発だった塵の塊が背後で炸裂する。炸裂し、棘がスティーグを襲う。彼の脊髄や脳、心臓を狙わんと。

 が、スティーグも間一髪で気づく。衝撃波を放って棘を振り払う。

 それを見越したかのようにまだ不発だったものが棘と化し。スティーグの脇腹と右の太股を貫いた。


 とっさの判断で致命的な部位は外した。が、考えるまでもなく深手だ。それだけではない。錬金術で作られた物体である以上――ガネットが遠隔で錬金術を扱える以上、棘が身体に残るだけでも致命的だ。


 スティーグはイデアを体内に展開し、刺さった棘を2本とも引き抜き。

 正面からガネットに斬りかかる。

 ガネットは爆発を起こすが、スティーグはその中へと無理矢理突っ込んだ。

 爆風の中を突っ切って。ガネットに肉薄すると、スティーグは渾身の力で鉈を振り下ろした。


 その一撃は並の相手では深手を負うもの。

 だが――いや、当然ガネットはそれをのけぞりながらも受け止める。受け流す。受け流したらスティーグの懐に飛び込み。彼の首を切り裂かんとナイフを突きつける。が、ナイフは空を切る。スティーグがバックステップで避けたのだ。


「甘い。下がったところでこの研究所すべてが私の間合いだ!」


「はは……そうか!」


 ガネットの言ったこと自体はスティーグも薄々気づいていた。

 そもそもΩ計画の施設。敵の拠点のひとつ。敵方に有利な状況が作られていない方がおかしい。


 スティーグは背後からの攻撃のタイミングを読み切り、衝撃波を放つ。からの、踏み込み斬り。

 ガネットは躱す。


「とにかく今は状況を好転させる方が先だな……タケル! そっちの状況はどうだ!?」


 と、スティーグ。


「ロゼも手伝ってくれたからニッテと零の止血はできたよ。でも、戦線復帰は厳しそう。僕も解析できたら加わる」


 タケルは答えた。


 彼の言葉にガネットは眉をぴくつかせた。

 ガネットは知っていた。タケルが術式の解析を得意としていることを。彼に術式を解析されたアイン・ソフ・オウルは全員死んだということを。

 彼女が戦っている敵の中には死神がいたのだ――


「……いや、一人でも多く葬れば御の字だ」


 ガネットは自身を奮い立たせるように呟いた。

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