73.クラブ活動始めました
そして翌日の放課後。
「よっ、と。これを繋げる……できた!どうかな?イデア」
私はさっそく魔道具研究会に参加をしております!
「見せて?……うん、いいと思うわ。この部分に軽く魔力を流してみて?」
「ここね、軽くっと」
パアッと優しく光が灯る。
「わあ、できた!すごい」
「上手にできたね。リリー」
イデアーレが軽くパチパチしながらはしゃぐ。
周りの先輩たちも、「おお、さすがだな」と大袈裟に褒めてくれる。
「いやあ、イデアのキットを組み立てただけなんだけど……」
すごいすごいと盛り上がる周りに、一人言ちてみる。誰も聞いてないけれど。
そう、私は前世で言うところの、初めての工作シリーズよろしく、イデアーレ作の『初めての魔道具作りキット』にて、スタンドライトを組み立てたに過ぎない。前世の記憶とかもないのにこの発想力、愛し子たちは才能に溢れている。
……そう思うと、やっぱり私はズルだな?ズルいな?とか、ちょっと過ってしまう。昨日のことを気にしている訳じゃないけど……。
……ま、いっか!いただいたものは有り難く使うべし。それこそがオバちゃん道よ。
「わあ、リリアンナ様ほんとにお上手!イデアーレ先輩、わたくしどこか間違っていますか?」
「ん?ちょっと見せてみて。あ、これはね」
「先ぱーい。俺もみてほしいです~」
「僕もいいですか……」
そしてなんと、ソーニャたちも魔道具研究会に入部したのだ。デュオルにも、部活くらいはお目付け役は大丈夫だよと言ったけど、「僕も興味がありますから。……アンクレットの件もありますし」とのことで。真面目な彼らしい。
ソーニャとレントールは楽しそうだからとストレートな理由。大事。
友だちと仲良く部活ができるのは嬉しい。
教えてくれるのが天才イデアーレで贅沢だしね!
先輩たちもヲタ気質ではあるものの、みんな優しくて丁寧に教えてくれる。三人もそんな先輩たちに囲まれながら、着実に仕上がりそうだ。
「できました!」
「うん、ソーニャさんも上手にできたわね」
「ふふ。はい!ありがとうございます。やっぱり魔力を通す道って大事なんですね。スーッと真っ直ぐ間違いなく整うと気持ちいいです」
「そうね。とっても丁寧で、間違いなくできているわ」
はわわ、と、はにかみながら頬を染めるソーニャ。この小リス感よ。
「ほんとね。わたくしのざっくり感とだいぶ違うような……」
「リリアンナ様は勘がいいんでしょ!できてるんだからいいんだよ~。俺もできた!」
レントールのそれは、同じキットのはずなのにだいぶ個性的な仕上がりになっていた。
「ええ?レン、なんでそんなになるのよ!」
「灯りがつけばいいだろ~。ソーニャも意外と細かいな」
「意外じゃないぞ。ソーニャは僕より曲がったことは嫌いなタイプだよ。何でもきちっと揃えたがるんだ。ねぇ?」
二人のやり取りに、デュオルが笑いながら入る。
「だって、何か嫌じゃない。ちゃんとしないと」
「へぇ、まあ性格だろうけどさ、あんまり拘ると行き詰まるぜ~」
「お前は拘らなさすぎだけどな」
「ひでぇ!」
仲良し三人の会話に、みんなが楽しそうに笑う。そう、楽しいはずなのに。
『何か嫌じゃない。ちゃんとしないと』
そう言ったソーニャに何故か変な違和感を感じた自分がいて、慌てて頭を振る。
(嫌だなあ。昨日のこと、自分で思っているより気にしているのかしら)
魔王の残滓とも相まみえたし、周りが聖女だ勇者だと言っても、この三年間はのほほんと過ごせていたから原作なんてほとんど気にしていなかったのだ。それを昨日の件で、また引っ張り出されたような感覚が少なからずあるのかもしれない。
(まあ、ソーニャに悪気はないのだろうし)
せっかくの楽しい部活なんだから、有意義に過ごさねば。うん。
「リリー、見て!レンくんのある意味凄いわよ」
「わ、どれどれ?」
全力で人生を楽しむのだ。
◇
その日の夜、シュマール男爵家の自室にて。
ソーニャは持ち帰って来たスタンドライトをじっと見つめていた。
その表情は、昼間の可憐な少女の姿とあまりにも重ならず……。
その足元に、音もなく黒い子犬の姿をした妖精──クロが現れる。
『どう?順調?』
「クロ!そうね。まずは第一歩かしら。リリアンナ、チョロ過ぎるわ。やっぱり原作と違いすぎるのよね……。転生者と思った方がいいかしら」
ソーニャはクリクリとした紫の瞳を持つクロを抱き上げ、その額に自分の額を擦り付けた。
「だって、おかしすぎるもの。聖女マリーア様と勇者サーフィス殿下がくっつくのが、正しい『物語』の結末なのに、なんで悪役令嬢のリリアンナが、殿下からもテンダー様からも愛されてヒロインぶっているの?」
『そうだね。物語は、正しく戻さないとね』
囁くようなクロの声に、ソーニャは陶酔したように頷く。
「ええ。物語の邪魔をする悪役には、消えてもらうわ。……でも、慌てなくてもいいわよね。学園生活は始まったばかりだもの。もっと親しくなって、信頼させて、それから……ふふ、楽しみ!」
少女と黒い子犬は、月明かりの消えた暗闇の中で、静かに、愉しそうに嗤い合うのだった。




