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異世界転生を果たした、おば、コホン、お姉さまは、お嬢様生活のために悪役回避、頑張ります!  作者: 渡 幸美
第四章 聖女と勇者と精霊と

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96.クリムの祠

「その祠って、どんな風に建てられたの……?」


私がそっと尋ねると、リリスは、少し遠い目をした。


『クリムが封印された後ね、しばらくは、みんなみんな、悲しみに暮れていたの』


小さな羽を、ゆっくりと震わせながら。


『でもでも、悲しんでいることを、ティターニア様たちの前で見せられなかったの。ティティ様たちが、一番、傷ついてるって分かってたから』

「それで、隠れて……」

『うん。夜な夜な、こっそり集まったのよ。妖精たちだけじゃなくてね、クリムに助けられたことのある人間たちも、一緒になの。みんなで、手作りの小さな祠を建てたの』


当時を思い出しているのだろう、空を見上げるようにして、リリスは話を続ける。


『石を運んで、彫刻を彫って……窓には、みんなで月の模様を入れたのよ。クリムが、夜空を何より愛していたから』


その光景を想像すると、わたしの胸がじん、と、熱くなるのがわかった。


「そんなにたくさんの人に愛されていたのね……クリム様」 


思わず、そう零れた。


(悲しかった時期は、確かに、あった。でも、それだけじゃなかったんだ)


古い石造りの、月の模様が彫られた祠。それは、ただの不気味な魔王の拠点などではなく、かつて誰も救えなかったクリムのために、妖精さんたちや人々が密かに心を寄せ合って建てた場所なのだ。

千年前に、彼を慕っていた人たちが確かに、いて。その想いは、時を超えて今もなお、あの祠に静かに宿り続けている訳で。


――すれ違いって、本当に残酷で、ままならないものだなあ。


いや、でも。


今、彼……クリムが、その祠を拠点?って言うの?依り代?って言うの?に、しているのであるならば。---リリスたちの気持ちも伝わっていたのでは?


封印から少しずつ漏れ出た残滓がたどり着いた場所が、自分を慕う思念の残る祠になるのは、自然な気がする。……想像、だけども。


(だったら――)


その想いの続きを、届けることができたなら。


「――行きましょう」


気づけば、そう口にしていた。


「シュマール領の祠へ。クリム様に、会いに」


その場にいたみんなが、静かに頷いた。


「でも、リリー。わたくしたちだけの判断では行けないわ」

「あ、そうだよね。確かに」


エレナの言葉に、はっとなる。

そうだ、事は魔王と言われる人に関わっていることなのだ、ここで勝手に動いて万が一があるのはいけないよね。マリーアにサーフィスと愛し子のみんな、陛下とかオベロン様たちにも報告しなきゃだし。


それと。


「ソーニャ様。さすがに陛下に報告はしないといけないから、話すことになるわ。けれど、クロ……クリム様が関わっていることだから、きっと大きな処分にはならないと思う。わたしたちもフォローするし」

「リリアンナ様……」

「幸い未遂だし。……でも、騒ぎを起こしたところもあるよね?そこは、きちんと自分で反省しようね」

「リリー、ソーニャはわたくしに預けて下さいな。義妹(いもうと)のことだもの」

『そうそう、癒しのウンディーネちゃんもいるからね!』

「ふふ、うん。きっと陛下も納得されるんじゃないかな」


ウンディーネの協力はきっと大きな盾だ。

ソーニャはまた目に涙を浮かべながらも、「はい!」と、力強く頷いた。隣ではデュオルがしっかりと肩を支えている。


『リリー。我らも精霊の国へ一度戻る。封印も確認せねばならぬしな。帰りは大丈夫かの?』

「うん。サバンズ家の馬車に来てもらうよ。それで、そのまま王城へ行けるように手配するから」

『うむ。ではまた夜にでも参ることにしよう』


私たちはそれぞれに動き出した。


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