表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『アウト・オブ・灰塵世界』【完結】  作者: 久瀬 風助@鬼叺 連
六歩目:戦獣奪還、開戦す
86/142

67.研磨を経て英雄となる




 硝子で隔てられた先、剥がされた『ツギハギ』のような何かがあった。渇き、くすんだ色味をした濃淡の分かれた赤色の合間、僅かばかりの見えたのは何処か見慣れた薄橙。


 放逐されている? 晒されている?


 用途、目的、そんな理屈が分からなくなる程、拒絶したくなる程。『肉』を感じさせる物だった。



 何故拒絶したがるのか?



 それは恐らく、きっと。あの残骸、残滓(ざんし)の元が『人の形をしていた』事実を、それを見つめる少女は呑み込めてしまったからだった。



 「………」



 硝子の上をなぞられる指が薄く膜を作った。抱くべきではない憐憫を抱き、血染めは対称的な彼女の青い瞳に反射する。

 そこには彼女以外誰も居ない。反響の一つもない、耳の詰まる重い静けさの中。ふと右を振り向く彼女の視線の先には━━



 「……元気そうで何よりだよ、こんなところで何をしているんだい?」



 かつての同じ居場所で時を過ごした友達が居た。…だが、今は違う。彼女は彼の、『クロガネ・ホーマ』の犯した罪を知った。



 「…クロガネさん、正直に答えて。

 これを貴方は『望んでやった』んですか?」



 血染めの乾いた塊は、『破綻者(イレギュラー)』と呼ばれた存在の成れの果て。生まれ持った血筋に組み込まれた『生態』の軍事利用をこの国でも行っていた。それ故に生態実験、兵器転用等にも利用こそされていたが『こんな(ザマ)』には絶対にしない。アカツキは後世に継続させるべく歯車の在り方を尊重するからだ。


 そして、これを実行したのは。実行の手助けとして尽力したのは、かつての仲間であるクロガネ。彼は虚ろな瞳に隈を浮かべ、何処か()()に笑っていた



 「こんな…使い捨ての素材にする為に、貴方は奔走していたのですか」


 「……どうだろうね。でも、こうしないといけない気がしたんだ」


 「そんな物はありません。……人の命まで利用して彼に力を貸した末、完成したのは怪物を越えた災害です。


 ━━何かなろうとする方法を、これ以上間違えないでください」



 彼女自身の切願か。それとも彼女に『投影』された幾つもの影の願いか。 国に家族を殺され、自らの居場所を失った末。彼女に与えられた権能は、文字通り『全て』を見透かしていたようだった。



 「…それは他人に判断される物じゃないよ。僕にとっては…意味のある事だから。君はなれたんだ。僕と違って。だからもう、二度と僕の気持ちは分からない。


 トクサは兵器。スオウは破綻者。リンドウは年長者。……そして、君は『英雄』となった。僕だけだ。()()()()()()()()()()()()



 彼は震える声で、ルリに訴える。流す涙はとうに枯れ、情緒のサイクルで己をひたすら焼き付くすように、彼は言葉の節々に皮肉と悔しさを滲ませていた。



 「━━おめでとう、ルリ・ベルトロール。その腸に詰め込まれた優しさをそのままに、頑張って英雄としての務めを果たしてくれ」



 静寂に、不安定で覚束ない声が走る。すれ違い様にルリの肩をクロガネは掴むが、そこに激励の感情はない。『一生誰かに尽くしていろ』という身侭な逆恨みが、彼女を裂く。


 しかし、それと同時。それをかき消すかの様に『何かが、聞こえた』。


 耳へと届いたそれは、ふざけた宣戦布告。或いは転覆、暴露の類い。嘲笑い、支配し、屈服させる悪意。何処まで本気なのかは知らないが、声の主はこの国の外へと進撃するつもりらしい。



 ━━既にクロガネは居ない。再び戻ってきた静寂の中、彼女は『強くされた』眼差しで扉を開いた。



 「()()()()()()()



 己の決断で与えられたモノは『英雄』と呼ばれる能力。彼女は自らの精神性を、剣として振るう者。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ