表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『アウト・オブ・灰塵世界』【完結】  作者: 久瀬 風助@鬼叺 連
六歩目:戦獣奪還、開戦す
84/142

65.新兵器導入




 白い群像の中を、黒い影が紡いだ。

 淡く、目映く、実体を伴った緑色の閃光が影に混ざると、宙の上。その姿形が露となる。


 『自己改造型蹂躙戦獣トクサ 戦闘態』、黒染めが侵食しながらも彼女は己を保ち、隊列を組む労働力(スレーヴス)の悉くを蹂躙し続けていた。



 「━━動力液(フルード)足りッかな…これ」



 彼女は一個として、人間だ。しかし事実として兵器としての機能を保有し、それを運用する算段も存在した筈だった。結果としてそうはならなかったが、迎撃を目的として()()()()運用される。


 例外に例外を重ね、勝機を増やす。その一つとして、彼女を『運用』するに至った。保有する戦闘能力・権能を、短時間の中で彼女は支配しなければならない。スオウはトクサのバックアップとして、ラヴの隣で仁王立ちをしている。



 「ッッ━━!!!(前方20……充填問題なし━!!)」



 最もたる『例外』は、ウスズミだった。

 烏羽色に光る、鎧を彷彿とさせる外骨格が彼の右腕を覆い、常に淡く放電している両刃が、彼の回りを切り裂くように迸る。


 トクサが縦横無尽を往く中、地に足を付けて雷電を纏う彼は。労働力(スレーヴス)を横に、縦に、薙ぎ払っていた。


 

 「電力、電圧良好━━。残量80%━━。刀身の磨耗・損傷は10%未満━━。


 動ける。……まだやれる(あたい)だ」



 ━━━━━━━━━━━━━━━━━




 「━━これは?」



 時は少し遡る。ラヴに呼び出されてたウスズミ。その興味は目下に置かれた鈍色のケースに注がれている。小さなテーブル目一杯に置かれた、型番号のような文字羅列の描かれたケースの留め具を外しながら、ラヴは続ける。



 「兄弟(ブロー)にも戦場には出てもらう。駅で見せたお前の瞳は、例え人の良さでも誤魔化せんぜ」


 「なっ……ちょっと待」



 問答は無用、とでも彼は言いたげなのだろう。外された留め具をは多きな音を立ててウスズミの言葉を遮ると、ケースに保管されていた携行兵器が、彼の眼前へと提示された。



 「天性の才能でも与えられた権能でもない。平々凡々ながらも突き詰められ、裏打ちされた技術。…そこに『こんなもん』を追加したら、どうなるかな?」


 「どうなるっ……て……。 そもそもこの兵器はなんだ?見た感じは軍鉈(マチェーテ)に見えなくもないが…」



 アカツキにも同様、軍刀をベースとした錬鉄強化軍刀『カマイタチ』なる近接戦闘用兵器は存在する。提示された物も恐らく、同様の目的で製造された刀剣類の兵器なのだろう。


 ただ、相違点は幾つもあった。両刃の際立ったような刀身は、刀身とも砲身とも見れる造りをしており、持ち手も内側に内包されている。鞘も存在せず、何かしらの外媒体と繋げる為の管が付いている。


 造型は至って普通にも見えるが、用途を上手く総合する事が出来なかった。



 「そうさな…命名するなら『雷電鋼刃(インパルスブレード)』って所か。管に付いてる端子を外骨格に取っ付けて、一緒くたに運用する携行兵器。外からは勿論、少しでも穴が開きゃそこから敵兵器をショートされられる優れモンってな。


 外骨格とは電力を供給し続け合ってるから、下手に外すんじゃねーぜ?」




 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━




 「━━何考えてんだ。お前」


 「意外な駒が戦場に居れば、まず動揺を誘える。加えて新兵器の投入だ。アイツは決して弱くは無いが、如何せん『色味』が無ぇ。


 新兵器はアイツの色味(ちから)になってくれるだろう。あの外骨格もワカバのデータから算出して作り上げた、いうなればプロトタイプの()()()みてーなモノだからな。すぐにゃ壊れねぇし、壊れるような運用も兄弟(ブラザー)はしねぇだろう」


 「試運転(テスト)はしたのかよ。実用化のされてねぇ外骨格と専用装備に、信用に足る部分は何処にある?」



 ラヴの沈黙の向こう。ウスズミはただ刃となって、群れを薙ぎ払う。何かしら抱えているにせよ、彼は至って『普通』の範疇にいた。別世界の記憶を保持してるとはいえども、()()()()()()()


 何処か、欠けた場所から崩れるように。彼は至る箇所が変質するだろう。…スオウはその可能性を見据え、もたらした張本人であるラヴに、『答えろ』と睨んでいた。



 「……俺としても不本意だ。決して副作用が無いとは言えない。大きな問題として、時間が限りなく不足している。


 ウスズミはリスクを飲み込んだ上で雷電鋼刃(インパルスブレード)を装備した。この後身体にガタが来たのならば、俺達は全力でサポートをするつもりだ。……彼には敬服しかない。平々凡々でありながら、彼は他の者には絶対に出来ない選択が出来る」



 ……問いはすぐに返ってきた。 耳こそ疑わない、想像に難くない返答。


 しかし、やはり。試験運用すらも無い不明瞭な兵器によって、彼は限界を越えた力を手に入れていた事を事実だと認めたが、スオウはそれでも言葉を飲んだ。

 ━━仕方の無いことだと、小さな胸に言い聞かせて。兵器の名前の如く雷電の弧を描くウスズミを見て、彼女の表情は少しだけ切なくなっていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ