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『アウト・オブ・灰塵世界』【完結】  作者: 久瀬 風助@鬼叺 連
六歩目:戦獣奪還、開戦す
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62. 似た者同士な二人(1)




 二人は、二匹は。それから暫く何も言葉を発さなかった。戸惑うでもなく、噛み締めるでもなく。ザラつきや隔たりのない無表情と微笑みが、互いから視線を逸らさなかった。



 「……弟じゃねぇだろ。アンタ」 



 ━━突然。突如。其処に無かった筈の要素が目の前に現れたからか、今にも溢れそうなモノをなんとか抑えながら声を絞るスオウ。ワカバはそれを受信するが━━


 「厳密には違うよ。……キミの望む呼称。恐らくは『紛い物』や『贋作』、その類い。 好きに呼んでくれて構わない。でもこの子は僕にとっては。唯一の『分かる人』だから」


 「何を知ってるってんだ……!」



 彼女の嘆きを思慮する事は無かった。淡泊に、シンプルに。あくまで計算機能の導き出す回答として解を示した。


 それなのに、少年(ワカバ)の言葉は何処か、少女(トクサ)を彷彿とさせた。それは情報の類似性によるものだと悟ったように彼は口にした。 けれども、あくまでも構築されている事実だとしても。トクサの親友であり続けたスオウは認めたくなかった。



 「━━『終末の蜥蜴』。アニシモの奪取した情報によって賄われた『プロトタイプ』のノウハウを元に構築、順応させた、対蹂躙戦獣戦の破綻者(イレギュラー)


 虎の子ではあったんだが、オリジナルとコピーが出会っちまったんならそれぐらいは情報共有しねぇとな」



 しかし、その嫌悪の矛先はラヴの弁明によって、半ば強制的に止まった……否。『変わった』。 

 


 「………ワオ、パワフルだね、彼」


 「そうね。それにとっても『ウブ』ね、きっと」



 目には目を。獣には獣を。クレランスはアカツキへの対抗手段として、一人の少年の未来(これから)をベースとして、本来ある在り方から歪め、遠ざけ。


 破綻した者…『終末の蜥蜴』を保有する兵器へと作り替えた。 いつ琴線が破れてもおかしくない状況下、横から聞こえる談笑には目もくれず、ウスズミの視線はラヴに注がれる。



 「……対抗する、ただそれだけの為に有り体の幸福を奪ったのか」



 彼の口から述べられた弁明が事実とは限らない。着色されているかもしれない。…同時に、胡乱でもない。ワカバとトクサの存在が信憑性を補強している。 面影がどうしても重なり、ウスズミは思わず手荒くラヴの肩を掴んでいた。


 ほぼ同時。周囲を警備するクレランスの守衛の全てが、ウスズミに銃口を向けた。それらは人工労働者(エゴ・スレーヴス)ではない、帰る場所のある純然とした人間だ。


 ……さりとて、仮にその首を、胴体を落とす刃に、容赦は無いだろう。歯止めを無理矢理掛けられた、赤熱するようなスオウの殺気は、兵士の銃口を鈍らせていた。



 「……言いたい事は分かるぜ、兄弟(ブラザー)。でもな」



 前置きを置いた上で、彼は自らの右肩を強く締め付けるウスズミの掌を、ゆっくりと退ける。



 「庇護され続ける事は幸せか? …ワカバを見てみろ、アイツは俺達と同じ仲間だ。兵器でいる事を誇りに思っている。……俺達以上に強力だぜ、見てくれだけで同情はよすんだな」


 「………」



 何を以て幸福とするか。彼等にとっての本懐をウスズミは飲み込む事が出来ない。 可能性を省みずとも、凄惨さをいくら連ねようとも、クレランス陣営の掲げる『幸福』の形は歪で、狂っているとすら思えた。


 ━━だが、不和を募らせてはならない。これ以上の敵を増やすのは愚策だ。理解出来ないのは国柄が異なる以上当然だろうと、ウスズミは自らのトゲ立った怒りを鞘へと納める。



 「……話を戻すぜ。敵さんの目的、んでもって遂行の為の手段は割れた。…いつ頃攻めてくるかの予測は俺達が立てておく。アンタ達…特にスオウとトクサは戦闘のウォーミングアップを怠らないでくれよ。戦力は大いに超したことはねぇからな」



 此処から先巻き起こる戦い。鉄と火の混ざった煙がローライトを包み、血液が地面の塵までも赤く染めるだろう。死にたく無いのであれば戦うしかない。


 『怒りの矛先を履き違えてはならない』。声には出さずとも、ウスズミは彼等の幸せの形を理路整然と解釈する事にした。



 「(そうだ……死なない為には力が必要だ…。トクサとスオウにはそれがある…)」 


 「……私はリーダーに従うぞ。クレランスのヤローに指図なんかされてたまるかってんだ。嫌がらせみてーなもんだろ、あんなの」



 燻った蟠りに顔を濁らせ、スオウはウスズミの隣に着席する。彼女は、ただ納得のいく回答が欲しかった。ワカバが信用に足る明確な理由があれば、それに準えようとしていた。……だが、そこにあるのは不定形の信憑性だけで、それ以外が何も見えなかった。



 「━━多分、基本設計が同じだけだよ。僕もどうかとは思うけど…似ているだけあって、トクサは彼と何か通じてるものがあるみたいだ」


 「……………」



 一方のウスズミは、憔悴した顔でトクサとワカバの方へと視線を移す。隣に座るスオウも自然と、そちら側に目線が移動する。 目の前の薄柳色と青柳色が混ざり合う会話に、気が付けばスオウも耳をそば立てていた。

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