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道化師は止まらない  作者: しみず みし
6/21

第二話の四

え~、まだヒロインの少女の名前を出してませんが、わざとです。

どこまで表現できてるかは不明ですが、少女の心理内で、助けて貰った二人ではあるがまだ信用がおけない。名を知られた時点で自分の身分(何処の領地の姫かとか)がバレて身代金目当ての誘拐犯に変貌するかも知れない。臣下の者がいたという点で既にある程度の身分の者だと知られていると思うが、今の所変貌する気配はないから悪人ではなさそう。だが、迷子とか訳の分からない言葉を話したり見慣れない服着てたりと、得体が知れない(変人を装った他国の刺客の可能性も考えられる)。でも、話してみると口調はどうあれ、単純に邪気なしで自分を助けたように思える。しかし・・・・という感じで葛藤があり、自分からは名乗れない。ユウとレイも、それとなく少女の心理を察して自分達から名前を聞く事はしない・・・・そんな感じです。

ただ、いつまでもそのままという訳にはいかないので、少女は自分の情報を小出しにしていく・・・・という展開の話になります。


 少女が名乗る時が、ユウとレイをある程度信用したという証左になる感じです。

最寄りの村に着いた途端名前バレするのは分かっているので、村に着く前に名乗らせる予定ですが、今回の話で名乗らせるかは未定です。



 さて、ここでユウとレイ、そして少女が会話を交わしてから、少々時間を飛ばさせて貰う。

飛ばす必要はないと言われればそれまでだが、延々周りに飛び散った遺体の肉片を集めたり(分かりやすい例として、電車の人身事故で飛散した遺体を、職員が一つ一つ丁寧に回収していく感じ)、遺品となる装身具(アクセサリー)や刀剣の類いを遺体から取り外したり、少女が臣下の亡骸に一人一人話しかけるように(ねぎら)いと惜別の言葉をかけていく描写で、気が(うつ)りやすい展開が延々続きそうだからだ。


 実際、ここで筆が一月近く止まってしまったのは、作者以外はどうでも良い話ではある。

そんな訳で、強引ではあるが、時間を少し飛ばした辺りから話を続けさせて貰おうと思う。


 それは時間にして数時間後、だいたい遺体を一カ所に積み上げた辺りで状況に変化が起きた。


 血の臭いで、(けもの)が寄って来たのだ。

一匹二匹という細かい数ではない。一群れ二群れという単位だ。

頭数にすれば、数十匹といった所である。

『げぇぇ・・・・厄介な犬系の獣がいるわ』

レイは、内心ぼやく。


 運の悪い事に、寄って来た動物のうち半数以上がオオカミっぽい犬種の大きめな動物だった。しかも、虎のような猫種の動物もいる。他にも頭数こそ少ないものの、熊までいた。

何故、犬種の獣が不味いのかというと、群れで襲って来るからである。

得てして犬種の獣というのは、獲物を効率的かつ執念深く獲物を狩る傾向がある。

その狩りの仕方は、まず獲物と定めた狩りやすそうに見える目標の相手に攻撃を仕掛ける事から始まる。そこで成功すれば良し、成功しなかった場合は一旦距離を置き、ジワジワと相手に休ませないペースで攻撃を仕掛け消耗していくのを執念深く待ち、疲労困憊した相手の急所を攻めて最終的に獲物を狩るのである。

 狙われた相手は、堪ったものではない。

レイが内心ぼやいてしまったのも、無理からぬ事だった。


「・・・・あれ?ユウ、恐竜っぽいのもいないか?」

「うぇ、ホントだ。小さいけど、恐竜っぽいな」

「あれは、稀に報告に上がってくるドラゴンの亜種の、リザードの(たぐ)いでは無いかの?報告で聞いているのより、体長は小さいようじゃが・・・・」

「普通なら、男の子(ごころ)に狂喜する所なんだろうけど、ちっとも嬉しくないな」

「偶然だな。俺も、レイと一緒の考えだよ・・・・取り敢えず、これ以上増えられても厄介だから、亡骸は荼毘(だび)にふすぞ、いいな?」

ユウは、チラリとだけ少女を見る。


「・・・・・・・・・止むを得まい。獣に屍を食い散らかされて辱められるよりはましだ。やってくれ」

「分かった。レイ、大きめの魔法使うから、魔力を練り溜める間、頼む」

「了解・・・・で、だ、お嬢ちゃん。リザードとかの話は後で聞くとして、何でこんなに肉食獣がケンカせずに仲良く集まってくるんだ?」

「原因から言うと、ここ二、三年ほど飢饉での。猪や鹿なども数が減っていて、人里まで降りて来ておっての。家畜がやられて、近隣の村の者も負傷者もでた。それで村からの陳情で、害となる獣を討伐しようとここまで来た所で、襲撃に遭っての・・・・」

「わざわざお嬢ちゃんが、来る事ないじゃん」

「そうはいかん。食糧の配給、村人の慰問及び士気高揚、その他諸々含めての務めがある。すぐに動けるのが、私しかいなかった」


「そうか。何か、いろいろ大変そうだな・・・・ところで、お嬢ちゃんを襲ってた奴らって、何者なの?」

「分からん。魔法を使っていたから魔族だと思っているが、それにしては傀儡の操作が下手でぎこちなかった。調べようにも、お主達が消し炭にしてしまったし」

「それは、すまんかった。ただ、あの状況は理解してくれとは言わないが、察してくれると助かる」

「お主、人死(ひとじ)にを、間近で見た事が無いのだな?」

「あぁ・・・・」

「ならば、責めはせぬ。代わりに、今のこの状況を何とかして見せよ」

「・・・・・・・・何とかするも何も、迎撃力はユウ頼みだからなぁ。取り敢えず、時間稼ぎにコレ使うか」


 レイはそう言いつつ、マイバッグの中からメッキされた銀のハンディベルを取り出す。

メリケンサックのような持ち手の先に鈴が何個も繋がっていて、手を上下に振るとシャンシャン鳴るアレ(●●)だ。

「お嬢ちゃんは、ハンディベル(そいつ)をシャンシャン鳴らしとけ!」

言いつつレイは笛を口に咥えると、勢いよく息を吹き出す。

が、ユウと少女の耳に、笛特有の音は一切聞こえなかった。

替わりに犬っぽい獣達が、一斉にキャンキャンのたうち始める。


 レイが吹いた笛は、犬笛だった。

犬笛とは、一部で知られている、人の可聴領域外の音を出す笛の事だ。

犬系の動物には聞こえる周波数で思いっ切り発せられた笛の音は、犬っぽい獣達の耳をダイレクトに直撃した。


 次にレイは笛を口に咥えたままマイバッグの中に手を入れると、何かが詰まったビニール袋を取り出す。

中には小さくて黒いモノがびっしり詰まっていた。

レイは素早くビニール袋の口を(ほど)いて中身を無造作に掴むと、撒き散らすように投げ散らかす。

 すると、大小様々な猫っぽい獣が、(しか)めたような顔をして、警戒するようにウロウロしながらも徐々に後方に退いていく。


「・・・・お主、今、一体何をした?」

 鈴をシャンシャン鳴らしながら、少女は不思議そうにレイに聞く。

「猫系の動物は、酸っぱい系の臭いが嫌いだからな・・・・陳皮(ちんぴ)を撒いた」

「チンピ?」

「・・・・この辺に、オレンジとかレモンとかの果実って産出されるか?」

「どっちも大量ではないが、交易で少し南の方から手に入るぞ」

「そうか・・・・陳皮ってのは、オレンジの皮を乾かして細かく砕いたヤツで、調味料とか薬になるヤツだ」

「それが何で、効果があるのだ?」

「オレンジとかの柑橘系の臭いは、酸っぱい系の臭いに分類される。だから主に肉を食ってる猫系の動物は、柑橘系の臭いを肉が腐った時に放つ酸っぱい系の臭いと判断して警戒するんだ」

「そうなのか?妙な事を知っておるものよな」

「覚えておけよ、お嬢ちゃん。知識ってのは、時と場合によって頼りになる武器になる。お嬢ちゃんが鳴らしている鈴の音も、熊の警戒心を促すのに役立つんだ」

「そうか・・・・ただ鳴らしている訳ではなかったのだな」

「そう言う事・・・・熊は体の大きさに反して、元来臆病な性格の獣だからな。こういう知識も役に立つ時があるから、覚えとけ」

「・・・・うむ」


「レイ!準備OKだ!後ろに下がってくれ」

 どうやら魔力を充分に練れたらしいユウから、声が上がる。

「分かった!・・・・お嬢ちゃん、下がるぞ」

「あい分かった」

 ユウの横の辺りまでレイと少女が下がると、ユウはおもむろに片手を兵士の亡骸が集められた方向へ、もう片方を警戒している獣達へと向ける。

「それじゃまず・・・・エクスプロージョン!」

 ユウの言葉と同時に、兵士の亡骸から爆裂的に火柱が沸き起こる。

「続いて、ファイアストーム!」

 次にユウは、獣達の近くの空間に炎の竜巻を作り出す。

半分近くの獣達は、炎に巻き込まれて断末魔の鳴き声を上げながら逃げ惑い息を絶やしていく。


「相変わらず、ブレない威力だな」

「これで、火に弱い獣系は全部逃げ出して・・・・・・・・ないって、どういう事よ?」

「・・・・知らん。予測としては、さっきお嬢ちゃんが言ってたように、飢餓状態が長く続いて恐怖心よりも食欲が勝っているのか、獣の子供が餓死しそうで待ったなしの状態なのかじゃないの?獣が火を恐がらなくなる理由って、自分の子供を守る場合を除いて、それ位しか思い付かないぞ」

「まぁ、レイがそう言うなら、そうなんだろうねぇ。だからって、素直に流れに従う訳にはいかないけど」

「そりゃそうだ。残念ながら仏教の偉い坊さんみたいに、自己犠牲の精神溢れる高尚な聖人じゃない、下衆いスノッブな一般人だからな」

「・・・・お主は自分で言う程に、そこまで下衆いとは思えんのだがな?」

「まぁ、お嬢ちゃんには、えらく買い被られたようだけど、そこまで上等な人間じゃなから、俺は」

「そうかのう?」


「二人共!火の勢いが弱まってきたから、そろそろ来るよ」

「ハイよ。接近されたら、こっちの負けみたいなモンだからな・・・・」

 ユウに答えつつ、レイはその辺に転がっている小石を両手で持てる限り拾い上げる。

「レイ、何で石を・・・・って、(つぶて)にするのか?」

「そう言う事☆強化魔法をかけておけば、獣を撃退するくらいの威力にはなるだろう」

「いや、空気弾の魔法であれだけの威力が上がったから、下手したら拳銃並の威力になるかも知れないぞ」

「まぁ、うまくいけば二二口径よりは威力は出るだろうけど、四四口径の威力にはいかないだろうけどな」

「二人共、ケンジュウとか四四コウケイとは、一体何の事だ?」

「お嬢ちゃん、今は気にしないで良いよ。威力に関しての目安の話だから」

「来るぞ!」


 ユウのかけ声で、レイ達にも緊張が走る。

炎が収まってきた辺りで、熊が一匹突進してきた。

かなり早い。それもそのはず、熊は全力で走ると時速にして四〇㎞近くまで速度を出せるのだ。


だが、ユウの方も心の準備ができていたので、冷静に対応する。

地面槍(グランドランス)!」

ユウは地面に手を付けて魔力を流し込み、熊が走ってくる少し手前の地面を流動化させて先端の鋭い氷柱(つらら)状の土の塊を形成する。

そしてそれを、コンマ数秒で三mくらいの高さなる速度で、急速に氷柱状の土の塊を成長させる。

ゴガアアァァ!

氷柱状の土の塊は、熊の喉元から脳天にかけてと腹部から背中にかけてその体躯を貫いた。


「よしっ!」

「ユウ!犬達が来るよ!」

「猫もじゃ!」

 熊がやられた時が隙ができる瞬間と見定めたのか、今まで警戒していた獣達が一斉に迫ってくる。

「だあぁぁ!フレイムカーテン!」

 慌てるユウは、それでも冷静に魔法を展開し、次々に獣を屠っていく。

「ホイホイホイっと・・・・」

 レイも礫を次々撃ち出し、正確に獣の体躯を貫いて息の根を止めていく。

強化魔法をかけてあるので、ただの礫でも獣の体躯を撃ち抜く位の威力はあった。


「・・・・・・人型じゃなければ、忌避感は出ないな」

ポツリと呟いたレイの声を、ユウは聞き逃さなかった。

「ま、手前勝手だとは思うけど、割り切っていこうぜぇ。リザード(が居る事)で確信したけど、俺らのいた世界じゃないんだからさ」

「まぁ、そうだな。(とし)取ると頭の切り替えがなかなか融通効かないから、すぐには無理だろうけど・・・・」

年齢(ねんれい)、俺と一緒の奴が、何ほざいてんだか」

「いや・・・・体は子供で、心は(じじい)だからな。そんな簡単に割り切れるもんでもないって」

「相変わらずの『俺様ジジイ』発言だな、おい・・・・」

「まぁ、そう言う事だ・・・・んで、犬と猫系の獣は粗方片付いたかな?」

「だいたいね。あと、ドラゴン系というか、リザード系だけ?」

「そうじゃのう・・・・」


ドシンッ!

「ん?」「へ?」「何だ?」

ドシンッ!  ドシンッ!     ドシンッ!ベキベキベキ・・・・ドシンッ!

「何じゃ、今の音は?」

「レイ、凄っげぇ嫌な予感がするんだけど」

「奇遇だな。俺もユウと同じ予感がしている所だ」

ベキベッキッバキバリリイィッ!

 ユウとレイ、そして少女が先ほどから木を踏み倒すような音が響いてくる方向へ視線をやると、少し離れた木立の中から体長が推定十m近くある肉食獣っぽい獣が現れた。


 周りをと襟囲んでいるリザードもどきに何となくの体型は似ているが、前脚は体を支えられる程の力がないと傍目(はため)で分かる程細く、かつ宙に浮いており、その分がっしりと太く強靱な後ろ脚が本体をしっかりと支えている。そして、前に突き出すように伸びる頭部と後ろ脚を支点にするように横方向にまっすぐ伸びた長く太い尻尾。

周りを這うリザード達と同様の全身堅い鱗で覆われたそれは、ユウとレイが知る想像上の恐竜に酷似していた。


「こんな時に、リザードキングかや!」

「お嬢ちゃん、そのまんまのネーミングだけど、アレ(●●)、そういう名前なの?」

「そうじゃ。細かい特徴の違いで別の名前で呼ぶ時もあるが、皆、アレをそう呼んでおる」

「何か、盗まれた秘宝を探しにやって来た、悪魔のような名前の王子が出てくるマンガみたいな名前だこと・・・・」

「そういうマイナーなネタは俺以外分からないから、今は控えとけ」

「前向きに善処します」

「何の話をしておるのじゃ?・・・・この辺りでエサが捕れなくなって、いつの間にか何処かへ移動したと噂で聞いていたのじゃが・・・・今、この場に現れるとはのう」


「つくづく、異世界みたいな展開だな、こりゃ」

「いや、レイ・・・・そうとばかりは言えないぞ。俺らのいた世界でも、モケーレムベンベとかチュパカブラとかいるだろ?」

「それ、違うから。状況証拠だけで、実物確認できてないヤツだから」

「まぁ、細かい事は気にしないように」

「お主ら、異世界とか、モケ?とか、何の話じゃ?」

「お嬢ちゃんは、気にしなくて良いよ・・・・あ、頭低く構えたから、ボチボチ来るよ!」

「了解」「あい分かった」


シャギャアア!

 威嚇の一声を上げて、リザードキングはレイ達に突進してくる。

無論、周りのリザード達も一緒だ。

「グランド(コラム)!」

ユウの魔法で、地面から土の円柱が勢いよく突き出る。

何故、槍や棘ではなく鈍器のような柱にしたかというと、刺突による殺傷力よりも打撃のストッピングパワーによる突進力の相殺を優先させたからだ。

とはいえその威力は凄まじく、小型のリザードはペチャンコに爆ぜ、中型のリザードはバキバキ骨の砕ける音を立てて吐血する程であった。

リザードキングは、まともに頭部に衝撃を受けたようで、立ち止まってフラフラしている。

そしてユウの魔法をかい(くぐ)った残りのリザード達が、次々にレイ達に迫っていく。


「お嬢ちゃん!ホトケさんの持ち物を勝手に使うのは気が引けるけど、剣を何本か借りるぞ!」

「分かった。生き残るのが先じゃからな!」

 少女の答えを聞くや否や、レイは次々と地面に剣を投げ()き、最後の一本を手にすると、間近に迫ってきたリザードの頭部に剣を突き立てつつ剣を地面にめり込ませる。

頭部を貫かれてなおジタバタともがくリザードを放置して、丁度足元の地面に落ちている剣を拾い上げると、振り向きもせずに少女に向かっていたリザードの一匹に投げつける。

リザードの鳴き声で剣が当たった事を確認したレイは、一歩進んで落ちている剣を足で器用に立てると、丁度こっちに飛び上がりかけているリザード目掛けて思いっ切り蹴り飛ばす。

 剣が腹部に突き刺さったリザードは、そのまま後方へと吹き飛ぶ。

無論、身体強化をかけてあるからこそ、一撃でリザードを迎撃できる威力が出せるのだった。


「あの者が剣をバラまいたのは、こういう使い方をするためじゃったのか・・・・」

ポツリと少女が半ば感心して言葉を漏らしている間にも、レイは続々とリザードを屠っていく。

「ユウの魔法で、大半のリザードが吹き飛んだから、残りはデカモノかな?リザードキングって言ったっけ?」

「まぁ、そうなんだけど、一番厄介なんだけどなぁ・・・・」

「耐久力ありそうだもんなぁ」


シャギャアア!

 ようやく正常な状態に戻ったリザードキングは、怒りの咆哮を上げつつユウとレイに向かって走ってくる。

ユウとレイは、迫ってくるリザードキングにゆっくりと立ち向かっていった。




 さて、時間は再び数時間経過した、とっぷり夜も更けた夜道。

満月に近いそれなりに明るい月明かりの中で、道を歩く無言の三人がいた。


 先頭に少女、少し離れた後ろにマイバッグを二つ持ったユウ、わずかに遅れて幾本もの焦げた剣を背負ったレイが続く。

 三人共、一様にぐったりと疲労困憊した顔をしていた。


 結果から先に言うと、リザードキングは倒した。

倒したが、リザードキングの体力、スタミナ、耐久力などを総合した生命力とも言うべきものが非常に高く、倒すまでに長時間かかった。

少なくともレイがしていた腕時計から、四時間は経っていた、

その間、跳んだりはねたり攻撃避けたりと、慌ただしく動き回りながら魔法や剣でチクチクダメージを与えて、ようやく倒したのだ。少し分かりやすい例で言うと、某国民的有名RPGゲームで、レベルはそこそこ高いものの装備が木の棒と木の盾しかなく、メ○とかヒャ○クラスの魔法を連発して中盤のエリアボスを倒すような感じだ。

それくらい、リザードキングは生命力が強かった。

リザードキングが地面に伏して動かなくなるのを確認した時には、とっくに日が落ちていた。

 だがここに留まっていれば、倒した獣の死臭で更に別の獣が寄ってくる可能性が高かったため、ユウとレイと少女は早々にこの場から離れる判断をしたのだ。

 そして今、極限に近い疲労を抱えながら、三人は黙々と夜道を歩いているのだった。

足が鉛のように重く、それこそ引き摺るように黙々と歩いて行く。


「・・・・・・・・この辺りまで来れば、死んだ獣の臭いに引き寄せられた獣が現れる事はないと思う」

 黙々と足を進めていた速度を緩めて、少女が二人に向かって言う。

 その言葉を聞いたユウとレイは、少女と同じように歩く速度を落として軽く息を吐く。

ほんの少しだけ緊張が緩んだようだ。

「・・・・疲れた。今はその一言だけしか、頭に浮かばないな」

「まぁ、レイが一番斬り込んで行ってたからな。体力的にキツいのは、分かっているつもりだ」

「いや、ユウも魔法連発して精神的に疲れているはずだろ。それにお嬢ちゃんも小さい身体して、タフに動き回ってたな」

「私は普段から鍛えておるからじゃ。二人共筋肉があまり付いてないような体型している割に、リザードキングを倒すまで、良く体力が保ったものじゃ。アレを倒すのに、普通は精鋭の二個中隊位の兵士をフル装備させて、罠にかけて動けないようにしてから仕留めるのが定番の狩り方なんじゃが。まさか、私を含めて三人で倒せるとは思わなんだ」


「・・・・できれば、そう言う事は早く言って欲しかった」

「ユウと同感。分かってれば、早々にケツ(まく)って逃げ出したのに・・・・」

「すまん。じゃが、こういう事は、この辺の者なら幼児でも知っておる事じゃったからの。てっきり、知っててなお立ち向かって行きおったと思ったのじゃ」

「そうなの、お嬢ちゃん?」

「そうじゃ」

「・・・・だそうだ、ユウ」

「急に俺に振られてもコメントしようもないけど、まぁ、倒した後だから、全部『後の祭り』って事で・・・・それより、そろそろ何処かで野営か野宿できる場所探さないか?そろそろ限界に近いんだけど」

「そうだな・・・・お嬢ちゃん、どっか適当な所で休めそうな場所ってあるかい?」

「・・・・・・・・この辺はずっと街道が続いているだけだから、道以外、特に何もないぞ」

「取り敢えず、横になるのと焚き火できる場所があればそれでいい。その辺に適当な所、ない?」

「ないかと聞かれれば、その辺の道の脇に要所要所にスペースが空いておるじゃろ。近くの村までまだ距離があるから、荷物の多くて移動速度が遅い行商人などは、その辺で適当に野宿をすると聞いた事がある」

「まぁ、何でもいいや。ユウ、どっか適当なトコ見っかんない?火を起こすのに都合の良さそうな場所、ある?」


「・・・・数十m先の、塚までいかないけどこんもり盛り上がった場所はどう?あつらえたように枯れた丸太が腰掛けみたいになっているし、周りの木の距離も近いから万が一雨が降ってもある程度凌げそうだし・・・・近くに茂みもあるから、お花摘みに行く(●●●●●●)時も距離が開きすぎる事はないでしょ」

「野宿生活経験豊富なユウが言うんなら、間違いないでしょ。んじゃ、あそこで今日は休むか?」

「人をフリーダムな路上生活者みたいな言い方するのもどうかと思うが、言いたい事は分かった。異論はない」

「じゃ、あそこで休むとしましょ。お嬢ちゃんも、それでいいね?」

「うむ。ところで、お花摘みとは何じゃ?この辺に女子(おなご)の喜びそうな花なぞ、あまりないぞ?」

「一部の職業で使われている隠語だよ、お嬢ちゃん。身体から糞尿なんかを排泄する行為を指して言うんだ。特に大きい方はしゃがんでするから、花畑の中でしゃがんでいると、花を摘んでいるように見えるだろ?」

「・・・・あぁ!そうか。気が回らなくてすまぬ・・・・・・正直、リザードキングに受けた怪我は魔法で治して貰ったから何ともないが、疲れだけは如何ともし難い。おかげで頭の回転が遅めなのは、許して貰いたい。早々に横になりたい気分じゃ」


「疲れには、風呂が一番だけどな・・・・今は、そんな贅沢はできないけどな」

「ん?風呂とは、大浴場の事か?浴槽にお湯を張って、汚れと身体の凝りをほぐす・・・・」

「お嬢ちゃん、知っているのか?」

「我が父が、父の昔からの知己の者に、数年前に作らせた施設じゃ。湯を沸かすのに結構な薪を使うでの、さすがに毎日という訳にはいかぬが、数日に一回は領民に開放しておる。私も大好きじゃ」

「・・・・お嬢ちゃん」

「何じゃ?急に真剣な顔付きになりおって?」

「物凄く重要な事だから、単刀直入に聞くぞ?」

「う・・・・うむ」

「その浴場は、混浴か?」

「そんな訳なかろう。夏は仕切りを通して男女別々にしておるし、浴場に回す薪の量が減る冬は時間帯を決めて別浴にしておるわ」


「・・・・・・・・そ、そうか」

「何じゃ、お主のその、物凄くガックリしたような気の抜けた答えと態度は?神の教えにも『愛し合う者同士を除き、みだりに異性に裸を晒すべからず』と経典に書かれておろう。お主、何を考えておるのじゃ」

「・・・・憎い。その経典が憎い」

「お主、血の涙を流しかねない勢いで、呪詛(じゅそ)のような言葉を吐くでないわ。そのような破廉恥な考えは、あまり感心できぬな」


「ハイハイ、二人共、その辺の話はそろそろ仕舞いにしてくれ。あとレイ、誤解を招きかねないから、そのテの下ネタ系の冗談は相手をよく知ってからするようにしろよ」

「・・・・へいへい」

「何じゃ?冗談だというのか?」

「そうだよ。口では散々禁止用語やら卑猥な言葉をダダ漏れさせたりする時もあるけども、典型的な『言うだけ番長』タイプだからな。相手が許可しない限り、行動には移さないよ」

「相手が許可すれば、するのか?」

「そりゃあ、『据え膳食わぬは恥』だからな。キッチリかっちり余す事なく、ありがたく頂きます☆」

「本人は、こんな感じで言ってるけどな。ただ、俺の知る限りで、そんな場面を見た事がない」

「た、たまたまだって・・・・機会さえあれば・・・・・・」

「なるほど・・・・あい分かった」

 そんな会話を交わしている間に、三人は休憩場所にと目星をつけた場所に辿り着いた。


「・・・・レイ、焚き火をした跡があるって事は、以前にもここで野営をした人達がいるって事か?」

「そうだろうなぁ・・・・そう考えると、転がってる丸太もイスや枕代わりになる大きさって思えてくるな・・・・そうだ、お嬢ちゃん。申し訳ないけど、その辺の茂みとか人目に触れなさそうな場所で糞尿っぽい臭いがする場所がないか調べてきてくれない?お花摘みに行ったらウンチを踏んじゃったって事態だけは避けたいんでね」

「分かった。ここの周り数十mの範囲で構わぬな?」

「それで充分。ついでに枯れ枝も持てる限り集めて来てくれると助かる」

「人使いが荒いのぅ・・・・まぁ、二人共頑張って私を救ってくれたり、リザードキングや獣を追い払ってくれたからの。それ位は、引き受けよう」

「お願いしたよ、お嬢ちゃん」

少女はレイの言葉を受け流しつつ、茂みの中へと進んでいった。


 少女が去った後、残ったのはユウとレイの二人だけだった。

「・・・・ところでユウ、残りの魔力だけど、三人分のクリーニング魔法と水を六、七(リットル)程度出して肉食獣向けの『結界』を張る分の魔力を引くと、ハイカロリーバーナー程度の火力をどれ位維持できる?」

「水の使用内訳は?」

「飲料水用に一人頭一ℓ半、晩飯はレトルトで済ませれば、調理用の水は二ℓでなんとかなるだろう。そうすりゃ六、七ℓ程度で済むはずだ。調理後の水も、冷ました後でパウチ袋と御飯容器を洗ってマイバッグの中に入れれば、何も後腐れないだろ?」

「俺とレイだけだったら別にそれで構わないけど、今はそういう状況じゃないだろ」


「まぁ、あのお嬢ちゃんなら大丈夫だろ」

「そう思う根拠は?」

「交渉次第だけど、俺らは一応、お嬢ちゃんの命の恩人だからな。恩人の追加の頼み事位は応える度量はあるだろう?」

「それが、レイの見立てか?」

「まぁな。それがダメなら、晩飯っていうエサで釣ってみるさ」

「分かった。その辺は、レイに任せる・・・・で、さっきの質問の答えだけど、ハイカロリーバーナーの程度ってどれ位の想定だよ」

「大雑把に、中華料理店位のやつ」

「結構、強力じゃないか?」

「チンタラ沸かして、水を無駄に蒸発させたくないからな。それに、少しでも早く飯にありつきたいし・・・・」

「分かった・・・・・・今の疲れ方からすると、大体二、三十分位なら火を出し続けられそうだ。後は、数時間位休憩貰えれば、結構回復すると思うけど」

「メシ食うだけなら、それで充分。後は結界が()てば、火の番しなくても一晩ぐっすり寝れるだろ?」


「まぁな・・・・で、レイはさっきから、何、自分のマイバッグの中をあさってんだよ?」

「いやぁ、どっかに入れておいたはずなんだけど・・・・・・あぁ、あったあった。コレ探してたんだけどね」

「何だよその、B四サイズ位のスケッチブックは?」

「いや、スケッチブック(スケブ)じゃなくて・・・・説明が面倒くさいから、そう言う事にしとこか。これで今から、紙鍋を作る」

「紙鍋って・・・・あの、お高価(たか)い会席料理なんかで時々出てくるヤツか?」

「そうだよ。紙を何枚か、こう組み合わせて・・・・・・こんな感じで折っていくと・・・・」

「器用だな、レイは。だんだん鍋みたいな形になってきてるわ」

「よく言うだろ?『芸は身をタ○クフォースハリアー』って」

「言わねぇよ!誰が、そんな昔のマイナーなゲームのネタが分かるんだよ!」

「今、ツッコんでる人☆」

「お~ま~え~な~ぁ~」


 ユウとレイがそんな会話を交わしている時、近くの茂みからガサガサと音がして、少女がひょっこり顔を出してきた。

「どうした?何か大きな声が聞こえたから、駆けつけてみたのじゃが?」

「おぉ、丁度良い所に帰ってきたな、お嬢ちゃん。それで、どうだった?」

「周囲の茂みからは、特に糞尿っぽい臭いのする所はなかったぞ。ただ、もう少し先の木に熊の爪痕(つめあと)とか、根元にリザードの糞とかがあったぞ」

「なるほど。本来ならこの辺りは、獣が多くて野宿するにはあまり向かない場所って事だったんだな」

「まぁ、それ以外の獣も、襲って来たから狩っちゃったしな」

「そう言う事。後は、(ひる)とか虫系に注意ってトコかな?」

「虫?何で、虫を気にする必要があるのじゃ?」

「ムカデ、ヤスデ、蠅、時期じゃないけど蚊なんかは、病原菌の媒介役になりやすいんで、下手に感染したら、場合によっては死ぬぞ」

「ビョウゲンキンとかバイカイの意味がよく分からぬが、それもお主の言う知識の一つか?」

「そうだよ、お嬢ちゃん・・・・あと、お嬢ちゃんに改めて確認しておきたい事があるんだけど、良いか?」


「何じゃ?」

「お嬢ちゃんにとって、俺達は一応、命の恩人って事になるんだよな?」

「?・・・・どのような意図があるかは知らぬが、私にできうる限りの恩は返させて貰うと、前に言ったぞ。私の名誉にかけて誓っても良い」

「結構・・・・それじゃ今、追加で恩を返させて貰うぞ」

「えらく急な話だな?今、手持ちがないから、大した恩賞を与える事はできぬぞ」

「今じゃなきゃ、ダメな案件だ。これからお嬢ちゃんが見る事、聞く事、食べる事、一切に関して他言無用だ。決して他人に話をしてはいけない。いいか?」


「・・・・・・・・何故じゃ?」

「そういった質問も含めて、全て他人に話す事も質問もしないでくれ」

「急に真面目な顔して、本気で言っているという意志は理解したが、だからと言って『はい、そうですか』とは言えぬな。無条件でそう言う事をいう事例は、殆ど例外なく、それが為にこちらが一方的に不利益を被る場合が多かったのでな。いくら恩人の願いとはいえ、無条件では言う事を聞きかねる」

「・・・・もしかして、結構世知辛い経験を積んでる?」

「事の大小はあるが、私も父も叔父も苦汁を嘗めた事は一度ではない。それでも領民が付いてきてくれたが故に、大事(だいじ)には至らなかったが・・・・」

「・・・・・・今晩の晩飯にありつけなくなっても、自分の意志は替わらないか?」

「うむ。何も知らされないで約束させられること程、油断のならないモノはないと身に染みておるからな」

「お嬢ちゃん、結構頑固だな?」

「私一人でどうにかなると分かっているなら即断で約束もできようが、その保証がない限りはできぬと言うておる」

「そんな、お堅い事ではないんだがなぁ」


「あぁ、ちょっといいか?」

 レイと少女の会話に、軽く手を上げてユウが会話に入ってくる。

ユウは、少女に視線を送った。

「二人で話を続けても平行線を辿りそうだから、俺から提案させて貰う。まず、自分以外に影響がないと分かれば、約束はできる訳だな?」

「うむ、無論じゃ」

「それが口頭だけになるが、さっき言った自分の名誉ってヤツに誓えば、保証代わりになるか?」

「・・・・自分の名誉に、責任と尊厳があると自覚のある者の言うことであれば」

「なら簡単だ。一応、俺達にも少ないながら名誉とか矜恃(きょうじ)ってモンがあるからな。俺は誓えるが、レイは?」

「今回の案件に関しては、確実に誓えるな」


「OK。それとレイ、一切の質問禁止ってのは、子供にゃ酷だ。条件を緩くしてやったら?」

「そうは言うけどなぁ・・・・・・・・・・まぁ、先人の説話のように厄災(パンドラ)の箱を開けるような、過ぎる好奇心で取り返しの付かない真似をされても困るからな・・・・俺達二人以外がいる所で無闇に質問しないって事と、同じ質問を繰り返し聞いてもいいけど、俺達が良しと判断できるまで質問には答えないってのを認めるって事かな?」

「それは、その時質問に答えなくても、お主らが判断したら、ちゃんと答えてくれるという認識で構わぬのか?」

「まぁ、そうなるな。それと、答えないからって斬首刑とか串刺しの刑で殺されるってのも勘弁して欲しいな、お嬢ちゃん」

「ならば、私の方は構わぬぞ。私自身の範囲でできる約束なら、この場で守ると誓おう」

「それじゃ双方、それでOKって事でいいな?」

「うむ」「アイよ」

ユウの問いかけに、少女とレイは同時に返答する。


「じゃぁ早速、レイは夕飯の準備を頼む」

「OK。じゃぁ、紙鍋作りから再開するわ・・・・っかしユウって、揉め事まとめる方にもってくのうまいなぁ。相変わらず・・・・」

「あっちこっちで旅してると、揉め事なんて日常茶飯事だからな。好きで身に付けたスキルじゃないよ」

「そうか・・・・」

「・・・・・・・・お主達に早速で悪いが、質問があるのだが、良いか?」

「俺達二人の時は別に良いよ、お嬢ちゃん」

「質問は、二つじゃ。まず、その紙で作っているのは、カミナベというやつか?カミナベとは、何じゃ?」

「紙で作る鍋の事だ、お嬢ちゃん。紙の種類にもよるけど料理に使う場合、煮る時に食べ物から出る不必要な灰汁(あく)を吸い取ったりと、なかなか便利に使える。今回は、お湯を沸かすだけだけどな」

「火で(あぶ)って、燃えたりはせぬのか?」

「・・・・紙がどんなもんだか、知ってるのか、お嬢ちゃん?」

「うむ、領内で作っておるわ。じゃから、火で炙ったら紙は燃える事くらい知っておるわ」

「そうか・・・・それじゃ、紙がなんで燃えるのか知ってるか?」

「燃える物だからであろう?」

「いや、燃える原理・・・・と言うか、理屈だ」

「そんなものがあるのか?」

「・・・・OK、分かった。それじゃ今回は、どうなるかだけ答える。紙鍋は水を張ってやれば、水が少なくなるまで燃えないでいる。見てれば分かる」

「そうか・・・・あと一つ良いか?」

「何だ?」

「了承とか承認のような、肯定の意味合いがあると推測できるのじゃが、オーケーって何じゃ?」

「・・・・あぁ、そうか、うっかりしてたな・・・・お嬢ちゃんの言うようにOKってのは、お嬢ちゃんの推測で合ってるぞ。語源というか俗説として、だいと・・・・お嬢ちゃんに合わせて言えば大国の領主とか国王みたいな人で、昔、字が物凄く汚い人がいてな。その人が書類に自分が書いたサインを他人が見ると、『(オー)』と『(ケー)』の文字しか読み取れなくてな。面倒なんで、OKってのが了承とか承認の意味で通じるようになった訳だ。俺らが住んでたトコでは・・・・」

「そうなのか?」

「あぁ、ちなみにOKのハンドサインは、親指と人差し指で(まる)の形を作ったヤツだ」

「こうか?」

少女は左手でOKのハンドサインを形作る。

「そうそう、そんな感じ☆ちなみにそのサインを、こんな感じの角度で相手に見えるようにした場合、『明るい家ぞズパア~~~~~~ンッ!

言いかけていたレイの顔面に、電光石火の早さで取り出した投擲(とうてき)用の投げハリセン(威力を増す為、薄い鉄板入り)を叩き込むユウ。

ほんの少しだけ、目が本気だった。


「いきなり痛いよ!ユウ」

「やかましい。婦女子相手に下ネタを振るな!せめて、悪の秘密結社ブ○ックハンド位のネタにしておけっての!」

「何じゃ?ブラック○ンドというのは?」

「気にしなくていい!ココ(●●)では、俺とレイしか知らないような事だから。全く・・・・まともに知識を教えてるかと油断したら、すぐに下ネタに走りたがる。少し位は、自重しとけよ」

「いいやん。どんなに自重しなくても後世には影響がないみたいだから・・・・」

「何でそんな事が分かるんだ、レイ?」

「それはな・・・・・・・・ヒ・ミ・ツ☆」

スパアァンッ!

今度の投げハリセン(全部紙製)の音は、前回より軽い音がした。

「同じ場所にツッコミ入れないでくれよ」

「やかましい。教える気、ないのかよ!」

「無い訳じゃないけど・・・・ココ(●●)来る途中で、人から聞いた」

「また訳分かんない厨二病的な事言って、はぐらかすなって」

「別に、はぐらかしてる訳じゃないんだけどな」

言いつつ、レイはユウに視線を向ける。


 少しの間、二人は無言で見つめ合っていた。

「・・・・・・・・まぁ、いい。だがレイ、万が一って事もあるだろう!できるだけ慎重に判断すべきだっての」

「なるべく前向きに検討しつつ、善処します」

「何処ぞの政治家みたいな事言うなって!・・・・それよか、紙鍋は?」

「お主達、私には分からなかったが、今のやり取りで話が通じ合ったのかの?」

「まぁ、以心伝心ってやつかな。そう言う事より、食欲を満たす方が先って感じだよ、お嬢ちゃん」

クゥ~~~~・・・・・・・・

 実にタイミングが良い事に、少女のお腹から可愛らしい音が三人の耳に入ってくる。

「いや、その・・・・」

顔を赤らめる少女を、慈愛がこもった生暖かい視線を送り始めたレイが言い聞かせるように話し始める。

「無理はしないでいいって、お嬢ちゃん。取り敢えず両手に抱えた木の枝と一緒に、ユウにこの紙鍋を渡してくれ」

少女の持つ木の枝の束の上に、ポンと言う感じでレイは紙鍋を少女に渡す。

「う、うむ・・・・」

まだ顔がほんの少し赤い少女は気恥ずかしさを覚えつつ、ユウの側に移動する。

「この辺に置けば良いのか?」

「あぁ、そこでOKだ。紙鍋だけは、こっちに頂戴」

 少女の問いに、魔法で石を接着して積み上げた背の高い三脚(注:理科の実験などで金網を挟んでフラスコなどを乗せる、あの金属製の台)っぽいオブジェを作っていたユウが答える。


「あれ?レイ、この紙鍋に使っている紙って・・・・もしかして、Moe(モエ)用の紙?」

「そうだよ」

「うわっ!結構、値段が高い紙じゃん。もったいないなぁ」

「しょうがないじゃん。今持ってる紙が、それしか無いんだもん」

「まぁ、そうなんだろうけど・・・・一枚で定食一回分位の値段するじゃん。ってか、レイってMoe使(モエし)目指してたっけ?」

「いんや。ただ、少しばかり絵心があったし、絵が上手く描き込めた時に具現化するのが面白くってね・・・・それにMoe使やる程、経済力ないし。自分の隠れた趣味の一つだよ」

「そうかぁ、確かに今まで、絵を俺に見せてくれた事なかったしな。身体強化系の魔法以外が苦手だって言ってるレイには、適切な選択だとは思ったんだけど?」

「実際に使う『空の断片(フラグメント)』の値段が高過ぎるでしょうに。一介の学生には、無理だって」

「まぁ、そうかも知んないけど・・・・」

「それよか早く飯食おうぜ、ユウ。さっさと、お湯沸かしてよ」

「ハイよ。了解」


 ユウは紙鍋を三脚の上に乗せると、両方の人差し指を紙鍋に向ける。

「・・・・ミズゲイ」

ユウが言葉を唱えると同時に人差し指から水が流れ出て、紙鍋に水がみるみる溜まっていく。

「・・・・・・・・こんなもんか。んじゃ、次」

紙鍋の七割程度の高さまで水を注ぎ入れたユウは、次に木の枝の束を自分の横に引き寄せる。

「スライス」

木の枝の束にチョップするような形でユウはザクザクと木の枝の束を切り出して、三脚の下に詰めていく。

「・・・・イグニッション」

パチンと指を弾いて魔法で木の枝に着火させ、

「ブリーズ」

火の左右から適当な風を流し込み、火力を上げて、水を沸かしていくユウ。

「あ、そうだ。手が空いてるなら、木の枝を火の中に入れていってくれないか?俺の手は今、両方共風を送るので塞がっているから、薪代わりの枝を火に入れるヤツがいないと困る」

「う、うむ。分かった。それ位なら、私にも手伝えるな」

答えつつ、少女はユウの側へと近付いて行った。




 ちなみに先ほどユウとレイが言っていたMoe使のMoeというのは、マスター・オブ・エレメントの略だ。

 レイが転生する直接のきっかけになった『空』が割れた件だが、思わぬ副産物を残した。

『空の欠片』とか『空の断片』とか、単純にピースとかフラグメントと呼ばれたりする破片・・・見付かる物の半分以上はカードのような形をした物体には、特有の機能があった。

簡単に言うと、大気中に存在するとされるエレメント(今の所、存在は知られているものの、まだ視認による確認がされていない)と呼ばれる元素を集め、人の思念や思考などを具現化する触媒としての機能だ。

 だがその機能も、誰もが簡単にできるかというと、そうでもない。

頭の中で克明に一定以上のレベルで具現化したモノを、これまた一定以上の精神的な情念の強さ(熱量とも熱情とも、一部で妄想力とも表現される)で描いてフラグメントに注ぐのだが、この一定レベル以上という代物がなかなか厄介だったりする。

 その辺の説明をすると長くなるので今回は割愛するが、情念の強さを一定レベル以上に引き上げる鍛練法の一つとして、絵画を描く方法がある。

経験則から導入された鍛練法らしいが、これがそれなりに()(かな)っており、紙などの対象がある為情念なりの感情を投影しやすく、頭で思い描いたモノを手で再現して眼で頭の中のモノとの誤差をチェックするという、一挙三両得いっきょさんりょうとくな鍛練法だったりする。

その為、Moe使は個人差はあるものの、絵心や絵描きの技能を持っている者が多い。またこの技能を極めていけば、自他を選ばず風や炎、電撃などの魔法の強化や手足への装備、気の放出(例:波○拳、カ○ハメ波)や身体を回転させて竜巻を作り出す事や、半径数十mから数百mに及ぶ空間の支配といった演出効果の類いまでできるようになるという。

それらまでできるようになった者を、人によってはMoe使と分けてMoeE使(モエエし)(最後のEは、エフェクトのEらしい)とも呼ぶという話だ。


 だが、ユウとレイがいた時空間ではフラグメントはあまり産出されず、Moe使で身を立てている者はそれほどいない。ユウとレイがいた時空間ではフラグメント一つで安い中古車を買える位の金額がかかるので、Moe使になるまでが大変なのだ。

そしてMoe使になるまでの鍛練用として『練習帳』が開発されるのだが、フラグメントを具現化させる時よりも遙かに低い練度と情念の強さで特殊加工された『練習帳』の紙の上に浮かび上がらせる事ができる機能が世にウケて、少々高価(たか)くはあるが『練習帳』での絵画は、趣味の一つとして定着するまで普及していた。

レイが持っていたMoe用の紙というのも、この紙の事を指している。




「・・・・・・・・レイ。ボチボチ沸騰するぞ~」

 網鍋の中に入れた水がクツクツと泡立ち始めたところで、ユウはレイに呼びかける。

「あいよ」

 焚き火を挟んでユウの反対側に座っていたレイは、マイバッグに手を入れた。

「・・・・さ・て・と、まずはコレだ」

 そう言って、レイが取り出した物。

それは四角っぽい楕円形をした白いパックが三つ・・・・御飯のレトルトパックだった。

 それをおもむろに紙鍋の中に、重ねて入れる。

「ホンで、次はコレだ」

次にレイが投入したのは、細かく文字や模様が入った銀色のパック・・・・カレーのレトルトパックだ。

それを三つ重ねて、紙鍋の中に沈める。


「これで良し。後は煮えるまで我慢だな」

「・・・・のう?聞いても良いか?」

「何だい、お嬢ちゃん?」

「これで、終わりか?」

「そうだよ。(あった)まったら、銀の袋の中身を白いのにかけて(スプーン)で食べるだけだ」

「凄く簡単じゃのう」

「そらぁな。簡単、便利、手軽、安価、それらと比較して反比例するような旨さを求めていくと、こういう料理になる」

「そうか・・・・で、この白いのと、銀色のは何じゃ?」

「『何じゃ?』と言われても、具体的にどの辺が疑問なんだ?それが分からんと答えられんよ」

「この二種類は、食べ物か?共にお湯の中に溶け出す気配もないが、スープを作るのではないのか?」

「食べ物ではあるが・・・・お嬢ちゃん、パイ皮包み焼きって料理の技法を知っているか?」

「無論じゃ。食べ物をパイ皮で包んで焼き上げる料理じゃろ?結構手間がかかるから、あまり食べる機会はないが・・・・」

「イメージとしては、そんなモンだ。食べられない皮で包んだ食べ物を、煮る事で暖めている最中だ。この包みは食べられないけど、非常に優秀でな。蓋を開けなきゃ、何ヶ月も中の食べ物は腐らないようになっている」

「塩漬けみたいなものか?」

「いんや。味付け程度に塩は入っているが、これは、中身がそのまま食べられる状態で保存できるようになっているモノだ」

「なんじゃと!塩も使わず、食べ物を何ヶ月も腐らせずにおく事ができるじゃと?誠か?そんな事ができるのか?」

「技術力とノウハウと資本力があって、やり方が分かっていれば大量生産も可能だ」

「ホントか?私にもできる事か?」

「技術力とノウハウと資本力があればって、前提条件を付けたよな?なければ無理だ」

「そ・・・・そうか」

「ガックリしても仕方ないだろ・・・・まぁ、これと似たような原理の物なら、瓶詰めとかはこっちにもあるだろ?」

「あるにはあるが、そこまで長期間保存できぬ」

「長期間保存しようと思ったら、もっと技術と衛生環境が整わないと難しいからな・・・・数週間程度保たせるだけの技法なら結構簡単にできるから、暇があったら教えてやろうか?」

「ホントじゃな?」

「まぁ、中身はジャムとかソースに限定させて貰うがな」

「その原理を教えて貰えば、食べ物に応用できる訳じゃな?」

「一足飛びには無理だぞ。原理を理解して、それを再現できるノウハウがなければ、似たような事をしても中身を腐らせるだけだぞ。えらく話に食いついているが、何故だ?」

「決まっておる。何ヶ月も腐らせずに保存できるのであれば、大量に備蓄しておいて飢饉の時に放出すれば、飢餓の被害も軽減できよう」

「そっちかよ。てっきり、金儲けの算段でもするのかと思ってた・・・・真面目だな」

「ここ数年の食糧事情は、備蓄を切り崩しながら凌いでいる状況じゃからな。特に冬場がきつい。少しでもそれが解消できれば・・・・」


「ふ~ん・・・・まぁ、一つ二つならロハ(タダで)で教えるけど、それ以上なら報酬は頂戴ね」

「レイ、お前、いきなり何言って・・・・」

「ユウ、俺達は迷子(●●)だ。いつ帰れるかも知れない。それは分かってるよな?」

「まぁな」

「この辺りのお金も持ってない一文無し。手持ちの荷物の中で、食料は明日明後日にはなくなるし、売れるモンがある訳でも無い。元の場所に戻れる当てもないとなれば、少しでも報酬が得られそうなモンには対価を要求していくべきだ」

「・・・・・・・・もしかして、今話しながら思いついた?」

「まぁね。お嬢ちゃんの表情から、俺達の知識は金になるんじゃないかと思い当たった訳だ」

「わ、私のせいと言うのか?」

「当たらずとも遠からずってトコかな?何せ一文無しの男二人なんでね。自活する手段を講じていかないと、遠くないうちに野垂れ死ねぬのが確定事項だからな。で、お嬢ちゃんの表情と食い付きっぷり見てたら、俺達の知識に報酬を付けてくれるんじゃないかと思った訳だ」

「・・・・・・・・仮に、ダメじゃと言ったら?」

「どうもしないよ。約束した知識だけ教えたらお嬢ちゃんと別れて、日々の生活の糧を求めて仕事なり狩りするなりするさ」

「・・・・・・・・あい分かった。私の一存では決められぬが、口利き程度の事はしてやれる。教えて貰う事が多かったら、私の自由にできるお金とそれで良いか?」

「あと、さっき言った条件を守ってくれるんなら、充分だ」

「存外欲のない要求じゃの」

「まぁね。基本、子供ってのは教育なり愛情なりを与えるもので、見返りを求めるもんじゃないってのが、俺の信条だからな」

「ほほぅ?」

「だが、俺達も生きていく上で何かしらの収入というのが必要なんでな。心苦しくならない程度に信条を曲げさせて貰う」

「そうか」

そう言う少女の顔は安心したような目と少しばかり上がった口角のせいか、今までよりも柔らかい印象を与えるにこやかな表情だった。


「・・・・取り敢えずレイ、そろそろ煮えてきたぞ」

「了解。取り出すぞ」

 レイは丁度良い長さの木の枝を二本、両手で持って器用に紙鍋の中に入っている物に引っ掛けながら、慎重に取り出していく。

「・・・・まずは、一つ目」

紙鍋から取り出した御飯のレトルトパックを、ユウが両手で差し出しているバンダナの上に置く。バンダナは、少女を助けた時に口を隠していたモノだ。

レイはそのまま二つ目を差し出されたタオル、三つめ手ぬぐいに取り出していく。

「最後に、コレだ」

 レイは銀のレトルトパックを木の枝でうまく立てると、端を手で掴み無造作に引っ張り上げる。

そして焚き火を回り込んでユウと少女の間の位置まで移動すると、先ほど取り出した御飯の横にそれぞれ置いていく。


「お嬢ちゃん、モノは一緒だけど、好きなヤツを選びな」

レイは少女にそう言って、好きな組み合わせを選ばせようとする。

「中身も分からぬまま、選ばせる気か?」

「うん☆」

にこやかな表情のレイに(いぶか)しみつつも、少女から見て右側にある御飯とカレーの組み合わせを選択する。

「お嬢ちゃんは、それにするのな?んじゃ次、どれにする?」

レイが少女の前に突き出したのは、三本のスプーンだった。

そのスプーンは白いプラスチック製で、全く一緒の外見をしていた。

 少女は今度は、向かって左側を選択する。

「んで、食べ方なんだけど、ユウのを見て真似してくれ」

自分の分のカレーと御飯のパックを手にして、元々自分が座っていた位置に戻りながらレイが少女に言う。


 少女がユウの法に視線を動かすと、ユウは御飯のレトルトパックに手をかける所だった。

ユウは、ビィィッとフィルムの蓋をはがす。

おもむろにスプーンで御飯の半分弱の辺りにラインを入れるようにスプーンを割り入れ、次に容器に沿うようにスプーンを割り入れていく。

そして容器側から底の方にスプーンをある程度差し入れると、『よいしょ!』という感じでスプーンを割り入れなかった側の御飯の上に乗せる。

 御飯のレトルトパックの中に、半分弱程の空間が作られた。

ユウは御飯を一旦地面に置いて、次にカレーの袋に手を伸ばす。

ピッという手慣れた感じで封を切ったユウは、御飯のレトルトパックに空けた空間へ、カレーの中身を絞り出す。

タパタタパパパ・・・・・

「う~ん、見た目はちょっと、今一(いまいち)じゃのう」

 一連のユウの動きを見ていた少女は、素直な感想を漏らす。


「何ぞ、昔食べたカリーっぽいが、匂いはそこまで薬っぽくないし、穏やかだの。この位の匂いだったら、おいしそうに感じるの」

「お嬢ちゃん、カレーを知っているのか?」

「前に言った父上の知己に、『試作品だ』と言っておったが、それを貰った事がある。コレよりももっと黄色い色で薬臭くてサラサラしていたがの・・・・何でも、文献を見ながらいろいろな薬草とか香草を混ぜて作ったと言っておったわ」

「聞いた限りじゃ、カレーそのものだな」

「では、コレはカリーなのか?」

「厳密には、カレーライスだがな」

「そうか。似たような言葉よのう。だとすると、味の方は・・・・」

「いや、お嬢ちゃんの言うカレーとは、味は別物に近いと思う。いいから、食べてみな」

「とは言うがのぅ・・・・ライスの少しばかりの硫化硫黄臭を、穏やかに抑えられてるスパイスの香りで食べやすくしているとはいえ、以前食べた味を知っているとのぅ・・・・取り敢えずは今日の御飯が食べられる事を神に感謝して、いただきます(ぱくっ)辛い!やはり辛いの・・・・・・・・辛いのじゃが、以前食べたカレーよりは、ライスの味で緩和される分マイルドじゃな・・・・・・辛い事には変わりないよう・・・・・・・・む?何じゃ、口に残るこの美味しさは?」

 少女の反応を見て、にやっとした表情を浮かべるレイ。『してやったり』感がありありと浮かぶにやけ顔だった。


「お嬢ちゃん、もしかしてその文献ってのは、途中のページが抜けてなかったか?」

「何故、(ぱく)分かるのじゃ(ぱく)?」

「話を聞いた限りとお嬢ちゃんの反応を見る限りじゃ、以前食べたっていうカレーには、二つ程欠けている要素が想像できたんでな」

「聞いただけで、(ぱく)そこまで(ぱく)分かるものなのか(ぱく)?」

「想像通りであればね・・・・小麦粉のとろみと、バターなんかの油脂の要素が欠けている。この二つはあまり重要な存在ではないと思われがちだが、そのままだと強すぎるスパイスの刺激を抑えたり味のコクを出したりと、地味に重要な役割を果たすんだ」

「そ、そうなのか(ぱくぱく)?」

自分の家(じぶんち)に帰ったら試してみな。今食べてるカレーの味に近付くはずだ。ただし、入れる量の限度は(わきま)えろよ。やり過ぎると、カレー風味の油にしかならないからな」

「うむ、分かった!(ぱく)・・・・しかし、(ぱく)美味しいの(ぱく)。辛いが、これなら(ぱく)子供達も喜びそうじゃ(ぱく)」

「喜んでくれて何よりだ」

「(ぱく)うむ、これなら、いくらでも(ぱく)食べられそうじゃ(ぱく)。辛さも(ぱく)、このライスがうまい具合に(ぱく)緩和してくれておるし(ぱく)、病みつきになりそうじゃ」

「そうか、なら特別だ。お嬢ちゃん、ちょっとこっちにカレーを出して」

「何じゃ?」

 レイの言葉に若干の訝しさとは違う違和感を覚えた少女だったが、食欲には(あらが)えず素直にレイの前にカレーライスの容器を出す。


 レイはおもむろにマイバッグの中から瓶を取り出すと、蓋を開けてスプーンで中身を掬いだして少女の手にした容器の片隅に盛り付ける。

「この茶色くて細かくなっているモノは何じゃ?」

「まぁ、箸休めがてらチョイチョイ囓りながらカレーを食べてみな」

「うむ(ぱく)。あ、甘塩(あまじょ)っぱい味付けじゃのぅ。では、改めてカレーを(ぱく)・・・・で、この茶色いのを(ぱく)・・・・ん!何じゃ!さっきより、更に美味しく感じる!(ぱく)これは(ぱく)一体、(ぱく)どういう(ぱく)訳じゃ(ぱく)?」

「この茶色いのは福神漬けと言って、元は御飯のお伴だったが、カレーライスと巡り会う事でらっきょうの甘酢漬けと共にベストパートナーとなった漬け物だ」

「フクジンヅケ(ぱく)と言うのか?(ぱく)これは・・・・(ぱく)匙が止まらぬ(ぱく)美味しさじゃのぅ(ぱく)。おぅ!いつの間にか、全部食べてしもうた」

「お嬢ちゃん、まだ食べられるか?」

「うむ、無論じゃ・・・・しかし、ただ温めるだけなのにここまで美味しいとは、一体どうやって作るのじゃ?」

「悪いが、それには答えられないな。ただ、温めればいい状態まで他の人が作ってくれているんだ・・・・ホレ、これやるから、たんと食べな」

「それは嬉しいのだが、お主、このカレーに全く手を付けておらぬではないか?さすがに丸ごと全部は気が引ける」

「今は、食欲ないだけだから気にするな」

「いや、しかし・・・・・・」


「ちょっといいか?」

 今まで黙々と食べていたユウが、レイと少女の間に回り込んでくると、レイの持つカレーライスの容器をスッと取り上げる。

そしてレイの持っていたスプーンで器用に四分の三程度の大きさに御飯を切り分けて少女の容器に移し、カレーも四分の三程の量を少女の容器の方に移し替える。

無論、その際に隅っこに福神漬けを盛って置いたのは言うまでもない。

「コレでいいだろう?遠慮せずに食べなよ」

「う、うむ」

「それとレイ、食欲がないのは分かるが、少しでも食べておかないと後々(のちのち)影響が出るから、これ位は食べておけ」

「う・・・・分かった」

ちまちまと食べ始めるレイと、再び美味しそうにカレーを頬張る少女の姿を見て一人納得した表情のユウは、自分の席に座り直して食事を再開した。

「(ぱく)・・・・(ぱく)しかし、何というか(ぱく)、何故食欲がないのじゃ?(ぱく)」

「・・・・・・・・・・・・(ぱく)」

「あ~~~、その辺の事については、レイにあまり深く聞いてくれるな。頼むから」

「と言う事は(ぱく)、お主は(ぱく)分かっているのか?」

「おおよその推測だけどね。ただ、こればっかりは本人の気の持ちようの部分だから、俺らがどうこうできるようなモンでもない」

「よくは分からぬが(ぱく)・・・・お主の方は、何ともないようじゃのぅ?」

「俺の方は、レイと出会う前に親と一緒にあっちこっち飛び回ってたからな。その中には餓死したミイラやら何やら、紛争地帯の発掘では流れ弾に当たって死んだガイドの横で作業ってのも珍しくなかったからな。慣れの問題だ」

「フンソウとかナガレダマというのが(ぱく)よく分からぬが、(ぱく)お主の方は何ともないというのは(ぱく)分かった」

「そら、どうも」

「(ぱく)うむ、辛いが本当に(ぱく)美味しいのぅ(ぱくっもぐもぐもぐ)・・・・ふぅ、美味しかった。今日の糧を得られた事を神に感謝する」

「・・・・礼儀正しいな」

「異な事を言うのぅ?私という人間を生かす為に犠牲となった動植物や、それらを収穫したり加工して美味しくしてくれた人と、全てを創造した神に感謝するのは当然の事であろう」

「当たり前の事かも知れんが、そういう考え方ができるだけ立派」

「そうなのか?」

「あぁ、そういう感謝の気持ちは、自分は元より子々孫々まで伝えてくれよ」

「何ぞ、大げさじゃのぅ」

「・・・・ま、大げさと取られても仕方ないさ。もし覚えていたら、忘れてなければ家訓でも口伝でもいいから残してくれるとありがたいな・・・・それと、食べ終わった容器は、まとめてこの袋の中に入れてくれ」

言いながらユウは、コンビニなどでよく見かける、あのビニール袋(大きめ)を取り出す。


「何じゃ?この物凄く薄くて縫い目が見えない白い袋は?どういう素材を使ったら、このようなモノが作れるのじゃ?」

「悪いけど、今は答えられないな・・・・あ、そうだ、カレー食べた後だから、喉渇いてるだろう?」

「うむ、実はさっきから口の中がヒリヒリして、喉が渇いておるわ」

「それじゃ・・・・ハイよ」

 そう言ってユウは、少女に水の入った紙コップを渡す。少女はほんの一瞬だけ紙コップの中の水を凝視したが、躊躇(ちゅうちょ)なく水に口を付けた。


「(こくこく)はぁ~・・・・程よく冷えて、美味しい水じゃの」

「まぁ、魔術で作りたての新鮮な水だからな」

「この紙でできたコップというのも珍しいのぅ。紙でコップまで作るとは、お主達の居た所と言うのは、余程裕福なのか、紙を大量に産出できる所のようじゃのぅ。(くんくん)若干、(ろう)のようなアンコスチック(注:クレヨンの先祖みたいな画材)のような、脂っぽい匂いがするが、何か内側に塗ってあるのか?」

「よく嗅ぎ分けるなぁ・・・・残念ながら、その質問にも答えられないな」

「答えられない事だらけじゃのぅ」

「まぁな。答えたくない質問は、答えなくていいって約束だしな。ただ、好奇心旺盛な姿勢に免じて、最後の質問のヒントだけは答えるよ」

「ホントか!」

「あぁ・・・・当たらずとも遠からじってトコだ。後はその気があったら試行錯誤するなりで作るのに挑戦するのも良いんじゃないか?新しいモノを作り出すってのは、試行錯誤する経験を経て作り出すのが重要であって、答えだけ知っても己の身に付かないからな」

「職人みたいな事を言うのぅ。あ、水のお代わりを貰ってもよいか?」

「ハイよ(ジョ~~~~~)・・・・それが真理みたいなモンだからだよ。それじゃちょっと、俺は獣除けの結界張ってくるから、水のお代わりが欲しかったら、悪いけど我慢して待っててくれ」

やおら立ち上がったユウは、のんびりした足取りで焚き火から離れて行く。


当然の事ながら、焚き火の場所にはレイと少女だけが座っていた。

ゆっくりと水を飲む少女が見守る中、レイはずっとレトルトのカレーライスと睨めっこをしていた。

「・・・・・・・・・・・・よし!」

突然、勢い込んだかけ声を上げた後、レイはカレーライスを一気に掻き込む。

「(ばくばくばく!もぐもぐもぐ・・・・ごっくん)・・・・・・ごちそうさま」

「ようやく、食べ終わったようじゃな」

「・・・・あぁ」

「やはり食欲がないのは、私のせいか?」

「どうしたら、そういう結論になるんだよ?」

「いや、その・・・・心当たりがある範囲内で、お主が動揺している所といえば、私を助ける為に人を(あや)めた事位じゃからの。獣が襲ってきた時は全く動揺をしとらんかったし・・・・」

「・・・・・・まぁ、そうだな。俺の精神的なモンってのは、どうやら自分が思っているよりも軟弱だったようだ。今も少し、嘔吐感があるしな。例え子供を殺そうとしていた極悪人といえど、人を手にかけるってのは・・・・」

「そうか・・・・済まぬな。そればかりは、私はお主を何とかする術を知らぬ」

「いや、いいんだ。気の持ちようってのは、自分でも分かっているんだ。だがな、頭では分かっていても、そうもいかないのが感情というモンなんでな」


「・・・・だが、その感情があるが故に、人は争い醜い愚行を繰り返してきた反面、他者を(おもんばか)り助け合って、誰もが安心して文化的な生活を営めるようになったっていう厨二病的発言を、だいぶ前にレイはしてたよな?」

「まぁ、そんな感じの事を言ってた事もありま()た・・・・んで、ユウ。作業は終わったの?」

「あぁ、近隣の獣達は狩っちゃったから大丈夫だと思うけど、念の為動物除けの結界は、全方位でしてきた。(あと)は虫とか(ひる)関連と、就寝時の防寒対策だな」

「まぁ、虫関連はカレーの残滓があるから、カレーが傷まなきゃ大丈夫でしょ」

「それは、何でじゃ?」

「カレーの材料には、虫除けに使われているスパイスも含まれているから。傷んで腐臭がし始めない限り大丈夫だと思うよ」

「そうなのか?」

「薄い根拠だなぁ、レイ」

「まぁ、それに季節柄まだ春先っぽいから、虫がにょろにょろ出てくる事はあるまい。それよりも、防寒の対策の方が切実だと思うぞ」

「あ、それなら大丈夫。思ったよりお湯沸かすのに魔力使わなかったのと、今んとこ計算していた水の量より少ない量しか消費してないから、半径数mの範囲内の空気を、放射式に振動させて十℃近く上げる位の魔力は残っている」

「エアコンの魔法か?」

「そう」

「何じゃ?えあこんと言うのは?」

「気にしないでいいよ、お嬢ちゃん。ポカポカでぐっすり寝れる訳じゃないが、低体温症で死なない程度には寒い思いをしないで寝れるって事だ」

「テイタイオンショウ?・・・・まぁ、よい。そういう芸当ができるのなら、やってみるがよい。そろそろ明日に備えて休むとしようかの?」

「そうだな、お嬢ちゃん・・・・お嬢ちゃんは、すぐそこにある木のベンチみたいなヤツの上で寝てくれ。地面に(じか)に寝ると、体温が地面に逃げて身体が冷えるから」

「分かった・・・・で、お主達は?」

「お嬢ちゃんには悪いが、剣を何本か借りる。地面に敷けば、直に寝るよりましな状態になる」

「・・・・分かった」

「それじゃユウ、よろしく」

「ヘイよ」

 ユウは返事とほぼ同時に、周りの空気に魔法をかけていく。

すると、徐々に空気の冷たさが薄れ、ふんわりと暖かくなってきた。


「・・・・・・・・凄いのぅ、魔法というのは」

「だがもう、俺の魔力はスッカラカンだ。悪いが、もう休ませて貰う」

 言うが早いか、ユウはさっさとレイの敷いた剣の上に寝転ぶと、ものの数秒で寝息を立て始めた。

「・・・・どうしたというのじゃ、この者は?」

「気ぃ悪くしないでくれよ、お嬢ちゃん。魔力切れを起こしたヤツは、ほとんどの例外なく意識を失うんだ」

「そうなのか?」

「そうなんだよ。その場で崩れ落ちなかっただけましだと思ってくれ」

「分かった。火を起こしたり水を出したり周りを暖めたりと、何から何まで済まんな」

「その台詞は、朝、本人が起きてから言ってやってくれ。じゃ、俺も寝るからな。おやすみ」

「あぁ、おやすみ」

 互いに挨拶を交わした後、それそれはそのまま目を瞑り静けさが辺りを包み込む。

暫くすると、焚き火の残り火が発する音と寝息だけが聞こえるだけとなった。




 どれ位の間、少女は寝ていたのか?

 何かが動く気配と物音がして、少女の意識は静かに覚醒した。

何かを抑え込むような苦しげな雰囲気。時折ぱたたた・・・と何かが零れる音。

「ぐ・・・・げっ・・・・・・かは・・・・うヴェぇぇぇぇぇ・・・・・・・・・・」

必死で抑え込もうとしても漏れてしまう呻き声は、レイのものだった。

「大丈夫か?」

どうやらユウも起きているらしい。

背中をさすっているような、布を(さす)る音も聞こえてくる。


「あぁ、すまん・・・・少し楽になった」

ユウの気遣いに礼を言うレイの声が、少女の耳に入ってくる。

 多分、少女に気遣って極力小声で話してはいるのだろうが、周りに物音を発するものがないこの状況ではあまり意味がなく、小声でもユウとレイに背中を向けている少女の耳に充分聞こえる大きさだった。


消臭(デオドランド)・・・・で、突然起き出して吐き出すたぁ、何があった?」

「・・・・悪い・・・・・・フラッシュバックが起きた」

「・・・・あの時のか?」

「あぁ、首を刈った時の、手の感触が急に来て、光景を思い出しちまった」

「そうか」

「・・・・もう少し俺の神経、太いと思ったんだけどな・・・・我ながら思いの外、神経が脆弱(ぜいじゃく)だったようだ」

「ま、そんだけ感受性が強いって事にしとけ」

「ん~~~、そう思いたいトコだが、他が雑なのを、自分自身が知ってるからなぁ」

「そうか・・・・・・・・気休めにしかなんねぇけど、俺の時の対処法を教えとこうか?」

「・・・・あぁ。参考になるかも知れない」


「俺ん時は、テロリストみたいなゲリラだったけど、部隊が殲滅させられたところを逃げてきたみたいな奴で、遺跡で発掘していた所に一人で来たんだ」

「・・・・・・・・・・で、テンプレな展開だと、人質にして立て籠もりか?」

「ご名答。遺跡の周りは追っ手の掃討部隊で取り囲まれるし、遺跡だから出入り口以外に逃げ場ないし、最悪な事にその遺跡ってのが、ゲリラの信仰する原理主義的な宗教じゃなくてな。いきなり『異教徒は皆殺しだ!』とか騒ぎ始めてな。終いにゃ『どうせ死ぬなら、異教徒を一人でも多く地獄に落としてから死んでやる!』とかなんとか騒いで銃を乱射しやがった。で、最初に撃たれたのがガイドで、ガイドが取り出しかけてた拳銃が目に入ったんで、無我夢中でセーフティレバー下げて構えた。そしたら丁度、ゲリラが親父に銃口を向けたトコでな・・・・・・気付いたらゲリラの胸と頭が真っ赤になって死んでた。しかも、拳銃の弾の慣性エネルギーのおかげで、弾が突き抜けた側の面がグチャッてなってた」

「・・・・・・・・それで?」

「初めて撃ったら、銃が放せない程手が震えたり吐瀉物(としゃぶつ)吐いたりパニックになって錯乱したりするのは、ドラマの中だけだと思ったんだけどな・・・・俺の場合、ゲリラを撃ったって自分が認識した直後、全部一通りやって、熱出してぶっ倒れた。目が覚めた後、何回もフラッシュバックとか経験した」

「俺の時より酷いな」

「仕方ねえだろ。まだ十歳になるかならないかって時だし、それまで治安のいい地域でぬくぬく過ごしてたんだから」

「なるほど」

「で、いい加減食いモンも食えずゲッソリしてた時に、親父に言われたんだ」

「・・・・・・・・」


「『全ての道は、何処かに通じる』って(ドシッ!) ぅぐぇ!いきなし、地獄突きすんなよ!」

「真面目に話を進めている所で、ぶち壊すようなボケをかますな!あんま、人の事言えないから、地獄突き程度のツッコミで済ますけど・・・・で、続きは?」

「あぁ、続きな・・・・親父から『物の考え方とか、見方を変えろ』って言われた」

「ほぅ?」

「『お前は、人を殺めたんじゃない。人を救ったんだ。あのゲリラは、銃を持って異教徒は殺すと言ってたよな?実際に発掘チームのガイドを引き受けてくれたモハメドさんが撃たれた。たまたま腕に当たったから命に別状はなかったが、当たり所が悪ければ死んでいた。それはユウ、お前にも想像はできるよな。そして自棄(やけ)になって銃を乱射して、スタッフが二人、流れ弾に当たった。これも、当たり所が悪ければ死んでいた。そしてユウがモハメドさんの所持してた銃を構えた時、ゲリラは父さんに銃口を向けていたよな?お前がゲリラを撃った事により、少なくとも父さんとスタッフ、ガイドさんの四人の命を救った訳だ・・・・それだけじゃない。あのままお前が撃たなければ、他のチームスタッフやお前自身も殺されていた可能性が高かったんだ。だからお前は、直接、間接を含めて・・・・お前自身も含めて遺跡にいた全員の命を救ったという訳だ。だからユウ、お前は人を撃ち倒した事に罪の意識を感じるよりも、人の命を救った事に意識を向けて誇れ。一人の命を奪った事より、十数人の命を救ったという事実が、今のお前には重要なはずだ』ってな」


「・・・・ユウの親父さんって、時々深くて良い事言うよなぁ」

「まぁ、普段は息子の事なんざ頭にないような勢いで、あっちこっち飛び回る親父だからなぁ・・・・・・とにかくだ!レイ、お前は今日、集団で襲われて、殺されそうになっていた一人の女の子を救ったんだよ。まだこれから未来の可能性が無限にある、か弱い女の子を救ったんだよ。そう思っとけ・・・・そうすりゃ、フラッシュバックとかも格段に起きなくなる」

「あぁ・・・・ユウの話は、参考になった。ちょっと心が軽くなった気がする」

「そうか・・・・・・じゃぁ、明日の事もあるから、もう寝とけ。おやすみ」

「おう。サンキューな」


小声での会話ではあったが、少女の耳には充分まる聞こえだった。

会話の流れから少女を救ったのは、本当に下心や打算は働いてなかったようだ。

 じきに聞こえてきた二人分の寝息を背中で聞きながら、少女はいつしか、二人にもう少し心を開いて素性を明かしても良いかも知れないと思うようになっていた。


 こうしてユウとレイがこの時空間に落ちて、初めての夜はゆっくりと更けていった。



 結局、名乗らせる展開になりませんでした・・・・というか、ほとんど物語の話として進んでいないですね(汗)

会話だけで雰囲気とか言葉に表さない感情とかの表現をしようとするのは、難しいですね。


 少女の名前どころか、この後出てくる主人公二人の拠点(通称ディカップ村)とか宿屋兼食堂などの村の住人とか、今後十数話程度にでてくる主要キャラの名前までは決めてますが、今のペースだと出てくるのがいつになる事やら・・・・。

少女が自分の居城に戻った辺りから、徐々にペースを上げていければと思ってます。


 ちなみに投げハリセンというのは、作者がどっかの話で使おうとストックしてたネタです。汎用のネタなので、機会があれば他の作品にも出てくると思います。

実際にあったら、ゴメンナサイ。知りませんでした・・・・と言うか、是非見せて下さい。お()がいいたします!

設定的には、一般的な扇形、武器としても使える鉄扇型、手裏剣型、鎖鎌型、ブーメラン型、チャクラム型、ヨーヨー型など各種バリエーションありってとこまでは考えてます。


 あと、主人公二人が、特に魔法が苦手なレイでも共通して身体強化系の魔法が使える理由の一つとして、歴史的に見て現代人と過去の人で比較すると、便利で衛生的で快適な生活を送っている現代人の方が、圧倒的に体力、持久力、免疫力などが劣っているという、どうでもいいリアリティーを求めた(裏?)設定をしているからです。

イメージとして一般人の主人公二人が、ショッ○ー戦闘員が弱った位の世界の住人に囲まれてるので、身体強化系の魔法で仮面ラ○ダーレベルに補正していると言った感じです。

 衛生面は、チートな魔法がないと如何ともし難い(衛生面では世界でもトップレベルと評価されている日本でも、一世紀も満たない過去は体内に寄生虫常備やら、生で食べられる野菜はないやらと、決して現代の感覚で衛生的ではありませんでした)ので、魔法全般が得意なのを一人設定してます。でないと、現地の食べ物を少々傷んでいたり、生の状態で食べた途端、腹を壊したり食中毒を起こす可能性が高い未来しか想像できず、話が余計進まなくなりそうなので・・・。


 あと、そのうち描写を入れる予定ですが、魔法について。ユウとレイが使う魔法は原則、言霊を込めた呪文を唱えないと魔法が発動しません。一言二言や無詠唱で魔法を発動させるのは、余程の上級者か才能を持つ人のみです。レイがユウを指して優等生とか言っているのはそういう事情があるからです。


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