第六話の六
料理回の続き
前回までで、思ったよりアドリブネタがポロポロあったんで、もうチョイ続きます。
「何ぞ二人共、面倒臭がりじゃのぅ。少し位、教えてくれても良いのに……」
「いや、だって、本当に説明すると長くなるんで、面倒臭いんだもん。酸性、アルカリ性を説明する前段階で、いろいろ理解して貰わなきゃならない事項が多過ぎるんで、本当に長くなって面倒臭いんよ」
ポツリと漏らすヴィッチに、レイがツッコミ気味に反論する。
「村長さん、それよりも今は、ケチャップとソースだよ。 他は後回しにするよう、さっき頼んだじゃないさ? もうちょっと、自重しとくれよ」
「ん? おぉ、すまんのぅ、ハンナ。しかし、レイ達から出てくる知識が興味深いモノが多くて、好奇心を抑えるのが少々難しくての……」
「村長さんの気持ちは分かるけどねぇ……何度も言うようだけど、今回は私に譲っておくれよ」
「むむむ……勿論、分かっておるのじゃが……」
「ハイハイ二人共、ボチボチ話の続きをしようと思うから、良いかな?」
ヴィッチとハンナの会話を止めるようなカタチで、レイが口を挟む。
ユウの手によって茹でられた麺は、水だけで茹でたモノ、重曹を使って茹でたモノに分けて、それぞれのボウルの中に入れられていた。
「……ユウ、チョット頼みたい事があるんだけど?」
「何?」
「(ゴソゴソ←マイバッグを漁っている音)確か中に……あ、あった。 これから作る料理は、目の前で見せた方がより分かりやすいと思うから、この五徳(注:火鉢やガスコンロなどの上に乗せてヤカンや鍋などを置く、上向きに三、四脚ある鉄とか陶器製のアレ)の上で作業したいんだけど、五徳の下から火ぃ出せるように出来る?」
「………鉄なり煉瓦なり石なりでそれっぽい土台を作って五徳を固定できれば、大丈夫かな? 土台や五徳が固定されてないと、火が釣られて動いて他の場所に引火する可能性があるから、その辺考慮すればいいんじゃない?」
「それっぽい土台か……」
レイは周りを見渡して、使えそうなモノがないか視線を走らせる。
「……ユウ、そこに丁度良い大きさのキャセロール(注:西洋料理などで使う、蓋がついた厚手の鍋)みたいな皿があるから、それ使ってみるか?」
「ん?コレか? この大きめのグラタン皿みたいなヤツか?……まぁ、陶器でできてて重さも手頃だから、コレなら大丈夫そうだな」
「んじゃ、それ使おう。 ユウ、よろピく☆」
「また俺かよ! まぁ、レイに、下手に魔法使われるよりマシだけど……」
「そういえば、ユウはよく使っておるが、レイが魔法を使っている所を見た事がないのぅ。どういう言う訳じゃ?」
「いや、ヴィッチのじっちゃん、使ってない訳じゃないよ。 常時、軽めの身体強化の魔法は自分にかけてるよ」
「ほっ! そうなのか?」
「そうじゃないと、水飲んで腹を壊したり、食べ物で食中毒になる可能性があるしね。 それに、お嬢を送り届けて領主のおっちゃんに会って、ヴィッチのじっちゃんにこの村まで連れてこられて……って感じだったから、俺とユウの本来の体力じゃ、何処かの時点でヘバッていたか倒れていたかしてたはずだよ」
「何と……レイの話が本当なら、お主ら、随分体力がないのぅ」
「俺とユウが居たトコってのは、ヴィッチのじっちゃん達に比べれば、体力を使わなくても生活できる位楽が出来た環境だったからな」
「うらやましいのぅ。 どんな環境じゃったのか聞いてみたい気がメチャクチャあるのじゃが、ハンナにも言われている手前、今回は止めておいた方が良いかのぅ?」
「ヴィッチさん、そうして頂けると助かります。 それと、俺もレイも魔法は使えますが、レイには身体強化系の魔法以外を使わせないで下さい」
「何故じゃ、ユウ?」
「……レイは、身体強化系の魔法は俺と一緒のレベルで制御できてるけど、それ以外の魔法の制御はてんでダメで、一緒に通っていた学校でも、身体強化系の魔法制御のおかげでどうにか落第点にならずに済んでいた位の成績が低いからですよ。 だから、レイには絶っっっっっっ対に、魔法を使わせないで下さいよ」
「んむ! ユウとレイ、お主達、学校に通える程裕福か高貴な家の出だったのかの?」
「え?どうしたらそういう発想が……あ、そうか!(←察し) 姫さんが言ってたけど、この辺りでは村長とかの一部の人が、自主的に子供達に教える程度がやっとのレベルだったような……」
「そうじゃ。 強い国を創るには、末端の民に至るまで教育を施して教養力を高める必要があるのじゃが……なかなか理解してくれる者がおらぬ」
「ヴィッチのじっちゃん、そりゃぁ、仕方ないじゃん。『倉稟満ちて礼節を知り衣食足りて栄辱を知る』だよ。 食糧に余裕が無きゃ、人は栄誉や恥辱、まして何十年も先の事を気にする事なんてできないよ。食糧が不足しがちで食うや食わずの状況じゃ、どうしたって目の前の食べ物を確保するのに手一杯で、教育の重要性なんて実感できないよ」
「そうは言うがのぉ、レイ。いろいろな戦場を見て、儂は……」
「ヴィッチのじっちゃんの言う事は、正しいよ。 ただ、生活に余裕が無きゃ、普通の人には分かって貰えないよ、そういう事は…………だからお嬢は、少しでも余裕のある状況になるように、俺らをこの村の事を紹介したりしたんじゃないの?」
「多分、そういう意図もあったんじゃろうのぉ」
「まぁ、その辺は、機会があったらお嬢に聞いてみれば?……んじゃ、ユウの方の準備が終わったみたいだから、説明の続きやるヨ」
レイはそう言いつつ、ユウから五徳のついたキャセロール皿を受け取る。
そのキャセロールは、ユウの魔法によって『断熱』と『防煤』の機能を付与した上で、魔力的にキャセロールの内面に五徳を『密着』、『固定』化したものだった。
「あ、そうだ、ハンナ。このキャセロールだけど、使い終わったら責任持って付与魔法を解除して『洗浄』して綺麗にして返すから。 ユウが……」
「レイがするんじゃないのかい?(←少し呆れた口調で)」
「いや、今さっき言ったように、レイに魔法を使わせない為だから、気にしなくて良いよ」
「そうなのかい? ま、ユウが良いって言うんなら、私の方からとやかく言う必要はないねぇ」
「気遣い、サンキュー。 でも、レイに魔法を使わせた後のフォローの方が大変だから、それに比べればこんな事は何でもないよ……『ファイア』」
ユウの言葉で、キャセロールの内面と五徳の間の空間に、ガスバーナーのような青白い炎が燃え上がる。
ボボッ・・・
青白い炎が上に向かって、数㎝の高さで安定して吹き上げ続ける。
「へぇ~!魔法って便利だねぇ魔法って便利だねぇ。 それにしても、青白い炎なんて初めて見るよ。魔法特有の炎の色ってヤツかい?」
「いや、ハンナ、この火は、普段目にする火よりも熱い……いや、何でもない。 んじゃ、ボチボチ続きを始めるヨ」
レイはそう宣言すると、五徳の上に適当な大きさのフライパンを置く。
「多分、これから作る料理の方が、ヴィッチのじっちゃん達には馴染みやすいと思うんだけど……まず、フライパンを火で熱してやる訳だ。少し煙が出てくる位まで熱してやる位が、ベターかな? で、少し煙が出てきた辺りで、薄く油をひいてやるっと……」
レイは、手近にあった油(注:今回の油は、オリーブオイルです)の入った瓶を取り上げ、フライパンに少しだけ垂らす。
もわわ~~・・・・
レイはフライパンを前後左右に傾けて、油をフライパン全体に広げていく。
フライパンに油が広がっていき、熱されて軽く煙を上げ始める。
「……んじゃ、ここからが早いから、見といてヨ。 まず、フライパンにひいた油が充分馴染んだら、あらかじめ切ったタマネギを入れます。
切り方は好きで良いけど、一品料理として作るなら少し大きめに切って歯応えを感じられるようにすると良いかな? んで、本当なら一品料理に仕上げるなら刻んだピーマンを入れるんだけど無いんで、個人的な好みで刻んだマッシュルームをぶち込むよ」
シュワワ~~(←フライパンに具材を入れた音)
「ほほぅ……良い匂いがしてきたの」(←ヴィッチ)
「そうだね、おじいちゃん」(←マルガ)
「で、次に薄くスライスして細切りにしたハムを投入……」
じゅわわ~~~
「あら、良い匂いがしてきたわね(←ケイト)」
「……炒めたヤツは、何かの添え物にするのかい?今さっき『一品料理に仕上げるなら』って注釈付けていたから、量が少なくても納得するけど?」(←ハンナ)
「まぁ、ハンナの予想は『当たらずとも遠からず』ってトコかな? 凄く大雑把に無理っぽく解釈すれば添え物でも間違いじゃないけど……お、充分炒まってきたんで、ここからがメインだよ」
レイは、おもむろにスパゲッティの麺(水で茹でた方)が入ったボウルを掴むと、無造作にフライパンへと投入した。
ジャアアアア~~・・・(←スパゲッティを入れた音)
「! 何と!!」(←ヴィッチ)
「えっ!?」(←ケイト)
「スパゲッティを、炒めるの!?」(←ハンナ)
「? レイ、何でヴィッチさん達、驚いてんの?」
「それはだな、ユウ。 スパゲッティを炒めているからだ」
「へ?何で?」
「大雑把にユウが思い付く欧州料理で、麺料理っつったら、何がある?」
「……スパゲッティ以外、何かあったっけ? 思い付かない」
「無いよ。 欧州では唯一、パスタの中でスパゲッティ位しか麺類はないぞ。広義的にはフェットチーネやタリアテッレ(注:どちらも薄くて平たい、ひも革状の麺。日本的には、うどんに対するほうとうみたいな感じを想像すると、イメージが沸きやすいか?)も仲間になるけど、その辺りを使った料理で、炒めるヤツはあるか?」
「…………無いな。 茹でてソースや油を和えるか、具材で煮たり焼いたりする料理しか思い付かん」
「だろ?……だからヴィッチのじっちゃん達は、スパゲッティを予想しない方法で調理した事について驚いた訳だ」
「……そうなの、ヴィッチさん?」
「うむ、そうじゃ。儂の知りうる範囲でスパゲッティを茹でた後に炒めるなんて、そんな事をする調理法は知らぬ」
「私も知らないねぇ。 何だか邪道っぽい感じがするけど、美味しくなるのかい?」
「美味しくならなければ、自然と廃れていくのが料理以外にも通じる、万物共通の自然の流れだよ。少なくとも俺とユウの居たトコだと、定番化している調理法の一つだ」
「なるほどねぇ~……まぁ、できあがりを試食してみれば、分かるって事なのね?」
「そう言う事……んで、充分に麺と具材が絡まって火が通ったら、そこでフライパンにケチャップを投~入~♪」
ぶちゅぅぅ ジュッワワアアア~~~!(←フライパンにケチャップを投入した音)
「ん~~!おじいちゃん、ケイトお姉ちゃん、凄く良い匂いがしてきたの!!」(←マルガ)
「そうね。凄く良い匂い……」(←ケイト)
「チキンライスの時もそうじゃったが、お腹をざわつかせる匂いじゃのぅ。 食欲が刺激されるわい」(←ヴィッチ)
「ケチャップが全体に行き渡ったら完成……なんだけど、今回は試食なんで、少し味を濃くするな。 まず、ホットソースを一、二滴入れて、(ピピッ!←ホットソースを入れた音)隠し味的に味に深みを出す。 次に、パルメザンチーズっぽいチーズの塊を削って、味のコクを追加する(パラパラパラ・・・←粉チーズを振り掛けた音)……で、フライパンの中身を全体的にかき回して調味料が全体に馴染んだら完成。 具材を増やして一品料理にする場合は、飾りにパセリのみじん切りを持った上に振り掛けてやればナポリタンスパゲッティ完成なんだけど、今回はもう一工程あるんで、フライパンから取り出したスパゲッティを粗熱が取れるまで放置します。
ユウ、粗熱取って貰って良い?」
「ヘイよ(ピロリン♪←魔法でスパゲッティの粗熱を取り出す音)」
「さて、最後の行程だけど、さっきホットドッグなんかに使ったクッペを持ってきて、上面を縦に沿ってナイフで切れ目を入れます(スゥゥゥ←クッペを切ってます)。
んで次、切れ目の内側をバターで薄く塗ってやって、その切れ目に粗熱を取ったスパゲッティを押し込んでいきます(グイグイグイ・・・)。
最後にパセリのみじん切りで飾り立ててやれば、スパゲッティパンのできあがり~☆」
「有り得ない組み合わせだねぇ、それ。パンとパスタを組み合わせるなんて……」(←ハンナ)
「そうねぇ。普通は、どちらか一方よね?」(←ケイト)
「パンにスパゲッティ……一緒に食べて、味の相性が合うもんじゃろうかのぅ?」(←ヴィッチ)
「でも、美味しいんっだったら、早く食べてみたいの!」(←マルガ)
「? なぁ、レイ。マルガ以外の面子の反応が今一つのような気がするんだけど、何でだ?」
「ふっふっふ…それはだな、ユウ。俺達に分かりやすい言葉で言うと、『主食+主食』の組み合わせ料理だからだ」
「あ~~~……そういや、俺も昔、レイにラーメンライスとか餃子定食とかお好み焼き定食とか焼きそば定食とかある店に行って、違和感に覚えた記憶があるな……」
「そう言う事だ。いわゆる『炭水化物+炭水化物』の主食同士の組み合わせは、他の地域や国じゃ、あまり見かけないからな」
「だからヴィッチさん達の反応が、今イチ微妙なのか」
「そう言う事。まぁ、実際に食べて貰えれば、美味しいんだけどな…………んじゃ、ヴィッチのじっちゃん達、パンを切り分けたから、試しに食べてみ☆」
そう言ってレイは、切り分けられて六つになったスパゲッティパン(別名:ナポリタンパン他、数種類あり)を皿に載せて、ヴィッチ達の前に差し出す。
ほんの少しの間だけ訝しげに見ていたヴィッチ達は、おもむろに一切れずつ手に取って、スパゲッティパンをしげしげと眺める。
「レイは、奇抜な料理をよく知っておるのぅ……どれ(ぱくっ!)」(←ヴィッチ)
「(もぐもぐ・・・)!! 美味し~の!? 何コレ?ケチャップの味が、チキンライスとは違うように感じるの!凄く美味しい!!」(←マルガ)
「ホントね。スパゲッティ単体だと少し濃い味なんだろうけど、パンと一緒になる事で丁度良い加減の味になってるわ。 それに、パンと麺の食感が口の中で合わさって、面白い感じがするわね」(←ケイト)
「そうだねぇ。ケイトの言う食感の違いが、面白い効果を出しているねぇ。 それに、麺をパンに挟む事によって手を汚す事無く食べれるから、手軽に食べられるわ。農作業なんかの合間に食べるには丁度良いねぇ……レイ、このパンは、ウチの店で売っても構わないかい?」(←ハンナ)
「ハンナの目の付け所にちょっとビックリだけど、そのパンのメリットによく気付いてくれたわ。あと、片手でも食べられるから、何か他の作業をしながらでも食べられるし、スパゲッティを具材にしてるから、料理がボリューム不足に感じる事もない。 ただし、このケイトのパンだけ食べてると栄養が偏るから、意識して野菜を多く摂る必要があるよ」
「……レイ、今なんか小難しい事を言った気がするけど、売る時に野菜のサラダみたいなヤツも付けると良いって事かい?」
「ん~、まぁ、実際、サラダは付けなくても構わないけど、オプションで別個で購入できるようにすると良いかもね。野菜は鮮度の問題や保存が利かない問題もあるから、大量に売る事は出来ないだろうけど。 まぁ、売るのは構わないけどハンナ、何か忘れてないかい?」
「何をだい、レイ?」
「何で俺が、チョコチョコ料理したり、長々と『旨味』について説明してたのか。 別に、今日は俺らが料理を振る舞ったげるとか、ハンナの店を流行らそうとかした訳じゃないんだけど?」
「え、違ったのかい?」
「……ハンナが試作してるソースについて意見を求めてきたから、足りてないと思った部分を順序立てて実演入りで説明してたんだけど?」
「あ、そう言や、そうだったねぇ……あんまり珍しい料理が続くから、うっかり忘れてたよ」
「なんだかなぁ……まぁでも、ここまでくれば俺が言わなくても、ハンナは何となく気付いてきてるんじゃない?」
「……まぁ、実例見せられながら説明されちゃあねぇ。いきなり『旨味』って、言葉で説明されても分からなかったろうね。 それが無いか少ないから、足してやればマシになるってのは分かったけど」
「けど?」
「それだけじゃ、もう一つ足りない気がするんだよ。 何て言うか、私のソースは尖った辛味のあるヤツだろう?旨味を加えただけじゃ、まだ辛味が強いような気がするんだよ。辛味を抑えてもう一味加えないと、食材と合わないと思うんだよねぇ」
「ハンナ、鋭いな。俺とユウもそれは感じてたけど、何だと思う?」
「単純に考えれば『辛い』の反対は『甘い』だから、甘い何かで辛味を抑えてやれば良いんだろうけど……果物位しか思い付かないし、果物でもソースの辛味を抑える程の強い甘みを持った果物はないしねぇ。例えばリンゴを焼いて甘みを強くしてから混ぜたとして……ダメだね、ソースの辛味に負けちまう。ベリー系じゃ酸味が強いし、グレープ系は旬じゃない上にほとんどワインか干しブドウにしてあったはずだし、別の余計な匂いが付いちまう…………レイ、何か、ヒントを貰えるかい?」
「いや、ヒントでリンゴの名前を出そうと思ってたから、今すぐ出せるヒントがなくなって戸惑ってる。ブドウまですぐに出て来ると思わなかったし……まぁ、甘い物ですぐにフルーツを思い付くのは流石だと思ったけど、もっと甘い物があるでしょ?」
「…………果物より甘い物なんて、あるのかい?」
「砂糖」
「砂糖!砂糖だってのかい!? いくら少しずつ安くなってきてるとはいえ、物凄く高いシロモンだよ!? お貴族様じゃないんだから、ホイホイと料理に使っていたら、商売の儲けがなくなっちまうよ!」
「……まぁ、普通はこういう反応するわな。 でも、そんなに砂糖って、値が高いのかい?」
「そりゃそうだろうさ、レイ。年中暑い遠い国でしか育たない植物(注:サトウキビです)からでしか砂糖は採れないんだから、輸送やら何やらの手間で恐ろしく値が張っちまうのさ。それでも貴族がどんどん使うから需要が増えてちょっとずつ値は下がっているけど、それでも私ら庶民には口にする事ができない位高値なんだよ。 いいとこ、祭りの日に抽選で選ばれた数人が、姫様と一緒にお茶を飲む時に口にするのがせいぜいだよ」
「察するに、お嬢レベルの人間でも、滅多に口に出来ない位高値だと言う事は分かった。 だから、果物が安価な甘味の代表として名前が挙がるのか……ハンナにヴィッチのじっちゃん、もし安価に砂糖を得る手段があったとしたら、どうする?」
「……まさか! いやしかし、レイの事じゃから、知っておっても不思議ではないが……いやしかし、今までそれなりに研究しておった者も居るが、ついぞ成功したという話は気かなんだが?」
「そらぁ、大規模に大量生産するには安定した社会情勢が必要だし、仮に成功した人が居たとして、それを周りの国や規模の大きい商人が知ったらどうなると思う?」
「……利益に目の眩んだ者達が、あの手この手で争奪戦を繰り広げて、最悪『他の者に奪われるなら』と、成功した者を殺す可能性があるのぅ。それに、実際に砂糖で商売をしておる者からすれば既得権益を著しく損なうから、取り込めなければ即暗殺する可能性が高いのぅ」
「そう言う事。 だから、砂糖を安価に採り出す事に成功した人が居たとしても、本人が黙っているか周りが情報を漏らさないようにして、表沙汰にならないようにしている場合がある訳だ」
「もしくは、そんな重大な発見だとはつゆ知らず、のほほんと個人的に甘味を楽しんでおるか……かのぅ?」
「村長さんもレイも、よくそう言う事まで思いつけるモンだねぇ……」
「まぁ、少し陳腐な言葉だけど『歴史に学べ』ってヤツだよ、ハンナ。過去、人が歩んできた歴史の中で同じようなレベルの事例があった時、人はどんな行動をしてきたかを調べると、自ずと回答が導き出せるよ……まぁ、それはともかく、その辺りの知識をどう扱っていくかは、お嬢や領主のおっちゃんと後日話し合った方が良いと思うよ?
んで、今後の効率的な抽出方法や砂糖を白くする漂白化は試行錯誤して貰うとして、結構安価に砂糖を抽出できるモノはコレだ」
レイはそう言うと、ヴィッチの家から持ち込んだ食材の中から、目的の物を取りだしてヴィッチ達の目の前に突き出した。
まだ続きますが、切れが良かったんで一回この辺りで切ります。
そんな訳で、もう少し料理回は続きます。
ネタバレっぽい話になりますが、こんだけチマチマと細かく話を続けるのは、物語の進行上の伏線が埋まってるからです。
昔の『小公女』とか『母を訪ねて三千里』などの話を参考にしてます。
最近の分かりやすいヤツだと、『00』のロック○ンとか『鉄血』のキャラの掘り下げた上での話の展開をイメージして頂けると想像しやすいかと。
そこまで物語が進むのに、どれ位かかるか全く未定ですが・・・。




