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大瀑布の底のハーレム【一般公開版】 (R18版 日間76位ありがとうございます)  作者: 黒瀬 量衡
第十章 谷底Ⅲ

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第六十九話 安全都市は平和で、忍者だけが妙におかしい

人数が増えれば、洗濯物も増える。その日は朝から、シズクとリーゼ、ティセラ、クロエ、アスラで衣類を洗い、外へ干していた。


リーゼはクロエの衣類を一枚持ち上げ、しばらく眺めた。


「これは下着か?」


「そうだ」


「貴様、忍装束の下には何も着ていなかっただろう」


「忍装束の時は着ない。身体へ直接形成するからな」


アスラも洗った布を絞りながら頷いた。


「日常では普通に着るぞ」


「ブラジャーも?」


「ある」


「ショーツも?」


「ある」


「ストッキングもタイツも?」


「ある」


「ガーターベルトも?」


「あるぞ」


リーゼは少しだけ安心した。


「そこは普通なのだな」


そう言って、手の中にあるブラジャーを改めて見た。そして、すぐに眉を寄せる。


「……待て。何故これも乳房ごとに完全に分かれている」


「服に合わせるからだ」


クロエが答えた。


「またそれか!」


忍者世界では、乳房を一房ずつ包む形の服が珍しくない。そのため、ブラジャーも最初から房ごとに支える形で作られているものが一般的だった。


シズクが興味深そうに尋ねる。


「そういう服がお嫌いな方は、どうするのですか?」


「別の服を着る」


アスラが答えた。


「胸元を大きく開ける奴もいるし、前を開ける奴もいる」


クロエも続ける。


リーゼは別の上着を広げた。胸元がかなり大きく開いている。


「これでは乳房がこぼれ落ちそうではないか」


「そうだな」


「そうだな、ではない!」


「別に珍しくないぞ」


ティセラが洗濯物を干しながら言った。


「文化的に、その程度の露出へ強い性的意味を付けていないのでしょうね」


クロエは首を傾げた。


「昔からだ」


「忍装束も、身体の線がかなり分かりやすいですよね」


シズクが言う。


「そういう仕立てだ」


アスラが平然と答えた。


リーゼは忍装束を思い出し、さらに眉を寄せる。


「何故、筋肉の線はそこまで強調されないのに、乳房や乳首や股の線ははっきり出るんだ」


クロエとアスラは顔を見合わせた。


「昔から」


「伝統だ」


「全部それで済ませるな!」


しばらくして、ティセラが別の疑問を口にした。


「しかし、お二人の安全都市は、話を聞く限り、かなり平和ですね」


「安全都市だからな」


クロエが答える。


「私の学園都市と、治安水準はそれほど違わないようにも感じます」


「普通だろう」


アスラが言う。


リーゼが振り向いた。


「普通なのか?」


「安全でなければ、どうやって生活する」


クロエは本気で不思議そうだった。


「家がある。店がある。病院がある。学校がある。子供を育てるなら、普通に暮らせる場所が必要だ」


アスラも頷く。


「娘を毎日、危険な場所へ置くわけがないだろう」


シズクも素直に頷いた。


「とても普通のお話ですね」


「普通の話だからな」


ティセラはさらに尋ねる。


「人間以外の種族も、普通に生活しているのですか?」


「している」


「オークも?」


「店をやっている奴もいる」


「ミノタウロスも?」


「学校にもいるぞ」


リーゼは洗濯物を握ったまま、しばらく黙った。


「……貴様らの世界、忍者以外はかなりまともではないか?」


クロエが答える。


「私たちは忍者だ」


「そこだ!」


リーゼが指を差した。


「そんなに普通の都市を作れて、学校も病院も家庭生活も成立しているのに、何で忍者だけエロ拷問するんだ!」


クロエとアスラが顔を見合わせた。


「忍者だからだ」


「忍者だからな」


「説明になっていない!」


だが、二人には本当に、それ以上の説明が必要だという感覚がないらしい。


正式な成人忍者には、必須の知識がある。


クロエが指を折る。


「『エロ植物』」


アスラが続ける。


「『エロ動物』」


「『エロ魔物』」


「『エロ拷問』」


「『エロ行為』」


リーゼが止まった。


「五巻?」


「基本五巻だ」


「必修だ」


「何故だ!」


クロエは当然のように答える。


「仕掛ける側が知らなくてどうする」


アスラも言う。


「仕掛けられる側も知らなければ、性質も弱点も分からず、脱出できん」


リーゼは額を押さえた。


「筋が通っているのが余計に腹立たしい」


ティセラはむしろ少し感心していた。


「対象の生態、作用、利用法、対処法を一つの体系にしているのですね。実務資料としては合理的です」


「教授は納得するな!」


そこへシズクが、ふと別のことを思い出した。


「ネイラさんとルヴァナさんは、お二人とももう大人なのですよね?」


「ああ」


「成人している」


「仲も良いのですか?」


クロエが普通に答える。


「良いぞ。付き合っているからな」


リーゼの手から洗濯物が落ちた。


「……何?」


アスラが振り返る。


「交際している」


「姉妹だろう!」


「そうだが?」


二人とも、本当に何を驚かれているのか分からないという顔だった。


ティセラが少し慎重に尋ねる。


「お二人の世界では、近い血縁者同士の交際や婚姻に、生殖上の問題は?」


「ない」


「少なくとも、お前たちが考えているような問題はない」


「社会的な禁忌は?」


「何故?」


今度はティセラが考え込む。


「なるほど。生殖上の条件そのものが違うなら、それを基礎に形成される倫理も違って当然ですね」


リーゼが叫んだ。


「教授はすぐ理解するな!」


クロエは首を傾げる。


「成人した二人が互いを好きで、身体的にも問題がなく、社会的にも問題がない」


アスラも続ける。


「私たちも困っていないし、本人たちも困っていない」


二人がリーゼを見る。


「何がおかしい?」


リーゼは口を開いたまま、少し止まった。


「……小官の世界では、おかしいんだ!」


「そうなのか」


「世界によって違うのだな」


クロエとアスラはあっさり納得した。


リーゼは両手で頭を抱える。


「何故、貴様らの方が異文化を理解する側になっているんだ!」


その日の洗濯は、肉体的には大した作業ではなかった。それでもリーゼだけは、夕方になる頃には妙に疲れていた。

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