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大瀑布の底のハーレム【一般公開版】 (R18版 日間76位ありがとうございます)  作者: 黒瀬 量衡
第十章 谷底Ⅲ

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第六十八話 谷底では、鯨のようなものが空を飛び、魚のようなものがそれを斬る

クロエとアスラが周辺の地形を知っておきたいと言ったので、その日は谷底の大きな水場まで歩くことになった。水面は遠くまで続き、遥か向こうでは巨大な滝が落ちている。水煙は雲のように広がり、その先を隠していた。


クロエはしばらく周囲を眺めてから言った。


「広いな。世界を分つ谷とは、かなり印象が違う」


「お前ら、世界を分つ谷の底を見たことねえんだろ」


エヴァに言われ、クロエは少し考える。


「比較できないな」


「それもそうだ」


その時、水面が大きく盛り上がった。黒い影が、水の下をゆっくり移動している。


リーゼが目を細めた。


「何かいる」


最初は鯨だと思った。リーゼの世界にも海があり、鯨という巨大な生物もいる。


だが、その影は大きすぎた。


「……待て。大きすぎないか?」


次の瞬間、水面が爆発した。


巨大な身体が、水を押し分けて飛び出した。形だけなら鯨に似ている。しかし、リーゼの知る鯨とは比較にもならないほど巨大だった。


しかも、その巨体は落ちてこなかった。


そのまま空へ上がっていく。


「飛んだ」


クロエが言う。


「飛ぶな」


「いや、飛んでいるだろう!」


リーゼが思わず振り返る。アスラも珍しく無言で空を見上げていた。


「私たちのところには、あんなものはいない」


「巨大生物は?」


「ほとんどいない」


「魔物も?」


「大半は人間くらいだ。大きな種類がいないわけではないが、あれとは比べ物にならん」


リーゼの顔に、少しだけ安堵が浮かぶ。


「貴様らの世界、そこはまともなのだな」


その瞬間だった。


水中から、別の巨大な影が一直線に飛び出した。


今度のものは細長い。魚のように見えたが、それもまた途方もない大きさだった。


巨大な魚は、水から飛び出した勢いのまま、空を飛んでいた鯨のようなものを横切った。


何も起きなかったように見えた。


一瞬だけ。


次の瞬間、鯨のような巨体が、真ん中から二つに分かれた。


「……は?」


リーゼの口から、それしか出なかった。


二つになった巨大な身体が水へ落ちる。轟音とともに水柱が上がり、周囲へ激しい波が広がった。


魚のようなものは、そのまま空を滑るように飛び、遠くの霧の中へ消えていった。


クロエがエヴァを見る。


「今のは何だ?」


「知らん」


「知らないのか?」


「たまにある」


リーゼが叫んだ。


「何が『たまにある』んだ!」


エヴァは水面を見ながら、さほど気にした様子もない。


「でかい奴が、もっと強い奴に食われたりする」


「今のは食っていなかった! 斬ってそのまま飛んでいったぞ!」


「後で戻ってくるんじゃねえか?」


「知らないんだろう!」


その横で、ティセラはものすごい勢いで記録していた。クロエとアスラはしばらく黙ったまま、水面を眺めている。


やがてクロエが言った。


「私たちの世界は、生態系だけならかなり平和だな」


リーゼがすぐに振り返った。


「貴様からその言葉を聞くとは思わなかった」


アスラは岸辺の植物を見る。


「畑に突然、巨大な怪物植物が生えることもない」


シズクが聞いた。


「そういう植物をご存じないのですか?」


「知らん」


クロエも頷く。


「エロ植物なら分かるが」


リーゼの顔から、先ほどの安堵が消えた。


「何故そちらだけ分かる」


「図鑑があるからだ」


「図鑑?」


「使う側にも知識が必要だし、使われる側にも必要だ」


アスラが当然のように答える。


リーゼは額を押さえた。


「せっかく貴様らの世界にまともな部分を見つけたと思ったのに!」


クロエは不思議そうだった。


「巨大生物がいないという話と、エロ植物は関係ないだろう」


「そういうところだ!」

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