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大瀑布の底のハーレム【一般公開版】 (R18版 日間76位ありがとうございます)  作者: 黒瀬 量衡
第二章 谷底Ⅰ

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第六話 谷底の朝は、昨夜の続きから

朝、シズクは水の音で目を覚ました。


大瀑布の轟音ではない。もっと近く、さらさらと流れる水と、ときどき木の何かが水を噛むような、ごぽん、ごぽん、という低い音だった。


目を開けば、昨日と同じ巨大な梁と高い天井がある。身体の下には畳。障子越しに柔らかな朝の光が差し込んでいる。


世界の果てから生け贄として落とされ、死ぬはずだった自分が今日も生きている。そこまで思い出したところで、続いて昨夜のことまで鮮明に蘇り、シズクは掛け布団を頭まで引き上げた。


「……忘れましょう」


無理だった。


見てはいけないものを見た。最初は、エヴァが襲われているのだと思った。だが、違った。エヴァは自分から聖者へ手を伸ばしていた。何度思い返しても、そこだけは変わらない。


「……起きましょう」


いつまでも布団へ隠れているわけにもいかない。シズクは借りた上衣とずぼんを身につけた。足を一本ずつ布の中へ通す衣服にも、少しだけ慣れてきた。小袖と袴しか知らない身には未だ奇妙だったが、動きやすさだけは認めざるを得ない。裾を引きずらない。しゃがんでも乱れにくい。谷底で暮らすための服というなら、確かに理にかなっていた。


廊下へ出ると、巨大な館は昨夜とはまるで違って見えた。高い窓から朝の光が入り、太い床板へ明るい四角形を作っている。遠くでは大瀑布が絶えず鳴っているのに、一晩過ごしただけで、その轟音が少し背景へ退いた気がした。


台所へ向かう。


包丁の音が聞こえる。


エヴァがいた。


金髪を後ろでまとめ、袖を捲り、大きな鍋をかき混ぜている。


「起きたか、シズク」


「お、おはようございます、エヴァ」


「眠れたか?」


「……はい」


「嘘が下手だな」


シズクは俯いた。


エヴァは口元を歪めた。


「そうだ。昨夜は悪かったな」


シズクの肩が跳ねた。


「え?」


「お前が見てたのに気づいた後の話だ」


「わ、私は、その……本当に、申し訳なく……」


「気にするな。むしろ、あの後盛り上がった」


「盛り上がった?」


「ああ。聖者が覗かれながらヤるってので、さらにスイッチ入ったらしくてな」


シズクの顔が一気に赤くなった。


「聖者が?」


「耳元で『シズクに見られているぞ』って囁かれて、俺も何かこう、箍が外れたというか」


「エヴァ……」


「それでな、俺も自分で言い始めたんだ。今、聖者の逸物が、俺の腹のどこを押し上げてるか、見てくれシズクって。そうしたらな、自分で説明しながらイッた。何度もな」


シズクは声を失った。


「縛られたまま、開脚したまま、聖者に持ち上がるられて背面座位で、だ。聖者も何度も中に出してた」


「背面……座位……?」


「後ろから座ったまま、ってことだ」


「そんな体勢で……」


「でも途中から、もう言葉にならなくなってな。声が変になった」


エヴァは菜箸で鍋をかき混ぜながら、思い出したように続けた。


「昨晩、俺が『んお゛っ……ぉ…んぐっ……』とか叫んでたろ。あれだ」


シズクは昨夜の音を思い出し、全身が熱くなった。確かに、戸の向こうから聞こえていた。エヴァのものとは思えない、喉の奥から絞り出すような声が。


「腹の奥が聖者のデカ太チンポで押されてると、自然と出てくる」


「ち、ちん……」


「聖者の知識だと、子供を孕む子宮が押されるとか、その近くを押されるとか、理由はあるらしいがな」


エヴァは平然と言ってのける。


「まぁ、オホ声のときはイキっぱなしで、頭が真っ白になってるから、わからん」


「オホ声……? イキっぱなし……?」


「ああ。何回イッたか覚えてない。数える余裕なんてなかった」


「朝から言わないでください!」


「お前がもう来ないと思ったから戸を閉めたけどな。閉めた後も、結構な回数イかされた」


「もう結構です!」


シズクの声が台所へ響いた。


エヴァはますます楽しそうに笑った。


「分かった分かった。朝から刺激が強かったな」


「エヴァには恥じらいというものがないのですか」


「あるぞ」


「どこに?」


「必要な時に使う」


「今使ってください!」


「嫌だ。面白い」


シズクは頭を抱えた。


「まあ安心しろ。毎回お前に見せるために戸を開けるわけじゃない」


「毎回という言葉を使わないでください」


「ただ、俺と聖者は夜だけとも限らんからな」


シズクは嫌な予感を覚えた。


「何がですか」


「やる時間と場所だ」


「……夜だけではない?」


「二人の体調と気分次第だ。昼でもするし、館の外でもする」


「外で?」


「ああ。だから見かけても放っとけ。あと、もし俺が縛られてたり、変な声出してても、助けに入る必要はない」


シズクは何も言えなくなった。


エヴァはそこで少しだけ表情を改めた。


「昔とは違う。今は俺が選んでる。俺が望んでる。だから、もし見かけても止めようとしないでくれ」


シズクは小さく頷くことしかできなかった。


それを確認すると、エヴァは何事もなかったように椀を置いた。


「さて、食え。今日は俺についてこい」


「今の話から普通に朝食へ戻れるのですか……」


「腹は減るだろ」


正しい。


正しいのが腹立たしかった。

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